「『好き』という言葉では僕の気持ちは表せないんだ。何故なら、サッカーは僕にとって全てだから」

「全て……？　そうか、そこまで……」


それほどフェイにとってサッカーは大切でかけがえのないモノなのだろう。とても真剣な目をしている。

フェイは神童にボールを返すと、神童はそれを受け取って足で押さえる。


「さっ、もう一度！」

「ああ！」


再び練習を始める神童とフェイ。それはとても真剣だが楽しそうで離れた場所にいる瑞貴にも伝わってくる。


「二人共、楽しそう」

「……瑞貴さんは、怪我をしていない兄さんに会っていたんですよね」

「えっ？　うん」


突然話を振られて瑞貴は驚いて剣城を見ると、彼は覚悟と決意を持った顔をしている。


「歴史の改変……兄さんが怪我をせず、サッカーを続けているという改変があったと聞きました。だとしたら、俺にサッカーを返してくれた、その兄さんの分までがんばらなければなりません……サッカーを守るために！」

『サッカーは僕にとって全てだから』

「っ……サッカーが全て？」

「京介くん？」


先ほどのフェイの言葉に剣城は何かを思ったらしく、その表情に今度は瑞貴が不思議そうな顔をして彼を見た。



――地蔵堂の前では踊り子になるみんなが練習を続け、それからは大方のメンバーが踊りを覚えることができたようで休憩に入る。


「よっしゃあ！　踊り、完璧ぜよ！」

「どこがだよ！」


自信満々に言う錦にツッコミを入れる水鳥の傍らで、天馬は太助とボールを蹴り合っていた。


「天馬」

「えっ？」

「俺、最初ちょっと軽く見てたんだ。サッカーっての」

「アハハハ……」


太助の言葉に天馬は肩をガクッと落として苦笑した。もともと太助たちはサッカーに似た遊びをしていたし、この時代にはサッカーがないので仕方ないのかもしれない。

天馬が蹴ったボールを取った太助はそれを足で止めると、足裏で軽くボールをいじる。


「でも、やってみていろんなことがわかった。ただ蹴ればいいってモンじゃないとか、ボールの行き先を読んで動くとか、体をぶつけ合ってボールを取り合うとか！　ホント、いろんなこと！」


語尾になるに連れて興奮するように話しだす太助は、天馬にボールを蹴り返した。


「そういうの知ることができて、スゲー面白かった！　だから俺、もっといろんなこと知りたいんだ！　サッカーのこと、天馬たちのこと、いろいろ！」

「うん！　いくぞ！」


天馬は太陽の光が当たるくらい少しボールを高く上げた。――時代を超えたサッカー仲間ができた嬉しさと共に。



☆☆☆☆☆


数日後。とうとう花見の宴の日がやってきたので地蔵堂で天馬たち雷門イレブンは最終ミーティングをする。


「いよいよですね、花見の宴！」

「神童。この作戦はお前が信長のオーラを受け入れられるかにかかっている。大丈夫か？」

「……わからない」


ワンダバの問いに神童は少しうつむいて答えた。確かに化身アームドの感覚は見えてきたが、それがミキシマックスに繋がるかはまだつかめていないのだ。


「きっとできるよ。神童くんは、きっとミキシマックスできる！　僕は信じている！」

「フェイ……」


フェイの励ましに、神童はできると信じて頷いた。彼には一番大事な気持ちがあるのでワンダバは大丈夫だろうと思う。