「よ――しっ!!　今度こそ、監督ができるぞ――っ!!」

「おい中岡、監督がいるらしいからお前やってくれ」

「よろしくお願いします！」

「えっ」

「ウム、承知した」

「ダバ……」


坂本だけでなく天馬も中岡の監督就任に反対しなかったので、エキサイティングゲージでピンク色になっていたワンダバは一気に元の色に戻り、ベンチから滑り落ちるのだった。

恒例ともなった矢嶋陽介を呼び出し、この時代に合わせるように着物と兜を身に纏っていた。左手にはホイッスル代わりの法螺貝、そして右手のマイクにより洗脳されて実況者になる。


《さあ、大政奉還を賭けての大勝負！　雷門対ザナーク・ドメインの試合が始まるぞ――っ!!　今回はなんと、徳川幕府十五代将軍・徳川慶喜公が見守る御前試合！》


法螺貝が吹かれてキックオフ。先攻はザナーク・ドメインからでラセツからボールを渡されたザナークがドリブルで上がって行く。


「楽しませてもらおうか……」

｢｢｢！｣｣｣

「ゴブリス！」


大事な一戦だというのにザナークは興味無い雰囲気に天馬とフェイと坂本は歯を食いしばる。そしてザナークが横にボールを上げると、大ジャンプしたゴブリスが空中でボールを取った。


「エンギル！」

「速い！」


ゴブリスからエンギルへのとても素早いパスに天馬が目を見開くと、エンギルはメイズに、メイズはシンジャミにボールを回した。どのパスもとてつもないスピードだとフェイも驚く。


「追いつけない！」

「沖田！」

「絶対ここは通さん！」

「お前にだけは負けん！」


坂本がボールを取ろうと走って行くが、それよりも先に沖田がボールを取ってドリブルをした。その動きはサッカーバトルのときと比べ物にならないと天馬やフェイたちは気づく。


「沖田さんの動きが速くなってる！」

「瑞貴さんの言った通り、ザナークがまた力を！」

「フッ」

「クッ！」

「沖田さん……！」


その通りだとザナークが笑うと、剣城は歯を食いしばって瑞貴は沖田の後遺症が心配だった。


「ラセツ！」

「ザナーク！」

「いくぜ！　ディザスターブレイク！」


沖田からのパスにラセツがヘディングでボールを上げると、ザナークはそのままシュートを撃って霧野蘭丸と黄名子を弾き飛ばした。


「ミキシトランス・劉備！　ぐっ、ぐうっ……！」


正面から受け止めようとした信助だが、ミキシトランスしているにもかかわらずザナークの強烈なシュートにより自分自身と共にゴールへ叩きつけられた。


《ゴォ――ルッ!!　開始早々ザナーク・ドメインが先制点を決めた――っ!!》

「クッ……！」

「フッ」


さっそく先制点を取られて悔しがる坂本に対し、慶喜は愉快そうに笑った。


「そんな……ミキシマックスしたのに！」

「ザナークの力、前よりも上がっている！」


ミキシマックスを解除しつつ信じられないと言う信助に、フェイはザナークがパワーアップしていることに気づいた。

次は雷門ボールで試合再開。剣城からボールを受け取ったフェイがドリブルして上がろうとすると……。


「ふんっ！」

「あっ！」

《おおっとザナーク！　フェイのドリブルをアッサリカットしたー！》

「フハハハッ！　お前らの動き、止まって見えるぜ！　沖田、ラセツ、メイズ、ゴブリス、お前らで遊んでやれ！」

「何っ!?」

「四人だけで!?」


ザナークが名前を挙げたメンバーしか動かない様子に剣城と天馬は驚いた。

だがザナーク・ドメインの四人はパス回しやドリブルの突破力、全てにおいて激しい動きに雷門イレブンは全く手も足も出ない。


「クウッ、わしらを舐めたらいかんぜよ！　うおおおおっ！」

「ふんっ！　バンジースラスト！」


ドリブルするメイズに錦は駆け上がるが、メイズがボールを引き延ばしてそのままぶつける必殺技により、錦は弾き飛ばされてしまった。


「沖田！」

「グッ、ウウッ……」

｢｢！｣｣

「沖田ー！」


メイズからボールを受け取った沖田が、また苦しそうに胸を押さえているので瑞貴と剣城が目を見開く。すると坂本が彼の前に駆け寄って行った。