「僕が怖くて、僕を捨てた！」

「それは違う！　お前が怖かったからではない！」

「じゃあなんだよ!?　なんで僕を一人ぼっちにしたんだ！」

「っ……！」


どんな事情があるにせよ、フェイを一人にしたのは変わりない。アスレイは自分を否定する息子に対して辛そうな表情を浮かべるもゆっくりと話す。


「私は……エルドラドの幹部として、その地位を失うことを恐れた。自分がこれまで築き上げてきた地位を……」

「！」

「お前のことがエルドラドに知られれば、お前もただではすまなかったろう。あれが、お前と私自身を守る唯一の手段だったのだ……。しかし私は、お前を捨てきれなかった……」

「…………！」

「お前のことが心配になりフェーダに入った。お前を見守るために、支援者ＸとなってSARUに近づいた……」

「っ……！」

「！」


顔を少しうつむけて心苦しそうに話すアスレイの言葉を聞いて、フェイが苦しそうに歯を食いしばって震えているのを天馬は気づいた。信じたいけど信じれない、泣きたいけど泣けない、そんな葛藤をしているような感じだ。


「……遅いよ」

「！」

「遅いよ。もう何もかも遅いんだ！」

「遅くはない！　フェーダを出るんだ！　――っ！」

「勝手過ぎる、みんな……。SARUも、それに……！」


アスレイはフェイに手を伸ばすが、それを拒んで身を引くフェイにアスレイは目を見開く。己を見上げるフェイは敵意を持っていた。

SARUに関しても『能力は使わない』と宣言したくせに、自分がフェーダにちゃんと戻ったことを確認させるために、かつての仲間だった天馬たちを苦しませるよう命令した。フェイ自身の意思を無視する命令と、フェイを呼び覚まそうとする天馬の言葉に揺られ、フェイの心が壊れてもおかしくなかった。


「聞いてくれ、フェイ！　このままフェーダにいたら、お前の心はSARUの邪悪な心に飲み込まれてしまう！」

「僕の気持ちは変わらない」

「フェ、フェイ。とにかくお父さんの話、聞いてみようよ――」

「天馬は黙ってて！」

「！」


今まで見ていた天馬がそっと声をかけるが、フェイは力いっぱい叫んだ。天馬までアスレイの味方をすると思って悲しいのか、抑えていた気持ちが爆発しかけているのか、力強く閉じたフェイの目尻に涙が浮かんでいる。

次いで目を開けたフェイは天馬を睨みつけるように見る。天馬は瞳を揺らしつつも目を逸らさないでいたが――。


「――フェイ！」

「き、黄名子ちゃん!?」


今までマネージャーと共にうしろにいた黄名子が前に出てきた。その迫力に思わず瑞貴は驚くが、フェイも自分に向って怒鳴る黄名子に驚いていた。


「何聞き分けのないこと言ってるやんね！」

「なんだよ、黄名子！」

「言うこと聞くやんね」

「余計なお世話だ。だいたい、なんで僕に関わって来るの!?　黄名子には関係ないじゃないか！」


今まで何かとフェイに構って来た黄名子。だが自分とアスレイの親子の事情には関係ないとフェイは叫んだ。しかし黄名子は拳を握り締める。


「関係あるやんね。フェイは……――フェイは、ウチの子供やんね！」

「！」

「えっ!?」


…………。


｢｢｢｢｢ええぇぇえええ!?｣｣｣｣｣

「こ、子供!?」


フェイと天馬だけじゃなく、思わずしばし呆然として互いの顔を見合わせていた雷門メンバーも驚きの声を上げた。










☆コーチの　今日の格言☆



この身一つと仲間と力を合わせて戦うのが本当のサッカー



以上!!