最後のサッカー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「少しの時間、サッカー付き合わないか?」
「…………」
(俺とお前の、最後のサッカーを)
最後の言葉は優一の胸の中に秘めて、剣城に真実を教えることはできなかった。そうすれば剣城は必ず自分を止めるだろうし、今度こそサッカーをやめるだろう。
「……じゃあ一回だけなら、付き合ってやるよ」
「っ! ありがとう……!」
剣城は優一にボールを蹴り返し、優一もまた蹴り返す。続いて優一は少し横に外れた場所に蹴ったが剣城は即座に反応して見事に取った。本当に今までサッカーから離れていたとは思えないほどだ。
「さすがだな、京介!」
「……フッ」
それから二人は共にボールを蹴り続けていく。最初はしぶしぶだった剣城もサッカーをやる内に自然と笑顔になり、二人はとても楽しそうだ。
「よかった……!」
「うん」
「京介くんも優一くんも、とっても楽しそう」
その光景を土手の上で天馬とフェイ、そして二人きりにさせるために抜けた瑞貴は見守っており、こちらも自然と笑顔になっていた。
☆☆☆☆☆
翌日。雷門中に停めたキャラバンの前に早く集合したのは天馬と瑞貴とフェイ、そして神童と信助だけだった。優一は約束通りアーティファクトとなる古いボールを持って来た。
「これが俺の――いや、俺たち兄弟のアーティファクトだ。小さいとき、ずっとこのボールで京介とサッカーをしてたんだ」
「OK」
優一からボールを受け取ったフェイは、大事に持ってキャラバンにセットするために中に入った。
「よかったですね。剣城とサッカーできて」
「ああ」
天馬の言葉に笑顔で返す優一は、心の底から嬉しそうだった。
「アーティファクト、セット完了。時空間の振幅波動が弱くなってる。急がないと元に戻せなくなるぞ」
「うん……」
時間がだいぶ経っているのか、すぐに向かわないといけないらしい。フェイはこのとき何を思ったのか弱々しく返事をすると、外で待っているみんなに声をかける。
「天馬、すぐに出発するよ」
「えっ? サッカー部のみんなを待つんじゃないの?」
「今タイムジャンプしないと、歴史の改変ができなくなるかもしれないんだ」
「わかった」
「「「「「!」」」」」
「いいね?」
先に了承したのは優一だった。そして彼はみんなに確認を取ると、瑞貴も天馬も信助も神童も力強く頷いて全員キャラバンに乗り込んだ。
「ワームホール周期確認! タイムルート検出開始! 座標軸照合! タイムジャンプ5秒前! 4…3…2…1! ターイムジャ――ンプッ!!」
キャラバンはワームホールの中に入り、時空の波にしばらく乗って行った。
☆☆☆☆☆
キャラバンは六年前のとある公園に着陸した。幸い木々が多い公園だったため、突然現れたキャラバンに誰も気づくことはなかった。初めてタイムジャンプした神童は本当に時間を超えたのか信じ難く思う。
「ここが過去?」
「間違いない。ほら、六年前の俺と京介だ」
優一が指差した先には、子供の頃の優一と剣城が楽しそうにボールを蹴っていた。
「確かに、剣城先輩だ」
「スゴい…スゴいよ! 僕たち本当に時間をさかのぼったんだね!」
「うん!」
小さいが面影が確かにあると神童が確認すると、時を超えたと実感した信助は嬉しそうに天馬に言った。
「初めて会ったときより成長しているけど、昔もこの時代も二人は可愛いね」
「さすがに可愛いは複雑ですよ」
そして今の剣城兄弟よりもさらに小さい頃に瑞貴は会っているので、過去の彼らを見て懐かしく思ったのかクスクスと笑う。それに苦笑しつつもどこか嬉しそうに笑っていた優一に、ワンダバは真剣な表情で話しかける。
「本当にいいのか? 歴史の改変を元に戻せば、君の足は動かなくなるんだぞ」
「それが本当の運命なら、受け入れるさ。受け入れた上で乗り越えてみせる。それに、もう思い残すことはない……願いは叶った。もう一度だけ、あいつとサッカーやりたかったから」
