最後のサッカー
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剣城優一が助っ人に来てくれたおかげで、十一年前の雷門中サッカー部設立を守ることができた松風天馬と井上瑞貴とフェイ=ルーン。しかし雷門中サッカー部が元に戻ったと思ったら優一の弟・剣城京介の姿がどこにもなかった。
本来の時間の流れを取り戻すため、弟にサッカーを返すため、雷門中サッカー部の協力を仰ぐ優一。しかしそれは同時に優一が元のようにサッカーができなくなるということなので、フェイは改めて優一の覚悟を問う。
「戦うんだね? 歴史を元に戻すために」
「ああ。でもその前に時間がほしい」
「時間?」
「アーティファクトを手に入れて来る。必要だろ? それに、やっておきたいことがある」
「わかった。出発は明日だ」
フェイとクラーク=ワンダバットの了承を得た優一はそのままグラウンドを去っていくので、天馬と瑞貴は気になって、優一に付いて行くことにした。
☆☆☆☆☆
着いた場所はゲームセンターで、その内の一つの対面ゲーム機で遊んでいる剣城がいた。彼の元へ行こうとする天馬に優一が腕を広げて止める。
「剣城――」
「行かないほうがいい。京介は君のことを知らないんだからな」
「そうか。京介くんが天馬と出会ったのはサッカーがキッカケだから……」
フィフスセクターのシードという立場で敵同士だったが、それはサッカーがあったからだ。当然サッカーをやめてしまった今の剣城は天馬を知ることもない。
優一は天馬と瑞貴に優しく微笑むと、剣城の元へと向かって声をかける。
「京介」
「っ、兄さん……」
「ちょっと、付き合ってくれないか? 河川敷へ行ってみたいんだ」
「河川敷?」
「ああ」
「…………」
「サッカー、やらないか? 久しぶりに」
「っ! 悪い、兄さん。一人で行ってくれ」
サッカーという言葉を聞いて口をつぐんだ剣城は、ゲームを中断して立ち上がるとまたどこかへ行ってしまった。それを見て優一は寂しそうに眉を下げる。
「変わらないのか? 気持ちは……」
「剣城……」
「…………」
天馬はあんなにサッカーが大好きだったはずの剣城の行動が信じられなかったが、対して瑞貴は何かを想うように剣城の背を見えなくなるまで見届けていた。
――あそこにそのままいるわけにもいかず、三人は場所を変えて鉄塔広場に来た。
「やっておきたいことって、剣城とのサッカーだったんですね」
「ああ。これが最後のチャンスなんだ」
「優一くん、最後のって……?」
「サッカーができる今の俺は、消えなくちゃならない。真実を歪めて、京介からサッカーを奪うことはできないからね」
「優一さん……」
「サッカーができなくなる前に、もう一度だけ京介とサッカーしたかった。あの頃のように……」
豪炎寺修也のようにサッカーがうまくなりたい、瑞貴ともう一度サッカーをするという約束を果たしたい――そう思って楽しく毎日ボールを兄弟で蹴っていた。しかし今となってはそれが遠い思い出のようで優一は苦笑した。
「でも、やっぱりムリなのかな。もう一度なんて……」
「そんなことないです! きっと、剣城だって……!」
「ありがとう……。明日は、がんばろうな。本当の雷門中サッカー部を取り戻すんだ」
そう言って去って行く優一は寂しげだった。きっと本心は剣城とどうしてもサッカーがやりたいだろうに、雷門中サッカー部を取り戻すことだって考えてくれている。
彼の優しい心と気遣いは天馬にも伝わっている。だからこそ何かしてあげたいと思っていると察し、瑞貴は天馬の肩にポンッと手を置いた。
「私、優一くんを追うよ」
「瑞貴さん?」
「天馬は天馬のやりたいことをやって。考えることはいつだってできるけど、それを行動に移すのは練習だろうと本番だろうと、この瞬間は一度きりだけ。だからやれる内はやっておいで」
そう言ってニコッと微笑んだ瑞貴は優一のあとを追うべく走り出した。そして残った天馬は拳を一度握り締めると、決意したように顔を上げるのだった。
――瑞貴から後押しをしてもらった天馬はもう一度ゲームセンターに戻ろうとすると、ちょうど剣城が中から出てきた。
「剣城!」
「あ? 誰だ、お前」
「っ! ……本当に知らないんだね」
