「化身の声を聞くんだ」

「フェイ、知ってるの？」

「うん」


理屈より実戦でやったほうがいいというフェイが提案した。瑞貴はマネージャーたちと同じくベンチ前に行って記録し、選手たちはピッチで特訓を開始した。

ペナルティエリア前に並ぶフェイたちに向かい、反対側のエリアにいた天馬がドリブルする。


「うおおぉぉおおお！　魔神ペガサスアーク！」

「化身アームドするには、化身の声を聞くんだ」

「化身の声を？」

「集中して、心の耳を澄ませて」

「…………」


化身を出したと同時に動きを止めた天馬は、フェイにそう言われて目を閉じると集中する。


「力を一気に開放する！」

「アームド！」


そう叫ぶと同時に化身は光輝き、ベータと同じように化身がオーラに戻って複数に分裂すると天馬の元へ向かう。


「やった！」

「いいぞ、天馬！」

「…………」


葵と水鳥はイケると思って喜ぶが、フェイだけは眉を少ししかめる。それを危惧していた通り、天馬は化身アームドに失敗してしまった。いいとこまでいってたのにと信助は残念そうに声を上げる。


「あー……！」

「やっぱり難しい……」

「もう少しわかりやすく説明するぜよ」

「こればっかりは感覚の問題だからね。僕が言えることは――化身を感じ、声を聞き、気持ちを一つにすること」

「気持ちを一つに……」

「うん」

「やってみるよ！」


詳しい説明を求める錦にフェイがそう言うと、天馬はとにかく練習あるのみだと意気込む。


「剣聖ランスロット！　はああぁぁあああ！」


剣城もまたチャレンジしてみるため、剣聖ランスロットを出すと気合いを入れてみる。しかし空中でオーラとなって分裂することはおろか、すぐに消えてしまった。


「気を高めるだけではダメか……！」

「奏者マエストロ！」


続いて神童が奏者マエストロを出してチャレンジする。


（精神を化身に集中して……！）


目を閉じた神童は化身の声を聞き気持ちを知ろうと集中する。しかし剣城と同じように消えてしまった。


「っ、ダメなのか……!?」

「護星神タイタニアス！　とうっ！　アームド！」


信助は一体化しようと化身に自分から飛びかかった。だが、化身は信助に触れる前に消える。


「戦国武神ムサシ！　ようっ！　おまん、化身アームドのやり方知っちゅうがか？」


…………。


錦は自分の化身である戦国武神ムサシに話しかけてみるが、何も答えてくれなかった。そもそも化身がしゃべるかどうかも疑問だが。


「思い出すんだ！　化身アームドできたあの感覚を！　うおおぉぉおおお！」

「いいぞ――っ!!　燃やせ、ハートを！　弾けろパッション！　情熱…フルスロットルだ――っ!!」

｢｢｢｢｢…………｣｣｣｣｣


エキサイティングゲージが高まって燃え上がるワンダバだが、あまりにも声が大きいのでマネージャー組と瑞貴とフェイは耳を塞ぐのだった。


それからも何度も特訓してみるが、なかなか進展しない様子を見てフェイは瑞貴に話しかける。


「瑞貴さん、よかったらやってみてくれませんか？」

「えっ？　でも私のも時空の共鳴現象だと思うけど……」

「僕は瑞貴さんならできると思いますよ」


小休憩がてら天馬たちはピッチに入ってきた瑞貴を見やる。失敗でも成功でも客観的に見ることで何かヒントが得られると思ったからだ。


「自然の巫女神プシュケ！　アームド！」


瑞貴の化身である自然の巫女神プシュケは、光輝くオーラとなって瑞貴の元へ向かう。ここまでは天馬と同じだが――なんと瑞貴は見事成功させることができたのだ。天馬と信助と神童以外は初めて見るのでびっくりする。