尾張の国の大特訓!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
☆☆☆☆☆
夜になったので練習は終了して雷門イレブンは地蔵堂に帰ると、お勝が夕飯を作って用意してくれた。そのいい匂いと見栄えに獅子丸や錦たちは嬉しそうに声を上げる。
「鍋だー!」
「こいつはうまそうぜよ!」
「しっかり食べて力をつけないとね。さっ、拓人様も!」
「あ、ああ……」
「姉ちゃん、豆腐!」
「あっ、ごめんね」
大好きな豆腐がないと太助が碗を差し出したので、お勝はそれを受け取ってよそいながら神童のことを思う。
(拓人様にとって、サッカーがいかに大切なモノなのか、よくわかりました。お引き留めすることなどできないことも……。だったらここにいる間だけでも力にならせてください!)
お勝は神童に好意を持っており何度かここに残ってほしいと願っていた。だが、初めて会ったときから神童がサッカーに強い思いを持っていると教えてもらったし、先ほどの練習で彼の真剣な表情を見て、自分の想いが邪魔をしているとわかった。
だからこそ自分にできることは想いを胸の奥に秘め、練習後にご飯を作るなどをして、できる限り神童を支えようと誓ったのだ。
(お勝さん……)
「神童! 早く食わんとなくなるぜよ!」
「あ、ああ……」
お勝の心情を知ってか知らずか、神童は錦に呼ばれて我に返ると誘われるまま席に着いた。
☆☆☆☆☆
翌日からも同じ場所で練習を始めたが、やはり太助たちのプレーの悪さが目立っていた。実戦形式のほうが身に着くのが早いと天馬たちに交えて練習をさせたが、このままではマズい。
二日目もままならぬまま練習が終了し――そして三日目に、瑞貴が動いたのだ。
「太助くん、市正くん、獅子丸くん、五郎太くん、仁悟くん、ちょっと来て」
「「「「「は、はい!」」」」」
呼ばれた五人は緊張しているのか背筋を伸ばして返事をした。それを見た錦は彼らの緊張をほぐそうとしたのか、本気半分遊び半分なのか、太助たちに近づいて小声で言う。
「瑞貴さんから名前を呼ばれたときは、鬼の練習が待っているんじゃぞ? 気をつけるんじゃな」
「「「「「ヒエエエッ!」」」」」
「龍馬くん……総合練習後のメニュー十倍追加と今すぐ謝罪するの、どっちがいい?」
「すんませんっした!」
ニッコリと笑っているが背後から出るオーラはとても黒い。ヤバいと感じ取った錦顔を青ざめるとはすぐに土下座して謝罪するのだった。
「バカか、あいつ」
「アハハハ……」
その様子を見ていた水鳥は呆れるように目を半目にし、葵は苦笑して乾いた笑い声しか出て来なかった。
「仁悟くん。一昨日はボールが取れたよね。そのときどう思った?」
「えっと……『やった!』って思ったし、楽しいって思った!」
「そう。その気持ちはサッカーにとって基礎であり一番大切なモノなの。ボールを『怖い』と思っていちゃ、ボールは本当に怖いモノになる。だからまずはボールを怖がらず正面から向き合ってみて」
「「「「「はい!」」」」」
瑞貴との話が終わって五人は天馬たちと合流し、さっそく練習が始まる。
「いくぜよ!」
錦が蹴ったボールは少し勢いがるまま五郎太の元へ飛んで行く。今までの五郎太は恐がってしゃがんだり逃げたりしていたが……。
『まずはボールを怖がらず、正面から向き合ってみて』
「っ、ふんっ!」
「「「あっ!」」」
なんと瑞貴の言葉を思い出した五郎太はヘディングで返したのだ。さらにそれだけでなく獅子丸がドリブルで錦を抜き、市正が見事トラップした。……些細なことでも確実な変化が訪れる。
――だいぶ日が傾いてきた頃には五人の技術は少しずつ上がっていた。
「太助!」
ドリブルしていた獅子丸からのボールを受け取り、太助もまたドリブルして上がって行く。
「みんな、どんどんうまくなっていきますね」
「ああ。これならいけるな」
「「…………」」
初日とは比べ物にならないと葵と水鳥は絶賛していた。だが反対に藤吉郎は顎に手をかけて眉をしかめており、瑞貴は表情を変えず記録を取っている。
「ふっ!」
「あっ!」
ドリブルする太助からフェイがスライディングでボールを取り、さらにシュートを撃った。しかしそれを信助は横っ跳びでしっかりキャッチした。その動きは「ナイス信助!」と天馬が思わず叫んだくらいだ。
「よし、今日の練習はここまでじゃ!」
「終わった~!」
「よーし、メシぜよ! メシ!」
「お腹空いた~」
「ん?」
藤吉郎の終了の合図が出たので、獅子丸や錦や信助たちは夕飯を楽しみにしながら移動する。するとその中で天馬はゴール前で動かない太助を見て不思議に思った。