時代を作る男たち

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――それから坂本は元の着物姿に戻り、瑞貴も立ち上がることができた。そしてマネージャーたちも含めたメンバーで、天馬とフェイを中心に状況の整理をする。


「勝ったのに……ザナークを倒したのに! サッカーも、円堂監督も取り戻せていない!」

「ああ……。彼らはエルドラドの正式なチームじゃないんだ。エルドラドによって差し向けられたようだけど、本来の戦力じゃない」

「だったら、どうすればいいの!?」

「もし今の僕らがエルドラドを倒せる力を身に付けているのなら、未来に乗り込んで戦うことになる」

「えっ! 未来に乗り込むの?」

「「「「「…………!」」」」」


フェイと同じように事情を知って深く頷くワンダバを除き、雷門メンバーは戸惑うようにそれぞれ顔を見合わせた。

しかし先ほどの試合には、サッカー禁止令や円堂守の奪取の他にもう一つ重要なモノをかけていた。


「慶喜公! 約束ぜよ! 大政奉還、してもらうぜよ!」

「……仕方あるまい」

「上様!?」

「いくぞ」


慶喜はそう言い残して立ち上がって去っていき、老臣たちは彼のあとを追った。


「これで、ひとまず安心ですな」

「大政奉還を認めることは我々の思惑通り……このままでは立場を失くすところであったからな。これでわしらも生き延びることができるわ」

「討幕軍は我々を貶め、掌握した気分でいるでしょうね。フッフッ」


まるで計画通りと廊下を進みながら怪しく笑う慶喜と老臣。会話は聞こえなくてもアッサリ去って行ったその様子に信助は不思議そうな顔をする。


「負けちゃったのに、あんまり悔しそうじゃないね」

「でも歴史では、このあと幕府は滅びることになる」

「悲しい幕府の末路だな……」

「いや、これによって歴史は今の日本に向かって行くんだ」


フェイが語る本来の歴史を聞いて水鳥はそう呟いた。しかし神童はこれでいいというように笑っていると、霧野も同意するように頷いた。


「うおおぉぉおおお! 新しい日本が、始まるぜよ! これもおまんらのおかげぜよ! 『しぇいくはんず』! ありがとうぜよ!」

「あ、ああ……」


大政奉還が認められ(?)て大喜びで握手をする坂本の勢いに圧され、錦も思わず苦笑した。

それと試合が終わったときからずっと坂本のしゃべり方が変わっているので、狩屋は両手を後頭部に当てながら問いかける。


「っていうか、なんでさっきから『ぜよぜよ』言ってるんですか?」

「ああ、これか? 俺っちの国では『ぜよぜよ』言ってたぜよ。あっ、でも京に出てからなんとなく恥ずかしくて、国の言葉を隠してたぜよ。――けど! こいつに会ってそんなのちっぽけなことだとわかったぜよ!」

「うおっ!?」

「敵をも助けるあの大きさ! 俺っちもこれからは『ぜよぜよ』を誇りを持って言うことに決めたぜよ!」

「そういうことですか」


握手したままの錦の手を引いてもう片方の手を錦の肩に置き、先ほどの試合の錦の偉業を褒め称えながら、自分の国の言葉の誇りを取り戻したのだと狩屋は納得した。


「もう一つ、決めたことがあるぜよ! 毎日サッカーして痩せるぜよ!」

「そのポーズは!」

「おまんらが見せてくれた写真ぜよ。あれが未来の俺っちなら、期待を裏切るわけにはいかんぜよ!」


右手を着物の裾に入れた姿を見て天馬たちは声を上げると、坂本はアーティファクトとなった写真の自分になれるようにサッカーを続けるようだ。

その様子を少し離れた場所で微笑ましそうに見守っていた沖田は、剣城が近づいてきたことに気づく。


「感謝します。あなたの力を借りることで、俺たちは大切なモノを守るために戦えます」

「こんな俺の力が役に立つというのか……。いや、むしろ礼を言いたいのはこっちの方だ」

「?」

「俺にも今の幕府が腐りきっていることはわかっていた。だが、その幕府を守ろうと……――自分の生きた証を残すために焦っていたのかもしれないな。だが、そんなことよりも大切なことがあるとわかった」

「大切なこと……?」


サアアァァ――……。


沖田が清々しい顔でそう言うと、優しい風が舞って紅葉を散らしていく。まるで沖田が大切なことに気づいたことを祝うように。その光景に顔を向ける沖田に伴うように剣城も顔を散りゆく紅葉を見る。


「『自分は生きている』と、自分自身で実感できていたのかということだ。君たちのおかげで、俺は生きているということを感じた。……ずっと忘れていた気持ちだ」

「沖田さん……」


再び顔を見合わせた沖田の表情は、病気であろうと自分はまだ『生きている』と実感して残りの生涯を大切にしようと決めた。その決意と覚悟を剣城は感じ取った。
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