さよならと吼える声
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そのまま一人ぼっちになった過去を思い出し、悲しそうな表情を浮かべたフェイは目を閉じた。
「……嫌いなんだ。自分の化身」
「ウチは好きやんね。――『光速闘士ロビン』は」
「!」
「可愛くて強い化身やんね!」
「えっ! き、黄名子、なんでそのことを……!?」
フェイは今までデュプリ以外の化身のことは誰にも話しておらず、エルドラドとの戦いで一度だって出したこともない。しかし黄名子は名前や容姿を言い当てたので、フェイは驚かざるを得なかったが、黄名子は構わず言葉を続ける。
「ビッグだって、精一杯の勇気を振り絞って戦ってる」
「っ……」
「フェイはそれでいいの!? 本当のフェイの力、見せてほしいやんね!」
フェイが本当の力を出さないことに、どこか悲しそうだが必死にも力強く訴えかける黄名子。それにフェイはもう反論することはなく、ただその瞳を見続けた。
雷門のスローイングから試合再開。雨宮が投げたボールは「よっし、任せろ!」と来た錦に渡ろうとしたが、その前にエミに取られてしまう。
「うわっ!」
「あっ! ……っ」
〈ギュアアアッ!〉
ボールを取り返そうと駆け出した神童だが、エミは超スピードで神童を弾き飛ばした。それを見たフェイが声を上げると、次いで未だにデスホーンに威嚇し続けるビッグに顔を向ける。
「ぐわっ!」
「剣城! ――あっ」
続いて剣城がボールをぶつけられた姿を見て声を上げるフェイだが、剣城も神童も立ち上がって走り出した。まだやれる、まだ戦えるというように。
必死にそれぞれの戦いをするビッグや雷門イレブンの姿を見るフェイに、黄名子は再度呼びかける。
「みんなの姿が見える? みんなサッカーを守ろうとしている仲間やんね!」
「っ……」
「仲間はみんな、全力で戦ってるやんね!」
「仲間……――っ」
拳を握って何かに気づいたフェイに、黄名子はビシッと真っ直ぐ指を差した。
「見せてよ! フェイの、本当の力!」
「あっ……」
フェイの本当の力を貸してほしいと言う黄名子は、何もかも受け止めるという気持ちでいた。それに今度こそ決意したフェイは頷き、そしてひと言放つ。
「わかった」
するとボールが大きくこちらに向かって飛んで来た。黄名子がそれに気づくと、それより先にフェイが動く。
「あっ!」
「ふっ!」
フェイは飛び上がってバック転をすると空中でボールを足で受け止めた。
「フェイ……」
「僕の本当の力、見せてやる!」
そのまま空中でフェイはミキシマックスを解いた。覚悟を決めたその姿に黄名子は顔を綻ばせる。
「うおおぉぉおおお! 光速闘士ロビン!」
フェイのオーラが模った化身は、過去にフェイが持っていたぬいぐるみに似ており、ウサギの耳が生えて可愛らしくも、パワーナックルを付けているので格闘戦士のような凛々しさも併せ持つ化身だ。
「フェイ、化身を……!」
「あれがフェイくんの本当の化身……!」
「フフフッ!」
デュプリではなくフェイ自身の本当の化身の姿を見て天馬や瑞貴たちは目を見開き、黄名子は嬉しそうに笑った。――そして潜在能力を解放させたのはフェイだけじゃない。
〈ギュアァァアアア!!〉
「何っ!?」
「ビッグまで!」
「スゴい!」
「どっちもがんばるやんねー!」
小さな体でも大きな強さを持つビッグのオーラが母親のロックスターを模った。その光景に神童や天馬は驚いたが、瑞貴や黄名子は目を輝かせた。
〈ギュアァァアアア!!〉
〈ブオオオッ!〉
突進してきたビッグから、かつて自分を負かせてボスの座に着いたロックスターのような強さを感じ取り、デスホーンはその場から去って行った。
「そうか、そういうことか! いけるぞー! フェイ! ビッグ! ミキシマックスだー!」
ミキシマックスガンを構えたクラーク=ワンダバットは、マイナスの銃をビッグに、プラスの銃をフェイに向けると一斉に発射させた。
「ミキシマックス・コンプリート!」
「うおおぉぉおおお!」
フェイはティラノとミキシマックスした姿と酷似しているが、逆立ったりうしろに伸びた髪や瞳は青くも、以前より鋭さが増していた。