「仁悟、市正にパスだ！」

「オウッ！」

「市正、太助にセンタリングだ！」

「ふっ！」


神童が再び神のタクトで指示を出していき、ゴール前に飛び込む太助はノーマークだ。


「はあっ！」

「うおおっ!?」


ゴールに入る……かと思いきや、ギリギリを狙ったせいかゴールポストに当たって跳ね返ってしまった。


「ちょこざいな！　取れ！」

｢｢オウッ！｣｣


俄然がそう叫ぶと北上と足黒がボールを取りに行くが、その前に間に入った天馬がボールを取った。


「アグレッシブビート！」

｢｢うわあっ！｣｣


そのまま天馬はアグレッシブビートで北上と足黒を抜き去り、完全フリーになってシュート体勢に入る。


「真マッハウィンド！」


天馬の必殺技が俄然の真正面に行き、彼ごとゴールに叩きつけた。

ベータという味方もおらず士気が落ちている白鹿組、対してそれからも雷門の勢いは止まらず、なんと10対２という大差をつけると試合終了の法螺貝が鳴り響いた。


《ここで試合終了!!　雷門大逆転！　白鹿組を大差で降(ｸﾀﾞ)しました――っ!!》

「やった！　白鹿組に勝ったんだ！」

「信助！　できたな、化身アームド！」

「うん！　できた！」

「やったな」

「うん！」


白鹿組に勝てて喜ぶ太助たち。そして化身アームドができた信助は天馬とハイタッチし、剣城と拳をコツンとぶつけた。

化身を持つ一年組が全員化身アームドできたのに、自分はまだできない悔しさと悲しさがあるのか、神童は試合に勝てた喜びよりそっちのほうで顔を曇らせていた。


「何を浮かん顔しとるがじゃ」

「！」

「わしらも負けてられんのう。がんばるぜよ！」

「ああ！」


錦は『先を越された』という悔しさより、それに『負けない』という気持ちでバネにている。彼の励ましに神童は今度こそ笑顔で返事をした。

すると白鹿組はドサクサに紛れてコソコソと全員が退散しようとしたが――。


「どこに行く気じゃ？」

「まさかこのまま逃げようって思ってるんじゃないでしょうね？」

｢｢｢｢｢ゲッ！｣｣｣｣｣


藤吉郎と瑞貴がそんな彼らを見逃すはずもなく、声を上げて白鹿組を止めた。


「さらったみんなをどこに連れて行ったのか、白状してもらうぞ！」

「キッチリ話すまで……――逃がさないから」

｢｢｢｢｢ヒエー！｣｣｣｣｣


両手を腰に当てて眉をしかめる藤吉郎と、黒い笑顔を浮かべる瑞貴に、白鹿組に逃げる術はなかったのだ。

そして雷門イレブンを含めて白鹿組に話を訊くと、ある人物の名が上がって神童は驚きの声を上げる。


「今川義元!?」

「今川のお殿様に言われたんだ……。『兵にするための子供たちを連れて来い』って……」

「子供たちを兵にするじゃと!?　まっこと許せんぜよ！」

「何故そんなことをする必要があるんだ!?」

「――聞いたことがあります！」


戦国武将の一人・今川義元が黒幕だとわかって、怒りのあまり拳を手の平に打ち付ける錦。そして今度は義元の狙いを問おうとすると、お勝が声を上げた。


「なんでも近々京に上るために、たくさんの兵が必要なんだとか」

「そういえば木下さんもそんなこと言ってましたね」

「ああ。だが、まさか相手が今川だとは思わんかったがな」

「白鹿組……ベータ……今川義元……」


瑞貴は白鹿組と初めて会ったときの藤吉郎の話を思い出す。そして義元に指示されていた白鹿組をベータが操っていたことを考えて嫌な予感がしていた。