昨日優一は剣城と遅くなるまでサッカーをしていた。一日にも満たなかったが、それだけで充分満足している。
「…………」
(俺とお前の、最後のサッカーを)
最後の言葉は優一の胸の中に秘めて、剣城に真実を教えることはできなかった。そうすれば剣城は必ず自分を止めるだろうし、今度こそサッカーをやめるだろう。
「……じゃあ一回だけなら、付き合ってやるよ」
「っ! ありがとう……!」
剣城は優一にボールを蹴り返し、優一もまた蹴り返す。続いて優一は少し横に外れた場所に蹴ったが剣城は即座に反応して見事に取った。本当に今までサッカーから離れていたとは思えないほどだ。
「さすがだな、京介!」
「……フッ」
それから二人は共にボールを蹴り続けていく。最初はしぶしぶだった剣城もサッカーをやる内に自然と笑顔になり、二人はとても楽しそうだ。
「よかった……!」
「うん」
「京介くんも優一くんも、とっても楽しそう」
その光景を土手の上で天馬とフェイ、そして二人きりにさせるために抜けた瑞貴は見守っており、こちらも自然と笑顔になっていた。
☆☆☆☆☆
翌日。雷門中に停めたキャラバンの前に早く集合したのは天馬と瑞貴とフェイ、そして神童と信助だけだった。優一は約束通りアーティファクトとなる古いボールを持って来た。
「これが俺の――いや、俺たち兄弟のアーティファクトだ。小さいとき、ずっとこのボールで京介とサッカーをしてたんだ」
「OK」
優一からボールを受け取ったフェイは、大事に持ってキャラバンにセットするために中に入った。
「よかったですね。剣城とサッカーできて」
「ああ」
天馬の言葉に笑顔で返す優一は、心の底から嬉しそうだった。
「アーティファクト、セット完了。時空間の振幅波動が弱くなってる。急がないと元に戻せなくなるぞ」
「うん……」
時間がだいぶ経っているのか、すぐに向かわないといけないらしい。フェイはこのとき何を思ったのか弱々しく返事をすると、外で待っているみんなに声をかける。
「天馬、すぐに出発するよ」
「えっ? サッカー部のみんなを待つんじゃないの?」
「今タイムジャンプしないと、歴史の改変ができなくなるかもしれないんだ」
「わかった」
「「「「「!」」」」」
「いいね?」
先に了承したのは優一だった。そして彼はみんなに確認を取ると、瑞貴も天馬も信助も神童も力強く頷いて全員キャラバンに乗り込んだ。
「ワームホール周期確認! タイムルート検出開始! 座標軸照合! タイムジャンプ5秒前! 4…3…2…1! ターイムジャ――ンプッ!!」
キャラバンはワームホールの中に入り、時空の波にしばらく乗って行った。
☆☆☆☆☆
キャラバンは六年前のとある公園に着陸した。幸い木々が多い公園だったため、突然現れたキャラバンに誰も気づくことはなかった。初めてタイムジャンプした神童は本当に時間を超えたのか信じ難く思う。
「ここが過去?」
「間違いない。ほら、六年前の俺と京介だ」
優一が指差した先には、子供の頃の優一と剣城が楽しそうにボールを蹴っていた。
「確かに、剣城先輩だ」
「スゴい…スゴいよ! 僕たち本当に時間をさかのぼったんだね!」
「うん!」
小さいが面影が確かにあると神童が確認すると、時を超えたと実感した信助は嬉しそうに天馬に言った。
「初めて会ったときより成長しているけど、昔もこの時代も二人は可愛いね」
「さすがに可愛いは複雑ですよ」
そして今の剣城兄弟よりもさらに小さい頃に瑞貴は会っているので、過去の彼らを見て懐かしく思ったのかクスクスと笑う。それに苦笑しつつもどこか嬉しそうに笑っていた優一に、ワンダバは真剣な表情で話しかける。
「本当にいいのか? 歴史の改変を元に戻せば、君の足は動かなくなるんだぞ」
「それが本当の運命なら、受け入れるさ。受け入れた上で乗り越えてみせる。それに、もう思い残すことはない……願いは叶った。もう一度だけ、あいつとサッカーやりたかったから」
昨日優一は剣城と遅くなるまでサッカーをしていた。一日にも満たなかったが、それだけで充分満足している。