獣の谷の大決戦!
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それからも特訓を続けていくと、日が落ちて夜になった。雷門メンバーはトーブとトーチャンの住処に戻り、果物を中心とした夕飯となったのだが、特にトーブは凄まじい速さで食べていく。
「あぐぐぐ! モグモグ……あぐぐぐ!」
「よっぽど腹減ってたんだな」
「フー……満腹だ~! よーし、寝るぞー! ――がああ~」
その食欲に水鳥たちは思わず食事の手を止めて眺めていると、すっかりトーブの腹は膨れて大の字になって一瞬で眠りにつくのだった。
――全員食事を終えて火を消し、特訓の疲れもあって横になるとトーブほどではないがすぐに寝た。しかしそこにフェイの姿はなく、黄名子はふと目が覚めて体を起こした。
住処から離れた所にはあちこちの崖から小さな滝が流れている水場がある。その一部の崖の上に、フェイは眉を下げて膝を抱えてうずくまっていた。
〈ピュ~イ……〉
「っ、ビッグ……」
自分を呼び掛ける鳴き声にフェイが振り向くと、そこにいたのはビッグだった。そしてビッグはそのままフェイの隣に並ぶ。
「今日は泣かないんだね、ビッグ。えらいぞ」
〈ピューイ〉
「……ねぇ、ビッグ」
〈ピュ?〉
「君は僕と同じ孤独を背負っている……小さい頃の僕も孤独だった。何故かはわからないけど、僕の親は僕を捨てて出て行ったんだ。だけど、僕は一人だって寂しくなかった…僕にはサッカーがあったから……。だから前に進むって決めたんだ。君も進んでほしい……――君の前に続く道を。一歩一歩、前に向かって」
〈ピュ~……〉
ビッグがこのとき、どれくらいフェイの言葉を理解したのかはわからない。でもフェイの伝えたいことは感じたのか共に夜空に浮かぶ月を見上げる。……その少し離れた崖の下にある陰で、黄名子は二人の様子を見守っていた。
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翌日。今日も広場でトロオドンを相手に特訓を始めるので、雷門イレブンは瑞貴とワンダバの前に並んで今日の特訓に必要なスキルを聞いている。
「みんな昨日の特訓で必要な判断力を感じ取ったと思う。今日はそれを徹底しつつ、スピードを上げていこう」
「「「「「はい!」」」」」
さっそくトーブがドリブルするトロオドンに向かって走って行く。相手は昨日と同じく二匹なので、トーブにはリベンジも兼ねているだろう。
「いっくぞー! はあっ!」
〈ジャアッ!〉
「ウホッ! 二匹抜いたぞ!」
トーブはボールを取っただけでなく、二匹目のトロオドンにボールをキープしつつ見事かわすことができた。初めてサッカーをしたときとは段違いにレベルアップしているトーブの成長を、黄名子と霧野は感心する。
「どんどん上手になってるやんね!」
「まだ少し、危なっかしい所もあるけどな」
〈クアッ! クアアッ!〉
「トーチャン! ウホウホウホー!」
〈ピューイ! ピューイ!〉
トーチャンも褒めているのか翼を広げて声を上げると、トーブも嬉しくなって踊り出す。それにビッグもまた小躍りを始めた。
次にフェイがドリブルして二匹のトロオドンの間を抜いた。しかし踏み出した足の横にある石に足を取られてバランスを崩してしまう。
「あっ!」
「フェイ!」
駆け出した天馬が手を伸ばしてフェイの左腕をつかむと、それを軸にフェイが体を反転してシュートを撃った。ボールは勢いよく離れた岩場の側面にぶつかると、その衝撃で岩場の側面が少し欠けた。