夢の天下
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「太助! 大丈夫!?」
「へへっ」
モロにくらったので天馬は心配して駆けつけると、顔を上げた太助はボールの痕が残っていたが全然平気だというように花の下を指でこすっていた。対してせっかくのチャンスを逃したベータは「余計なことを!」と忌々しげにそう言い捨てるのだった。
太助のプレーで危機を脱したと、瑞貴や藤吉郎たちベンチ組はホッと一息を吐く。
「フゥ……」
「助かった……」
「――御屋形様! お待ちください!」
声が聞こえて振り向くと、観客を押しのけて刀を持ちながら信長がやってきた。その姿を認めた藤吉郎とワンダバは驚いて声を上げる。
「の、信長様!?」
「何!?」
「あの様子……かなり怒ってる……」
「「「ええっ!?」」」
ここまで肌がピリピリするほど感じる空気に瑞貴がそう言うと、マネージャー組は焦った。
その間に信長は鞘の先端を地にトンッと落とすと、神童に向かって叫ぶ。
「神童拓人、是へ参れ!」
「!」
「拓人様……!」
信長の様子が只事じゃないと観客席からもわかり、焦ったお勝は立ち上がった。
そして信長は長秀と利家を引き連れてベンチに来ると、その前に立つ神童に向かって言葉を放つ。
「神童!」
「ヒイッ!」
自分が呼ばれているわけでもないのに、信長の迫力が伝わった藤吉郎は目を閉じて身を跳ねていた。
「貴様の戦ぶりはなんじゃ!? 我がほうが圧されておるのは貴様のせいじゃ! このまま軍勢の足を引っ張るなら、控えに下がるがよい!」
「っ……!」
(信長様は怒っておいでじゃ……なんとか取りなさねば……!)
神童だって自分が足を引っ張っているのは重々承知だ。それでも自分の使命と焦りでいっぱいいっぱいなのだと藤吉郎は先ほどワンダバと瑞貴と話して気づいた。そしてこの試合は神童が必要不可欠なので藤吉郎は唾を飲んで懸命に信長に進言してみる。
「信長様――」
「お願いでございます!」
しかし藤吉郎の言葉を遮り信長にひれ伏して現れたのは、まさかのお勝だった。
「拓人様に試合を続けさせてあげてください!」
「娘! 無礼であるぞ!」
長秀は突然現れただけでなく急に信長に進言してきたお勝を注意するが、お勝は顔を上げて必死に信長に頼みこむ。
「拓人様は、一生懸命サッカーの修練に励んでおいでです! 勝つために、昼も夜も……だから、拓人様に試合を続けさせてあげてくださいませ!」
「お勝さん……」
自分のがんばりを見守ってくれたお勝に神童は嬉しく思った。そして彼女の足袋の裏が汚れているのを見た瑞貴たちは、観客席から草鞋も履かずに一直線にここまで来たのだと察する。――全ては神童のために。
「フッ、案ずるな娘よ」
先ほどと打って変わって穏やかな表情を浮かべた信長は、再び神童に顔を向ける。
「何故貴様は動く必要のない所で動く? 貴様は動き過ぎじゃ」
「えっ」
「静と動の使い分けこそ、戦術の極意!」
「静と…動……」
扇子を突きつけてそう叫んだ信長の言葉を、神童は復唱する。
「貴様の役割は攻めと守りの間で両兵の要を担うことではないのか」
「あっ……」
「お前のしていることは誤りではないが、敵に読まれやすいのだ」
信長の言葉に同意するように藤吉郎も頷いた。普段の神童ならわかっていたかもしれないが、今は頭に血が上っているためそこまで回らなかったのだろう。それすらも信長は見抜いていたのだ。
しかし神童はそれとは別に、今までサッカーに関わりを持っていなかった信長がここまで見抜いていたことに驚いていた。
(そんなことまでわかるのか……! 一度試合を見ただけだっていうのに……!)
『人を見抜き、大局を見抜く、静と動を合わせ持つ、真実のゲームメーカー』
(間違いない……やっぱりこの人が……!)
