《ここで試合終了――っ!!　雷門の勝利だ――っ!!》

「京介……ありがとう」

「敗北……信じ難い結果だ」


ピピピッ。


「っ、イエス。撤退する」

「はい」


ミキシマックスを解除して元に戻った優一。そしてアルファは未来から通信を受けて歯を食いしばると、エイナムたちにそう告げる。上空にはルートクラフトが現れると同時に、アルファはスフィアデバイスのボタンを放ってボール型にする。


（なんだ……？　胸の奥に疼く、このトゲのような感覚は……！）

【ムーブモード】


そして青いボタンを足で押したアルファを始め、プロトコル・オメガはルートクラフと共に消えた。



――試合が終わった頃には夕方になり、天馬と信助と神童を除いた他の三人は元の服に着替えた。


「ミッションコンプリートだね」

「これで歴史が変わったの？」

「うん。本当の雷門中サッカー部を取り戻したはずさ」

「本当の、雷門中サッカー部……か」


実感が湧かない信助にフェイがそう告げる。神童は寂しそうに笑う優一を見ると、どこか遠くを見ていた彼はこちらに体を向けてフッと笑った。


「天馬くん。これで俺の役目は終わった」

「優一さん……」


パアアァァアアア――！


すると優一の体が淡い光に包まれていく。まるで役目を終えたアーティファクトが消えていくときと同じように。


「これは……！」

「正しい時間の流れにインタラプトが修正された。彼は、存在した歴史とともに消滅するんだ」

「時間のようだな」


足元からどんどん優一の体が光の粒と共に消えていく。すると拳をギュッと握りしめた瑞貴は優一に向かって叫んだ。


「優一くん！」

「！」

「私、ちゃんと待ってるから！　約束を果たしに来てね！」

「っ！　ありがとうございます」


最後に優一は嬉しそうに笑い、とうとう完全に消えてしまった。

偽りの時間を生きていたとはいえ、短くても共に戦った仲間だ。ひと筋の涙を流す瑞貴に神童はそっと寄り添った。


「さあ、戻ろう。君の知ってる剣城くんが待ってるはずだ」

「……うん」


フェイにそう言われ、天馬たちはこの時代に別れを告げることになった。



☆☆☆☆☆


現代の雷門中にタイムジャンプすると、こちらも夕方になっていた。そして天馬と信助と瑞貴はロッカールームに行くと……そこには誰もいなかった。


「そんな！」


ガ――……。


「なんだ、来てたのか」

｢｢剣城～～っ!!｣｣


うしろの扉が開くとユニフォーム姿の剣城がいたので、感極まった天馬と信助が抱きつこうと飛びかかる。


「あっ」


ガンッ！


しかし瑞貴が声を上げると同時に剣城は同時に姿勢を低くしてかわし、挙げ句に閉まった扉に天馬と信助は頭をぶつけてしまった。


｢｢イッテ～～｣｣

「大丈夫？」

「……何やってんだ？」


座り込んで頭を抱えて涙目になる天馬と信助を瑞貴もしゃがんで心配する。いきなり飛びついてくるといい不可解な行動をする二人に剣城は不思議に思った。


「いや、剣城はここにいるんだなって」

「フゥ……――サッカー部なんだ。当たり前だろ」

「っ、ああ！」


本当に剣城がサッカー部に帰ってきたとわかった天馬は嬉しくなって声を上げると、剣城はまた不思議に思いながらもフッと笑った。そして天馬は剣城から消えてしまった優一の姿が重なって見える。


「あのさ、優一さんはどう？」

「ああ。順調に回復してる。リハビリもこなしているしな」

「そうか……」

『ありがとうございます』


確かに『昔からサッカーができる優一』は消えてしまったけど、『これからサッカーができる優一』がいるのなら、また彼のプレーを見ることができるだろう。天馬は少しの寂しさとこれからの期待を胸に秘めた。