シュートを真正面で見た信助だからこそ、ザナークの力の恐ろしさがわかったので、それに対抗するために『劉備さんとミキシマックスできたら……』と思わずにはいられなかった。


「やっぱり信助、ザナークのシュートを怖がってる……！」

「えっ!?」

「信助はゴールを守るためにいくつものシュートを見てきたけど、きっとザナークのは次元が違うの。キーパーは最後の砦だからこそ責任も重大……だから余計にプレッシャーになってるよ」

「信助……」


瑞貴もまたベンチから信助が戸惑った原因がザナークの恐ろしいシュートだと気づき、その理由を空野葵に告げた。


「西園……」

「ビビっちまうのもムリないぜ。あんなシュートくらったら……」

「こんなときこそ攻めるぞ！」


信助を心配する剣城に倉間典人がムリもないと言うと、神童が張り切るように声を上げた。


「攻撃は最大の防御！　攻めて攻めて、ザナークにシュートを撃たせなくすればいい！」

「まっこと、そん通りぜよ！」

｢｢｢｢｢うん！｣｣｣｣｣


神童に続いて錦龍馬も同意すると、雷門のオフェンスメンバーは力強く頷いた。取られたら取り返すのはサッカーの基本であり、攻めることでボールをキープすることになるので守りにも通じる。

雷門ボールで試合再開。倉間からボールを受け取った剣城がさっそく錦にパスを回す。


「錦先輩！」

「よし！」

「攻撃は最大の防御だと？　フンッ、本物の攻撃とはこうやるんだ！」

「うわあっ！」

「あっ！」

「錦先輩！」


ザナークの強烈なタックルをくらった錦は弾き飛ばされ、剣城と天馬は声を上げる。


「俺が止める！　戦騎士ブリュンヒルデ！」

「来い、魔界王ゾディアク！　どけー！」

「わああっ！」


霧野がまだ化身を扱うことに慣れていないとはいえ、ザナークは化身を呼び出してアームドもせずにボールを蹴り上げることで簡単に突破した。


（あのシュートが来る……あんなのどうやって止めれば……！）

「これでトドメだ！　ディザスターブレイク！」

「ヒッ！　うわああっ！」


先ほどの恐怖が甦って来たのか、信助は恐ろしさのあまり目を閉じて悲鳴を上げる。このままではゴールを許してしまう――。


「させるかー！　魔神ペガサスアーク！　アームド！」

「ミキシトランス・ティラノ！」

「ウウッ……うわああっ！」

「くううっ！　はあっ！」


天馬が化身アームド、フェイがミキシトランスして二人が止めようとするも吹き飛ばされてしまい、それでも幾分か力が弱まったので最後に雨宮がボールをラインの外に出すことに成功した。


《止めた――っ!!　三人掛かりでゴールを死守――っ!!》

「チッ……」


これで決勝点を決めれると思ったのに、止められてしまったのでザナークは忌々しげに舌打ちした。そんな中、信助はすぐそばにいる雨宮に声をかける。


「大丈夫……？」

「ハァ……平気さ……」

「ごめんね、雨宮くん……」

「ん？」

「僕が、しっかりゴールを守らなくちゃいけないのに……。ごめん……みんな……」

「信助……」


信助は雨宮だけじゃなく、天馬たち雷門イレブンの全員に謝っていた。


「でも、怖いんだ……あのシュートが……！　今の僕には…止められないよ……！」

「西園くん……」


雨宮だってホーリーロード準決勝で、信助がゴールに立っている姿を敵として見たことがある。小さい体でも気持ちの大きさは誰にも負けず、その思いが化身となって現れたのだと感動を覚えた。しかし今目の前にいる信助はその覇気すらない。


「信助……」

「難しい状況になりましたね」


劉備もまたＧＫとして大切なことを教え続けた信助が、あんなにも自信無さ気な姿に同情した。すると孔明が劉備より前に出て、白羽扇を前に出す。