来たぞ! 信長の町!!

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「助かりました」

「「ありがとうございました!」」

「私も。仲間を助けてくれてありがとうございました!」

「なーに、いいってことよ」


男性は四人に対して気にするなというように笑うが、先ほどの二人組が去った方向を見て眉をしかめる。


「あいつらは白鹿組じゃ。子供をさらって、他の国に売り飛ばしているという噂がある。気をつけろよ」

「怖いですね……」

「なんでそんなことを……?」

「今はどこの国も、戦で人手不足だからなぁ。子供をさらって兵士に育てるために売り飛ばしちょるわ」

「人を売り飛ばすなんて、ヒドい!」

「――天馬! 瑞貴さん!」


男性から白鹿組の話を聞いた葵や天馬たちが怒りを覚えると、騒ぎを聞きつけたのか神童と剣城が駆け付けてきた。


「何かあったのか?」

「はい。人さらいに遭って……危ない所を助けてもらったんです」

「この人に?」

「うん!」

「そう言えば、まだお名前聞いてませんでしたね。お伺いしても?」

「わしは、木下藤吉郎じゃ」

「「「!」」」


瑞貴が尋ねると快く名乗った男性――木下藤吉郎。その名前を聞いて瑞貴と剣城と神童は目を見開いたが、天馬と葵はすぐに思いつかず頭に引っかかっていた。


「木下藤吉郎……どっかで聞いたような気が……?」

「「あっ!」」

「木下藤吉郎って、もしかして!」

「「「「「「豊臣秀吉!?」」」」」」

「なんだ? どうしたんじゃ?」


天馬も葵もやっと気がついて顔を見合わせたあと、全員で驚きの声を上げた。しかし当の本人は何が起こっているのか逆に驚かされている。

未来の彼は信長の配下であり、主が亡きあと天下統一を果たしたと言い伝えられる、大人物であるのだから。



――白鹿組のこともあって太助たちは家に帰って行った。そして土手に座る藤吉郎の両隣に瑞貴と神童が、天馬たちは河原に立って藤吉郎にかいつまんで説明する。事情を説明し終える頃は夕方になっている。


「ハァ~……ようわからんけど、なんとうのうわかったわ」

「すいません。ややこしくて」

「お前たちが取り返そうと言う、そのサッカーというモンはそんなに楽しいモンなのか?」

「はい! 楽しいです!」

「そうか。好きなモンのそばにいることは、大事なこっちゃ。がんばらんとな」

「はい!」


藤吉郎にはサッカーがどんなモノかよくわからないが、神童や天馬たちの表情を見てどれくらい大切で大好きなモノかは伝わっていた。


「わしも今、好きなモンのおそばにいくためにがんばっとるんじゃ」

「藤吉郎さんの好きなモノって、なんなんですか?」

「わしの好きなモンは――織田信長様じゃ!」

「「「「「!」」」」」


ふと瑞貴が尋ねると、彼の口から出た信長の名に全員目を見開いた。それに気づかず藤吉郎は夕日を見つめながら言葉を続ける。


「信長様からは、この世のモノとは思えん力強さを感じるんじゃ! なんというか、あの方なら世の常識全てを変えてくれるような気がする!」

「藤吉郎さんにとって、信長様は憧れの人なんですね」

「まあ、そんなところじゃのう。わしはいつかあの方のおそばに行く! 信長様には天賦の才が宿っとる! きっと天下を取られるお方じゃ!」

「藤吉郎さん……」

「あのお方についとったら、わしも偉ぉなれるかもしれんしのう。わしは偉ぉなる! 絶対に偉ぉなってみせるんじゃ!」


野心というだろうが、彼は真っ直ぐで自分の地位も上げたいし憧れの人のそばにいたい。そんな真っ直ぐな気持ちは通じる部分があるかもしれないと、瑞貴と神童は藤吉郎を見てそう思った。



☆☆☆☆☆


ワンダバからキャラバンを停めてある山に古い地蔵堂があるという知らせを受け、全員さっそくやって来た。確かに古いしいろいろ道具が残っているが、造りはしっかりしているし中も全員で寝泊まりしても問題ない広さなので、水鳥も感嘆の声を上げた。


「結構いい根城が見つかったモンだな」

「褒めてもいいぞ。ん?」

「とりあえず掃除ね」

「こっちにホウキあるよー!」

「あっ……」


目を閉じて手をクイッと動かして待っていたが、葵や信助を始め褒めるどころかマイペースに寝泊まりの準備を始めた。見事にスルーされてワンダバはただでさえ青い体がさらに青くなった。
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