壮絶開幕! 最終決戦ラグナノク!!
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それぞれのチームがミーティングをしている中、瑞貴だけはスタジアムの外に行って夜空を見上げていた。
(まず明日に備えて私がやるべきことは全部やった……。あとはみんなを信じるのみ!)
「――やあ、母さん」
「!」
自分のことをそう呼ぶのは雷門にもエルドラドにもいない。瑞貴が振り向くとそこには予想通りSARUがいた。
「SARUくん……」
「『くん』付けなんて寂しいな。僕のことはサリューでいいよ。あなたは僕らの母さんなんだから」
敢えて呼ばれているアダ名の『SARU』ではなく、本名の『サリュー』と呼ぶように言った。口では軽く言っているが、瞳がどこか懇願するような感じだったので、瑞貴は一度目を閉じて呼ぶ。
「じゃあ、サリュー……。それなんだけど、なんでセカンドステージ・チルドレンは私を『母』だなんて呼ぶの? 確かに時代を越えればあなたたちの中に私の血が流れている子が出てもおかしくない。だけど、全員が全員ってわけじゃないんでしょ?」
「まあね。でも、僕らはあなたを紛れもなく母親だと思っている。――自分たちを捨てた本当の母親よりもね」
「っ!」
「いいよ、教える。僕らがあなたを『母』と慕う理由をね」
SARUは瑞貴にあの場で告げられなかった真実を説明した。
セカンドステージ・チルドレンは自分たちのルーツを辿る内に、サッカーとサッカー選手が発端だと知る。中には当然瑞貴もいた。そして瑞貴の血筋が自分たちの持つSSC遺伝子と共鳴すると、その特殊能力に目覚めやすいことも。
自分たちのルーツをさらに知るために、SARUたちは過去の瑞貴の姿や様子を映像を観るようになった。時に叱咤して、時に暖かい笑顔と温もりを仲間と家族に向ける姿を観て、実際に瑞貴の遺伝子を持つ者たちを始めセカンドステージ・チルドレンは自然と瑞貴を『マリア』とし『母』と慕うようになったのだ。
「だからあなたは僕らにとっての母さんってわけさ」
「……買い被り過ぎだよ」
「ん?」
その声にSARUはふと見ると、瑞貴は顔をうつむけて拳をギュッと握っていた。
「私はあなたたちに慕われるほどの聖女じゃない。現に天馬たちがエルドラドと協力をするって言っても真っ先に反対したし……今だって正直気が進まない気持ちもある」
「それでいいんだよ」
「えっ?」
「確かに僕たちはあなたを勝手にマリアとして偶像化した。でも、昨日エルドラドに向かって雷門を巻き込んだこと、サッカーを消去しようとしたこと、そして本当の事の発端は僕らじゃないって怒ってくれた。それだけで充分嬉しかった」
昨日、力を使って現場を見ていたSARUは確信した。――やはりこの人は、自分たちセカンドステージ・チルドレンの『母』だと。
「あなたはそのままでいい。だから母さん、僕らの元へ来て。あなたが味方するべきはエルドラドじゃない。――僕らだ」
SARUはそう言って、今まで見たことのないくらい優しい微笑みを瑞貴に向けて手を伸ばした。
――同時刻、外の空気を吸いに来た天馬と葵と信助。ふと天馬はある場所に顔を向けて誰かがいることに気づく。
「――ん?」
「どうしたの、天馬?」
「あれって瑞貴さんとSARUじゃない?」
「えっ!」
二人の位置からは見えないが、SARUが瑞貴に向かってを伸ばしている様子を見て、信助は慌てたように声を上げる。
「大変! SARUってまさか、ラグナロクで決着を付ける前に瑞貴さんを連れ去ろうとしているんじゃない!?」
「ええっ!? 今すぐ助けなきゃ!」
「待って!」
「「グエッ!」」
様子を見て何かを察したのか、葵が飛び出そうとした天馬と信助の首根っこをつかむ。走り出そうとしたことと、咄嗟につかんだことで、二人の首は締まりそうになったが。
そして手を伸ばしたSARUに対し、瑞貴は瞳を揺らすと静かに告げる。
「……私は確かにエルドラドの味方じゃない」
「うん」
「でも、あなたたちの味方でもない」
「えっ?」
「確かに私はエルドラドのしたことは許せない、だけどあなたちがサッカーを戦争に使うことも許せない。偽善者だって言われても構わない。――だけどね。私は……ただ私たちの大事なサッカーを守りたいだけだよ」
瑞貴が最初エルドラドから取り戻したかったのは、何よりもサッカーと円堂守だ。
「あのときだって怒りに任せて『サッカーと守を取り戻す』っていう本当の目的を忘れていた……でもそれを天馬が止めてくれたし、思い出せてくれた。――私は雷門のコーチ、私のやるべきことは今までと変わらずみんなを支えることだって」
瑞貴の表情にはもう迷いがない。それを感じたのか、SARUは肩をすくめた。
「わかった……今はあきらめる。でも、僕たちが勝ったら母さんはこちらに来てもらうよ。こっちには円堂守だっているんだからさ」
「守が……」
SARUの口から円堂の名が出たことで、瑞貴は彼がセカンドステージ・チルドレンの元へ捕らわれているのが本当なのだとわかった。
「それと『僕らの能力が目覚めたのは自分のせい』だって母さんは思っているだろうけど、それは違うよ」
「えっ?」
「母さんが自分で言ったじゃないか。僕らは『特別な力を持って産まれた人間』だって。連中は僕らを化け物だっていうけど、僕らだって人間なんだ……!」
「!」
瑞貴は彼らがこんなことをするのは、『自分を見てほしい』、『認めてほしい』と願う人間として――子供としての当たり前の感情なのだと。
「僕たちはラグナロクに勝って世界を振り向かせる……。明日は世界が、僕たちセカンドステージ・チルドレンを認める記念日になるんだ」
そう告げたSARUは今度こそ去って行った。とりあえず今は凌げたことに瑞貴はホッとすると……。