「やはりあいつ、いい遊び相手になってくれそうだ。――奴とたっぷり遊んでやれ！」

｢｢｢｢｢フフフッ！｣｣｣｣｣

「あの子……」


ザナークの指示に他のメンバーが了承する中、孔明は雨宮の様子に思う所があるようで彼を見て呟いた。

それからも雨宮はザナーク・ドメインからボールも奪えず突破されてばかりだ。


「十年に一人の天才はどこ行ったんだよ!?」

「らしくないやんね！　太陽！」


倉間や黄名子がカバーしつつ叱咤するが、雨宮の不調は続いていく。


「おい。俺がサッカーのやり方を教えてやろうか？」

「っ、こいつ！　――うわっ！」


エンギルがバカにするように言ったので雨宮は今度こそと出るが、逆にエンギルに弾き飛ばされてしまった。


「うおおぉぉおおお！」


すかさず天馬がエンギルからボールを奪った。それからドリブルする天馬のあとを追いつつ、雨宮は何故思うようにサッカーができないのかわからない。


「力が出しきれない……どうなってるんだ……？」

「太陽……！」


天馬がドリブルしつつうしろに来る雨宮を心配していると、神童は最初にあった違和感に確信が持てた。


「やはり恐れているのか……」

「恐れているって、ザナークたちを？」

「いや。自分の体が再び壊れることが！」


倉間の問いに神童はそう答えた。雨宮は病気のせいで思うようにサッカーができず、体に負担がかからないようセーブしていた。ホーリーロードの準決勝では『最後の試合だから』と思いっきりやっていたが、完治した今の体がまた病気が再発してしまい、サッカーができなくなるのではないかと無意識に思っている。そのせいで前と同じようにセーブしているのだろう。


「負けんな！　太陽ー！」

「太陽くん！」

「ガンバッ！」


葵や水鳥や茜たちが懸命に応援する中、雨宮は天馬からボールを受け取ってドリブルしながら化身を出す。


「太陽神アポロ！」

「ふっ！」

「がっ!?」


化身まで出したというのに、雨宮は簡単にヤシャからボールを弾かれてしまった。幸いボールはエンギルに取られる前にラインの外に出たが、またしてやられたことに悔しくて拳を地面に叩く。


「どうしてだ!?」

「あの動き、力強さの中に危うさがある……。面白い子……」


雨宮はプレーがうまくいかなくて悔しがっているのに、逆に孔明は興味を持ったようで笑っていた。


「この程度のチームがエルドラドのジジイ共に手を焼かせてきたのか。前のオメガといい、あいつらが弱かったってことか。フフフッ」


ザナークが不敵に笑う中、瑞貴と劉備は雨宮が自分の震える両手を見ながら顔をうつむける姿に眉を下げた。


「太陽くん、すっかり自信を失くしている……」

「ムリもない……。あれだけ相手に遊ばれていてはな……」

（僕のせいでみんなまで……。いったいどうしたんだ？　僕は……）


雨宮が悔しいと同時に不甲斐無いという思いで拳を強く握しめると、天馬が優しく声をかける


「大丈夫。すぐに調子が出るって！」

「天馬……すまない……」

「えっ？」

「天馬たちの力になるために来たのに……逆に足を引っ張ることになってしまって……」

「…………」

「太陽……」


いつの間にか雨宮の周りには天馬だけでなく、神童や霧野たち雷門イレブンの全員が集まっていた。みんな彼のことが心配で来たのだろう。


「誰だって調子の悪いときはあるし、ミスするときだってあるさ。そんなときは、みんなで助け合わなきゃ！」

「っ！　天馬……」

「太陽なら、必ず乗り越えられるさ」

「太陽が本調子になるまでは、わしら全員でフォローするぜよ！」

「ウチらがついてるんよ！」

｢｢うん！｣｣

「あっ、俺も一応いるから」


天馬だけじゃない。神童も錦も黄名子も信助も倉間も狩屋も、雨宮を責めるどころか自分たちが支えると言ってくれるのだ。