円堂瑞貴や松風天馬たち雷門イレブンは、クロノストーンとなってしまったマスターＤこと円堂大介の助言を受け、エルドラドを倒すために時を超えて時空最強イレブンを集める旅に出ることになった。

そのために『一の力――人を見抜き、大局を見抜く、静と動を合わせ持つ、真実のゲームメーカー』にふさわしい能力を持つ織田信長に会いに戦国時代へタイムジャンプする。

この時代にキャラバンはおろか自動車すらないため、山奥に着地するとフェイ＝ルーンたちはキャラバンを出た。


「西暦1554年、天文23年、尾張の国――到着」

「スゥ～～……ん～～！　なんか空気おいしい～！」

「こんなに自然豊かだものね」


大きく深呼吸する天馬の隣で瑞貴が微笑みながら言って、みんなと一緒に山の下の景色を見る。人工物となるモノは城や数軒の家だけで、他は木々や森で溢れている。現代ではよほどの田舎でないと考えられない光景だ。


「ねぇねぇ、町のほうに行ってみようよ！」

「うん！」


西園信助と天馬が意気揚々と町に行こうとしたが、剣城京介は自分たちの服装が今の時代と合っていないことに気づいて言う。


「ヘタにうろつくと、マズいんじゃないのか？」

「確かに！　今のお前たちの格好では目立ってしまうな。ならば！　ワンダバスイッチ・オン！」


クラーク＝ワンダバットがどこからか取り出したスイッチを押すと、全員服が着物に変わった。自分の姿に空野葵や信助たちは嬉しそうに声を上げる。


「ステキ！」

「なんかそれっぽくなってきた！」

「ウム！」

「錦先輩、似合い過ぎです！」

「そうか？　わしも同感ぜよ！」


錦龍馬は普段から侍のような貫禄があるせいか、着物姿が特に似合っていたので天馬は感嘆の声を上げた。


「江戸時代と、微妙に混同してないか？」

「うん……」

「だけど二人共、とっても似合っているよ。いつもと違ってカッコいい！」

｢｢っ！　あ、ありがとうございます……｣｣


瑞貴もいつもと違って可愛い着物を着ている上に満面の笑みを向けられたので、剣城と神童拓人は顔を赤らめて恥ずかしそうに視線を逸らした。


「マネージャーのみんなも可愛いね」

「瑞貴さんこそ、似合ってるぜ」

「でもちょっと、剣城くんの言うことも一理あるかも……」

「大丈夫ですか？　ワンダバさん――」

｢｢｢わっ！｣｣｣

「大丈夫だ！　気にするな！」


瑞貴と瀬戸水鳥が褒め合う中で山菜茜や葵や瀬戸水鳥がワンダバを見ると、彼は三度笠を被ってマントのようなモノを羽織っており、藁を加えた上に石に片足を当ててカッコつけた。


「とりあえず、キャラバンを隠さないとマズいよ！」

「おっとそうだ！　ワンダバスイッチ・オン！」


フェイに言われて気づいたワンダバは、もう一度先ほどと同じスイッチを押す。するとさっきまであったキャラバンが見えなくなってしまったので、天馬たちは驚いた。


「消えた……」

「見えなくしただけだ。ではさっそく町に出てみるか――」


ガンッ！


「ンガッ！」

｢｢｢｢｢…………｣｣｣｣｣


自分で言ったのにキャラバンがあるほうへ足を進めたため、見えなくなったキャラバンにワンダバはぶつかって倒れてしまった。

――雷門イレブンはさっそく街に降りた。行き交う人々の邪魔にならないように道の脇で一列に並んで、その光景を見ると本当にタイムジャンプしたのだと天馬や信助たちは感動する。


「わあ～！　これが昔の日本か！」

「見て見て！　時代劇みたいでスゴいよ！」

「こりゃあ、あの名作・『十一人の侍忍者』のセットにも負けてないぜ！　本格的だなぁ……！」

「本格的って表現、なんか違う」


家の壁を撫でながら水鳥がそう言うと、茜は鋭いツッコミを炸裂した。


「水鳥さん、歴史に詳しいですね！」

「こいつはただのチャンバラオタクぜよ」

「なんだと!?」

「まあまあ」


葵に褒められて得意気になる水鳥だが、錦の余計なひと言で今にも殴りかからんと袖を上げる。さすがにケンカはマズいので葵は苦笑して宥めた。


「本当に来たんだな、信長の時代に」

「なんか、信じられないですよね！」


神童も感動を覚えているので天馬も同意するが、瑞貴と剣城がみんなに話しかける。


「だけど、いつまでもここにいるわけにはいかないよね」

「で、どうすれば信長に会えるんだ？」

「えっ！　さあ……？」


自分たちは観光に来たわけじゃない。本来の目的があるのだが信長本人に会える方法はわからないので天馬も苦笑すると、フェイが提案を出す。