さよならと吼える声
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夕方に雷門メンバーがキャラバンに戻ると、クロスワード=アルノがそこにいた。
「トーブくん! 君のご家族を探していたんじゃが、見つかったぞー!」
「「「「「えっ!」」」」」
「これで未来にいる家族の元に帰ることができる!」
「よかったね、トーブ!」
「…………」
未来にいる本当家族が見つかったという喜ばしい報告なのに、トーブは喜ぶどころか真顔のままだったので、天馬や信助は不思議に思った。
「あっ、どうしたの? 家族の所へ帰れるんだよ?」
「悪いけど、オラは帰らねぇ」
「「えっ?」」
「オラ、今の生活気に入ってんだ。それと家族ならいるしな!」
〈クアアァァアアア!〉
トーブが見るうしろの岩の上には、大きく翼を広げるトーチャンがいた。トーブにとって彼こそが紛れもなく『父ちゃん』なのだ。
「そうか、それもまた人生じゃ。君のご家族には私が説明しておこう。いつか君が会ってみたくなったときに、会いに行けばよい」
「なんかオラのためにいろいろとやってくれたのに、すまねぇな」
「気にするな!」
「それよりさ! オラ、オメーらと一緒に行きてぇんだ!」
「えっ?」
「オメーらといるとウホウホくっぞー! やってることもおもしれぇし、オラ付いて行くことにしたぞ!」
「つ、付いて行くって……」
「「「「「えー!?」」」」」」
「付いて来るのー!?」
「それもまた人生じゃ!」
トーブはなんと天馬たち雷門メンバーと一緒に戦いに行くと決めたようだ。しかし問題が一つあるとフェイが尋ねる。
「トーブ、いいの? ビッグを置いて行って。守ってやるんじゃなかったの……?」
〈ピューイ……〉
「お前の戦う姿を見てわかったんだぞ」
〈ピュ?〉
「ビッグなら、一人でも大丈夫だ! ビッグにはロックスターの後を継いで獣の谷のボスになるっていうスゲー大事なことがある! いつまでも誰かに頼ってはいらねぇんだ」
「それはそうだけど……」
「それに、一人になったときこそわかるんだぜ。ホントに強いかどうかがさ!」
「でも、ビッグは親を亡くしたばかりなんだ……」
「「あっ……」」
親がいない孤独はフェイもわかっている。その話を聞いてしまった天馬と瑞貴は小さく声を上げると、フェイが顔をうつむけるビッグの元へ行って笑顔を向けた。
〈ピー! ギュー!〉
「けど、新しい友達ができた」
ビッグは嬉しそうに鳴き、さらにフェイに撫でられて笑っていた。その姿にトーブはビッグとフェイが友達になれたことに嬉しく思う。
「よくがんばったな、ビッグ。――これでお別れだ」
〈ピッ?〉
「お前なら、きっと獣の谷の立派なボスになれるさ。僕はお前の力を借りて戦い抜くからな!」
〈ピューイ……〉
雷門メンバーはトーブを連れてキャラバンに次々乗り、最後に瑞貴が乗り込もうとすると――。
〈クアアアッ!〉
「ん?」
鳴き声により振り向くとトーチャンが呼んでいた。確認のために瑞貴は自分を指差すとトーチャンは頷いたので、瑞貴はトーチャンの元へ行く。
「どうしたの?」
〈クアッ、クアアッ〉
「えっ?」
ひと言ふた言と声を上げたトーチャンは、瑞貴に向かってペコッと頭を下げた。まるで『息子をよろしくお願いします』と言っているようだったので、瑞貴は微笑んでトーチャンのクチバシを撫でる。
「トーブくんは確かに預かりました。ここに帰って来るときは、きっと一人前の試練に合格できるようになってますから」
〈クアアッ!〉
そして瑞貴もキャラバンに乗り、現代へタイムジャンプするためにキャラバンは空に浮かぶ。
〈ピギュアァァアアア!!〉
「『さよなら』って、吠えてるみたい……」
「っ!」
悲しそうだが強く鳴くビッグは別れを伝えているのだと葵が言うと、フェイは席から飛び出した。そして一番前の窓を開けると、フェイはビッグに向かって叫ぶ。
「ビッグー!」
〈ピューイ!〉
「さよなら! 元気でなー!」
〈ピュー!〉
信助の隣にいるトーブは恐竜の言葉が理解できるので、ビッグが何度も鳴き続けているのはフェイに向かって誓っていると言う。