――外に出て葵に伴いさっそく盆踊りの練習を始めることにし、葵を見本に踊ってみる。ちなみに剣城京介は近くの木にもたれて傍観を決め込んでいた。


「はい。ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー」


オーラを手に入れるということでワンダバも参加しないため、手拍子をして指導するが……ガチガチながらも必死に踊る者、勝手にアレンジする者、遅れている者など全然噛み合っていない。


「なんかバラバラじゃない？」

「こんなので、いいのかな……？」

「あーダメだダメだ！　リズム、ステップ、ハート、全てがなってない！　これでは信長を魅了することなど夢のまた夢だぞ！」

「お前が言うな！」


瑞貴と葵が苦笑する中、ワンダバは本当の先生のように全員を叱った。しかし先ほどワンダバが変な踊りをしていたので水鳥は人のこと言えないと怒る。


「でも、ワンダバの言うことも一理あるよ。今のレベルだと花見の宴の会場から追い出されかねない」

「どうすれば……」


葵と違って自分たちは初心者だが、この尾張の国の殿様でもある信長に見せる踊りとしては最低だろうとフェイが言う。花見の宴まで日がないと天馬も顔をうつむけると……。


「踊り、うまくなりたいのか？」

「太助！」


いつの間にいたのか、今までの流れを見ていた太助がいたことに天馬たちは気づく。


「姉ちゃんに頼んでやろうか？」

「お勝さんに？」

「ただ、姉ちゃん店の手伝いあるから、あまり長い時間はムリだけど……」

「それでもいいよ！　頼んでもらえる!?」

「オウッ！　昨日俺たちを白鹿組から助けてくれたお礼をしたいしな」

「ありがとう、太助！」

「その代わり、頼みがある」

「何？」


自分たちができることなら別段構わなかったが、なんだろうと天馬は不思議に思うと、太助は照れくさそうに眼を逸らして頬をかく。


「天馬たちが言うサッカーって奴、また一緒にやりたいんだ」

「アハッ！　いいよ、やろうサッカー！」

「うん！」


――それから太助が呼んでくれたお勝が踊りの講師を務めてくれることになった。事情を聞いたとはいえ、お勝は恥ずかしそうに頬を染める。


「あまり、うまくないんですけど……私でよければ」

｢｢｢｢｢よろしくお願いします！｣｣｣｣｣


お勝から手の位置や腕の動きの指導、そしてワンダバの注意。慣れないこともいっぱいだが楽しい練習となっていた。


「さん、はい！　そーれ、そーれ、よよいのよい」

「おー！　息が合ってきた！　これならもしかすると……――えっ」


お勝の指導の甲斐があって喜ぶワンダバだが、ある程度そろっているみんなの中で錦が勝手にアレンジをして踊っていた。


「またお前か……。やはり道は遠そうだ……――こうなったら！」


何かを決意したようにワンダバは目を光らせ、どこかに行ってしまった。次いでふと天馬は先ほどまで木にもたれかかっていたはずの剣城がいないことに気づく。


「あれ？　剣城がいない」

「さっき、どっか行っちゃったよ」

「逃げたな」

「アハハ……」

「…………」


剣城が去って行くのを見た信助がそう言うと、水鳥は半目になって葵は苦笑する。その中で、瑞貴は何かを思うようにとある方向を見ていた。