「誰だ!?」

「フフフフ……そう言うと思ったぜ。『誰だ？』、『お前は誰だ、何故こんなことをする？』……そう言いたいんだろ。あ？」

「貴様……！」

「俺はザナーク＝アバロニク。名も無き小市民だ。名前はあるが名も無き小市民……どうだ。フフフフッ」


現れた少年――ザナーク＝アバロニクは、先ほどエルドラドで警備員に追いかけられて脱走した人物だ。突然現れた彼にガンマは忌々しげに舌打ちする。


「チッ！」

「聞いたことがあります。Ｓ級の危険人物……何をしでかすかわからない、恐ろしい男だと」

「フンッ、面白いじゃないか。――だったらこの僕が倒す！」


エイナムからザナークについて詳細を聞いても、ガンマはモノともせずむしろ挑もうとしていた。


「『僕が倒す』だと？　弱い奴ほどよく吠える。俺は強いがよく吠える！　いいだろう……ただし、全員で来い！」

「はああっ！　堕ちろ！」


ガンマは自分のスフィアデバイスを出すと、ストライクモードにしてシュートを撃ったにもかかわらず、ザナークはマトモに受けたのに涼しい顔をしていた。

それからガンマたちは円状になって次々と中心のザナークにシュートを撃ち込むが、ザナーク本人は大したダメージを受けていない。


「フッ。その程度か……」

「これで、終わりだ――っ!!」

「かぁ……はあああっ!!」


ガンマが渾身のシュートを撃つが、ザナークは気合いを入れたあと口から光線のようなモノを吹き出し、スフィアデバイスの威力を失くしただけでなく辺り一帯を攻撃した。そのせいでガンマたちは地に伏せてしまう。


「クッ…ウウッ…き、貴様……！　グッ……」

「エルドラドのジジイ共、俺を監視しているんだろ？」


ガンマが完全に気を失ったのを確認すると、ザナークは空に浮かぶルートクラフトを見上げながら、中継越しにいるトウドウたち議員に向けて告げる。


「提案がある。お前たちが手を焼いている奴らを俺が倒したら、俺の罪は帳消しという……これでどうだ？」

〈取引か？〉

「まあ、そうなるな」

〈犯罪者からの取引など、受けてはなりません！〉

〈いったい何を企んでいるのか！〉


議員たちは次々とザナークの取引に反対をする。しかし、トウドウだけは笑みを浮かべて片手を挙げた。


〈よかろう、取引に応じよう〉

「そう言うと思ったぜ」

〈ただし〉

「あん？」


これ以上の条件を突きつけてくるのかとザナークが顔をしかめると、トウドウは両手を組んで低い声で告げる。


〈雷門を倒したあと、マリア――円堂瑞貴は我々の元へ連れて来い〉

「円堂瑞貴だぁ？」

〈それを受け入れるならば、約束しよう〉

「わかったよ。そっちも俺との約束を忘れるんじゃないぜ？」

〈無論だ〉


議長のトウドウが了承したので、ザナークとエルドラドとの間の取引は成立となったのだ。次いでザナークは倒れているガンマたちに顔を向ける。


「さあ、お目覚めの時間だ。――かああぁぁああ!!」


ザナークは再び口から光線を出し空に向かって撃つと、光は分裂してガンマたちの体に一人ずつ注ぎ込まれた。すると起き上がったガンマたちの肌は浅黒くなり、髪も水色になって一部が変化している。


「まずは、お前たちに働いてもらおう」



☆☆☆☆☆


なるべくジャンヌの居場所に近い所に停めるため、キャラバンは空を漂っていると一部から黒煙が舞っているのを見つけた。


「あれは戦場？」

「みたいだね。二色の甲冑兵たちが戦っているよ」


瑞貴がよく目を凝らして見ると、白い甲冑兵が黒い甲冑兵に圧されているのだ。

――そんな中、森の中へ逃げていた一部の兵の中に、兜も付けておらず眼鏡をかけた少女がいた。その少女先ほどの戦場を見ながら恐ろしそうに呟く。


「敵が…来る……！」










☆コーチの　今日の格言☆



みんながサッカーが好きって気持ちを取り戻したことが、何より一番嬉しいことだよ



以上!!