「俺も行きたいんです！」

〈うーん……しかしこれは決定で――〉

「あの～、すみません……」


声がしたほうに全員が振り向くと、ベンチに座っていた狩屋が右手をお腹に当て、左手を上げながら申し訳なさそうに言う。


「俺、朝からお腹痛くて……。もし霧野先輩が代わってくれるっていうなら助かるんですけど……」

「狩屋……」

〈わかった。そういうことなら霧野と交代だ！〉

「っ！　ありがとう…ございます！」


大介がそう言うと霧野は顔を輝かせて頭を下げた。次いでチラッと狩屋を見やると、彼はお腹をさすりながら知らん顔をしていた。

タイムジャンプのために各自準備に取りかかり始める中、瑞貴はベンチに座ったままの狩屋のそばに行くと、目線を合わせるように彼の前にしゃがんで話しかける。


「本当に優しいね、マサキくんは」

「なんのことだか、俺にはサッパリっスね～」

「フフッ、私たちが帰るまでに体調を治しといてね。そしたら私特製のゼリーを作ってあげるから」

「マジ!?　俺、姉さんの作るゼリー大好きなんスよ！」


狩屋はキラキラと顔を輝かせた。先輩のために譲ってあげた弟子のご褒美ならばお安い御用だと瑞貴は思った。



――それから一時間後、選考メンバーがキャラバンに乗ったのを確認すると、ワンダバが勇気の兜をアーティファクトにして運転を開始する。


「では行くぞ！　ターイムジャ――ンプッ!!」


キャラバンはジャンヌ＝ダルクのいる時代へタイムジャンプしたのだった。



☆☆☆☆☆


二百年後の未来でベータに代わり新たにリーダとなったガンマ。さっそくドリム、ウォード、ザノウ、ネイラを交代させ、ルジク、ガリング、バハムス、ダーナをメンバーに入れた。先ほどの四人とベータはアルファたちがいる『MUST-GENERIC TRAINING CENTER』――通称・ムゲン牢獄で過酷な再教育をさせられている。

ガンマたちがトウドウ＝ヘイキチにより雷門討伐の任務を与えられた一方で、ムゲン牢獄は脱走者が現れた。少年は大型バイクに乗って白バイで追いかける大勢の警備員から逃げている。しかし逃げた先が行き止まりとなり、仕方なく止まると警備員に追い詰められてしまった。


「フッ」

「逃げられんぞ！」

「フッ、フフッ。はああぁぁあああ！」


警棒を持って襲いかかる警備員に、少年は不思議な力であっという間に警備員を倒したのだ。そして少年は白バイにあるコンピュータをいじって興味深そうに見る。


「ホォ、これがエルドラドの遂行しているミッションか……面白そうじゃねぇか」


そう言って少年は自分のバイクに乗り込み、その場から消えて行った。



☆☆☆☆☆


ワームホールを抜けたキャラバンは、緑や畑が多くあり西洋の民家が多い世界にやってきた。


「ここが、ジャンル＝ダルクの世界……！」

「1427年フランス・ヴォークルール付近だ」

「この世界のどこかにジャンヌがいるんだね」


天馬とフェイと瑞貴たちはジャンヌがいるという時代の景色を、キャラバンの窓から眺めていた。



――瑞貴たちとは別の場所で、ルートクラフトからガンマたちもまたこの時代にやってきた。


「ここにいるのか、奴らは？」

「はい。おそらく」

「では奴らを検索しろ」

「ハッ！」


まだ雷門イレブンの居場所まで特定していないようで、ガンマの指示にエイナムが了承していると――。


【ストライクモード】


バシュンッ！


「っ、ぐうっ！」


赤いスフィアデバイスのシュートが襲いかかって来たので、ガンマは両腕をクロスして受け身を取る。威力があるため少し後退してしまったが、目立った外傷はない。