優一の言った通り、サッカーと関わっていない今の剣城は本当に天馬のことを知らない。知ってたとはいえ実感すると悲しくなるが、今はそんな場合じゃないと天馬は言葉を続ける。
本来の時間の流れを取り戻すため、弟にサッカーを返すため、雷門中サッカー部の協力を仰ぐ優一。しかしそれは同時に優一が元のようにサッカーができなくなるということなので、フェイは改めて優一の覚悟を問う。
「戦うんだね? 歴史を元に戻すために」
「ああ。でもその前に時間がほしい」
「時間?」
「アーティファクトを手に入れて来る。必要だろ? それに、やっておきたいことがある」
「わかった。出発は明日だ」
フェイとクラーク=ワンダバットの了承を得た優一はそのままグラウンドを去っていくので、天馬と瑞貴は気になって、優一に付いて行くことにした。
☆☆☆☆☆
着いた場所はゲームセンターで、その内の一つの対面ゲーム機で遊んでいる剣城がいた。彼の元へ行こうとする天馬に優一が腕を広げて止める。
「剣城――」
「行かないほうがいい。京介は君のことを知らないんだからな」
「そうか。京介くんが天馬と出会ったのはサッカーがキッカケだから……」
フィフスセクターのシードという立場で敵同士だったが、それはサッカーがあったからだ。当然サッカーをやめてしまった今の剣城は天馬を知ることもない。
優一は天馬と瑞貴に優しく微笑むと、剣城の元へと向かって声をかける。
「京介」
「っ、兄さん……」
「ちょっと、付き合ってくれないか? 河川敷へ行ってみたいんだ」
「河川敷?」
「ああ」
「…………」
「サッカー、やらないか? 久しぶりに」
「っ! 悪い、兄さん。一人で行ってくれ」
サッカーという言葉を聞いて口をつぐんだ剣城は、ゲームを中断して立ち上がるとまたどこかへ行ってしまった。それを見て優一は寂しそうに眉を下げる。
「変わらないのか? 気持ちは……」
「剣城……」
「…………」
天馬はあんなにサッカーが大好きだったはずの剣城の行動が信じられなかったが、対して瑞貴は何かを想うように剣城の背を見えなくなるまで見届けていた。
――あそこにそのままいるわけにもいかず、三人は場所を変えて鉄塔広場に来た。
「やっておきたいことって、剣城とのサッカーだったんですね」
「ああ。これが最後のチャンスなんだ」
「優一くん、最後のって……?」
「サッカーができる今の俺は、消えなくちゃならない。真実を歪めて、京介からサッカーを奪うことはできないからね」
「優一さん……」
「サッカーができなくなる前に、もう一度だけ京介とサッカーしたかった。あの頃のように……」
豪炎寺修也のようにサッカーがうまくなりたい、瑞貴ともう一度サッカーをするという約束を果たしたい――そう思って楽しく毎日ボールを兄弟で蹴っていた。しかし今となってはそれが遠い思い出のようで優一は苦笑した。
「でも、やっぱりムリなのかな。もう一度なんて……」
「そんなことないです! きっと、剣城だって……!」
「ありがとう……。明日は、がんばろうな。本当の雷門中サッカー部を取り戻すんだ」
そう言って去って行く優一は寂しげだった。きっと本心は剣城とどうしてもサッカーがやりたいだろうに、雷門中サッカー部を取り戻すことだって考えてくれている。
彼の優しい心と気遣いは天馬にも伝わっている。だからこそ何かしてあげたいと思っていると察し、瑞貴は天馬の肩にポンッと手を置いた。
「私、優一くんを追うよ」
「瑞貴さん?」
「天馬は天馬のやりたいことをやって。考えることはいつだってできるけど、それを行動に移すのは練習だろうと本番だろうと、この瞬間は一度きりだけ。だからやれる内はやっておいで」
そう言ってニコッと微笑んだ瑞貴は優一のあとを追うべく走り出した。そして残った天馬は拳を一度握り締めると、決意したように顔を上げるのだった。
――瑞貴から後押しをしてもらった天馬はもう一度ゲームセンターに戻ろうとすると、ちょうど剣城が中から出てきた。
「剣城!」
「あ? 誰だ、お前」
「っ! ……本当に知らないんだね」
優一の言った通り、サッカーと関わっていない今の剣城は本当に天馬のことを知らない。知ってたとはいえ実感すると悲しくなるが、今はそんな場合じゃないと天馬は言葉を続ける。