円堂大介が見抜いた通り、信長こそ時空最強イレブンに必要なオーラを持つ者だと、神童はハッキリと伝わった。
「しかと、承りました!」
そして神童もまた、信長に向かって堂々とそう告げたのであった。
「へへっ」
モロにくらったので天馬は心配して駆けつけると、顔を上げた太助はボールの痕が残っていたが全然平気だというように花の下を指でこすっていた。対してせっかくのチャンスを逃したベータは「余計なことを!」と忌々しげにそう言い捨てるのだった。
太助のプレーで危機を脱したと、瑞貴や藤吉郎たちベンチ組はホッと一息を吐く。
「フゥ……」
「助かった……」
「――御屋形様! お待ちください!」
声が聞こえて振り向くと、観客を押しのけて刀を持ちながら信長がやってきた。その姿を認めた藤吉郎とワンダバは驚いて声を上げる。
「の、信長様!?」
「何!?」
「あの様子……かなり怒ってる……」
「「「ええっ!?」」」
ここまで肌がピリピリするほど感じる空気に瑞貴がそう言うと、マネージャー組は焦った。
その間に信長は鞘の先端を地にトンッと落とすと、神童に向かって叫ぶ。
「神童拓人、是へ参れ!」
「!」
「拓人様……!」
信長の様子が只事じゃないと観客席からもわかり、焦ったお勝は立ち上がった。
そして信長は長秀と利家を引き連れてベンチに来ると、その前に立つ神童に向かって言葉を放つ。
「神童!」
「ヒイッ!」
自分が呼ばれているわけでもないのに、信長の迫力が伝わった藤吉郎は目を閉じて身を跳ねていた。
「貴様の戦ぶりはなんじゃ!? 我がほうが圧されておるのは貴様のせいじゃ! このまま軍勢の足を引っ張るなら、控えに下がるがよい!」
「っ……!」
(信長様は怒っておいでじゃ……なんとか取りなさねば……!)
神童だって自分が足を引っ張っているのは重々承知だ。それでも自分の使命と焦りでいっぱいいっぱいなのだと藤吉郎は先ほどワンダバと瑞貴と話して気づいた。そしてこの試合は神童が必要不可欠なので藤吉郎は唾を飲んで懸命に信長に進言してみる。
「信長様――」
「お願いでございます!」
しかし藤吉郎の言葉を遮り信長にひれ伏して現れたのは、まさかのお勝だった。
「拓人様に試合を続けさせてあげてください!」
「娘! 無礼であるぞ!」
長秀は突然現れただけでなく急に信長に進言してきたお勝を注意するが、お勝は顔を上げて必死に信長に頼みこむ。
「拓人様は、一生懸命サッカーの修練に励んでおいでです! 勝つために、昼も夜も……だから、拓人様に試合を続けさせてあげてくださいませ!」
「お勝さん……」
自分のがんばりを見守ってくれたお勝に神童は嬉しく思った。そして彼女の足袋の裏が汚れているのを見た瑞貴たちは、観客席から草鞋も履かずに一直線にここまで来たのだと察する。――全ては神童のために。
「フッ、案ずるな娘よ」
先ほどと打って変わって穏やかな表情を浮かべた信長は、再び神童に顔を向ける。
「何故貴様は動く必要のない所で動く? 貴様は動き過ぎじゃ」
「えっ」
「静と動の使い分けこそ、戦術の極意!」
「静と…動……」
扇子を突きつけてそう叫んだ信長の言葉を、神童は復唱する。
「貴様の役割は攻めと守りの間で両兵の要を担うことではないのか」
「あっ……」
「お前のしていることは誤りではないが、敵に読まれやすいのだ」
信長の言葉に同意するように藤吉郎も頷いた。普段の神童ならわかっていたかもしれないが、今は頭に血が上っているためそこまで回らなかったのだろう。それすらも信長は見抜いていたのだ。
しかし神童はそれとは別に、今までサッカーに関わりを持っていなかった信長がここまで見抜いていたことに驚いていた。
(そんなことまでわかるのか……! 一度試合を見ただけだっていうのに……!)
『人を見抜き、大局を見抜く、静と動を合わせ持つ、真実のゲームメーカー』
(間違いない……やっぱりこの人が……!)
円堂大介が見抜いた通り、信長こそ時空最強イレブンに必要なオーラを持つ者だと、神童はハッキリと伝わった。
「しかと、承りました!」
そして神童もまた、信長に向かって堂々とそう告げたのであった。