「楽しみにしているぞ」

｢｢｢｢｢!?｣｣｣｣｣


そう言い残してエイナムたちはその場から消えると、雷門イレブン以外は面識もないので驚いていた。実はベータがうしろ手でスフィアデバイスのムーブモードのボタンを押し、エイナムたちをその場から瞬間移動させたのだ。そしてベータ自身もどさくさに紛れて去って行った。



☆☆☆☆☆


信長の許可が下りて解放された雷門イレブン。そして太助とお勝もやって来ると、お勝が夕飯を作ってもらった。鍋のフタを開けるとおいしそうな湯豆腐に信助や瑞貴たちは喜びの声を上げる。


「湯豆腐だ！」

「このお豆腐、もしかしなくてもお勝ちゃんの店が作った奴？」

「はい」

「すみません。こんなことまでしてもらって……」

「あっ、いえ……」

「？」

「たくさん食べてくださいね！　お豆腐ならいくらでもありますから！」

「…………！」


瑞貴に対しては普通に答えたのに、自分に対しては顔を逸らしたお勝。どこか様子がおかしいお勝に神童は何か気づいたようで、少し顔をうつむけた。

それぞれのお椀に湯豆腐を入れ、早速食べてみると中まで火が通っていて熱々だがとてもおいしい。


「あむっ……おいひい～！」

「うん！　プルプルしてるね！」

「あったり前さ！　なんたってうちで作った豆腐なんだから！　はむっ！」

「色もいい……！」


豆腐の味に信助や天馬が褒めると太助は家の豆腐が褒められて嬉しいのか得意気に言った。茜も真っ白な豆腐に感動している。


「それにしても、『天下が取れない』って答えたときはびっくりしたぜよ！」

「まさか本当のことを言うとは思わなかったな」


今思い返してもヒヤヒヤしていたようで、いつも勝ち気な錦と水鳥は眉を下げて神童にそう言うと顔を見合わせた。


「小手先の嘘が通じるような相手ではないからな」

「おっ！　信長のことがわかってきたんじゃないのか？　これなら次のミキシマックスは成功ぜよ！」

「いや、まだだ」

｢｢？｣｣

「知れば知るほど、自分との器の大きさの違いを痛感する……」

「神さま……」


本当なら秀貞のようにあそこで斬り捨てられてもおかしくなかったが、自分たちが正直に言っていると見抜いて最後まで聞き、さらに今川軍として来たプロトコル・オメガ2.0との戦に出ることを許してくれた。

もともと差があった彼との器をさらに実感させられて、顔をうつむける神童に茜は心配する。


「そうだ。天馬たちが先の世から来たって、あの話は本当なの？」

｢｢｢｢｢！｣｣｣｣｣

「太助！」

「だって気になるよ！　それに、今日のあの役人だって、白鹿組のときにいた奴でしょ？」


お勝は咎めるが太助は言葉を続ける。彼が言っているのは、白鹿組の紅菊としていたベータのことだろうとフェイはわかった。


「気づいてたのか……」

「あったり前だよ。もしかして、今川の家臣とか言う奴らも関係あるの？」

｢｢｢｢｢…………｣｣｣｣｣

「俺、なんかマズいこと言った？」


マズいことを言ったどころか、全て的を射ているのだ。もうこれ以上は誤魔化すことができないとわかった瑞貴はフェイに顔を向ける。


「フェイくん、太助くんたちには話すべきじゃない？」

「そうですね……。話しておいたほうがいいかもしれないな……――恐らく、プロトコル・オメガとの一戦は、白鹿戦とは比べ物にならないぐらい激しいモノになる」

「だったら、俺が話すよ」

「わ、私……ちょっとお豆腐を取りに行ってきます！」


話してもいいならと天馬がそう言うと、何故かお勝はどこか慌てるように部屋から出て行った。


「太助、俺たちが先の世から来たって話は本当だ。それも、何百年も先の世から」

「何百年も!?」

「俺たちの時代……サッカーはみんなに夢を与えている。でも、そのサッカーを奪おうとする奴らが現れた。それが今川の家臣を名乗ったあいつらだ。サッカーを守るためにはあいつらを倒さなきゃいけない。でもそのためには、もっともっと強くならきゃいけなくて……だから俺たちはこの時代に来た。織田信長のパワーをもらうために」

「…………」

「わかってるんでしょうか？」

「さあ？」


太助は目を見開いたまま固まっているので、葵と水鳥は彼がちゃんと理解したのかと小声で話すと……。