「わっ！」

｢｢っと！｣｣


仁悟は倒れてしまったが、獅子丸と五郎太もまた太助と同じように倒れず踏ん張った。


「ウム。なかなかの粘り腰じゃ！」

「あの踏ん張りどころもまた、特訓の成果ですね！」


この一週間の特訓により、太助と獅子丸と五郎太の足腰が特に鍛えられている。藤吉郎と瑞貴はそれに気づいて頷いたものの、それに気づかない獅子丸は突破されたことに「そんな……！」と呟いてショックを受けていた。


「エイナム！」

「シュートコマンド０６！」

【プラズマボール】

「やらせるもんかー！　護星神タイタニアス！」


エイナムのシュートを信助は化身を出して止めようとするが、完全に止め切ることはできずボールはラインの外に出てクリアした。


「信助！」

「これぐらい平気だよ」


止めた反動で倒れた信助を天馬が心配するが、信助はなんでもないというように親指を立てた。


「これが蹴鞠戦か。なんと面白きものよ」

「あの者らは、サッカーと呼んでおるようです」

「サッカー……か」


パチンと扇子を畳んだ信長は、初めて目の当たりにする蹴鞠戦にとても興味を示していた。そして前田利家が天馬たちが言う蹴鞠戦の本当の名前を告げると、その名もまた信長の興味対象となった。

蹴鞠戦――サッカーを楽しんでいるのは信長たちだけではない。観客として集まったこの時代の人々もとても楽しんでおり歓声が沸き上がっている中、太助が獅子丸と仁悟と五郎太の元へ駆けつけた。


「みんな！　大丈夫か!?」

「あ、ああ……。でも、なんなんだよこれ!?」

「俺たち、やれると思ったのに……」

「力の差が……あり過ぎる……」

「太助……。俺、怖い……」

「くじけちゃダメだって！　あんなに練習したんだ！　がんばろう、みんな！」

「で、でも……」


獅子丸も仁悟も市正も五郎太も、今川軍の圧倒的な強さにビビっている。それを太助が懸命に励ましても立ち直ることがなく、藤吉郎と瑞貴もそれをしっかり見ていた。


「あいつら……」

「すっかり意気消沈してますね……」


一週間の練習で上達してきたとはいえ、所詮付け焼刃だ。今まで経験してきた天馬たちや、エルドラドの意思する歴史改変のため鍛えられたベータたちとは違う。

ボールが渡った獅子丸がドリブルしようとするが、その動きはぎこちない。隙だらけだと笑ったレイザは獅子丸からボールを奪った。


「このぉ！」

《錦が奪い返すー！》

「クッ！」


錦がスライディングしたことにより、レイザからボールを奪うことに成功した。だがそれを獅子丸は走りながら申し訳なさそうに錦に謝罪する。


「危なかったきに！」

「わ、悪いです、錦さん……」

「気にすることないぜよ！」


だが不調になったのは獅子丸だけではなかった。エイナムがドリブルして攻め込もうすると仁悟と市正が止めるため立ち塞がるが……。


「邪魔だ！」

｢｢ウッ！｣｣


二人はエイナムの気迫に怯んだのでその隙に抜かれてしまった。ディフェンスのみんなの動きがおかしいと天馬は声をかける。


「どうしたの!?　仁悟！　市正！」

｢｢ウウッ……｣｣

「敵を恐れるな！　練習した通りにやれば大丈夫じゃ！」

「そ、そんなこと言ったって……」


藤吉郎が叱咤するも、相手を恐れるあまり市正と仁悟の目には涙まで浮かんでいた。


「行かせない！」

「リーダー！」


神童がディフェンスに入ろうとするが、エイナムはそれより先にベータにパスを出した。そしてベータの行く先は足が震えている五郎太の元だ。