「サッカーは消させない！　はああぁぁあああ！　魔神ペガサスアーク！」

「化身とは……次元が低い！」


アルファの蹴ったスフィアデバイスに天馬が化身の力を借りて蹴り返そうとするが、触れただけで化身が消えてしまい天馬にダメージが来る。


「ぐあっ！」

「天馬！」

「これくらい……！」

「そうかな？」

｢｢！｣｣


いつの間にか二人の周りには、先ほどの少年少女たちが囲んでいた。スフィアデバイスもまだオレンジ色のままで、アルファの元へ戻って行く。


「体や心を痛めつける、苦しみしか生まないサッカーはサッカーじゃない！　はああぁぁあああ！　自然の巫女神プシュケ！」


彼らが何をするかわかった瑞貴も化身を出したが、アルファたちの表情が変わることはなかった。


「その姿では本来の姿と同等の力は出せない。故に――無力！」

「わあっ！」

「瑞貴さん！」


瑞貴もまた化身を触れただけで消され、スフィアデバイスをぶつけられる。それから二人は何回もアルファたちにシュート並の威力でスフィアデバイスをぶつけられ、体をどんどん痛めつけられていった。

途中でアルファが合図を出したので攻撃が止まり、ダメージを持つ二人は両手と両膝を地に付けて肩で息をする。


「さあ、どう感じた？」

「ウッ……！」

「クッ……！」

「感じたか、サッカーの恐ろしさを。サッカーは痛い…辛い…重い…苦痛…邪悪…不必要――そう、サッカーは不必要」

｢｢サッカーは……！｣｣


まるで催眠術のように体を痛める天馬と瑞貴に言うアルファ。それでも抵抗する二人にあと一歩と思ったのか、アルファはスフィアデバイスをもう一度ぶつけようとすると――。


シュンッ！


「！」


突如横から現れた別の少年がジャンプしてスフィアデバイスを奪い、着地するとオーバーヘッドでアルファに返した。そのせいでストライクモードの光が消え、瑞貴と天馬は我に返る。


「サッカーは必要だ。そうでしょ？　これは君たちの言葉だよ、天馬、瑞貴さん」

｢｢えっ……？｣｣

「何者だ」

「僕の名前はフェイ＝ルーン。天馬と瑞貴さんと同じ、サッカーを必要としている者さ」


少年――フェイ＝ルーンは瑞貴と天馬にそう言ったあと、アルファを真っ直ぐ見て告げた。


「二人をいたぶって楽しい？　だったら勝負しようよ」

「勝負？　どういう勝負だ」


パチンッ。


｢｢ええっ!?｣｣


フェイが指を鳴らした途端、彼の背後から現れたオーラが九人の少年少女を作り出した。さらにみんな同じユニフォームを着ており、フェイ自身も服がユニフォームに変わっていた。

何もかもが突拍子過ぎるので天馬と瑞貴は目をパチクリし、またも目の前の状況に追いつけない。


「これでどう？」

「……わかった」

「つまりこれって、サッカーで勝負するってこと？」

「そうだよ。天馬も瑞貴さんも一緒にね」

｢｢ええっ!?｣｣


二人は驚いたがサッカーを守るために必要だと言われたため了承した。それから天馬は背番号８で瑞貴は背番号６とフェイから渡されたユニフォームに着替える。

ふと瑞貴は自分の髪がポニーテールにしていることに気づいた。大人からそのまま子供になったせいだろう。違和感を感じたのか髪ゴムを外して一度髪を下ろす。


「うん、やっぱりこのほうがしっくりくるね」


瑞貴は髪を頭の一番下に結び直して頷くと、天馬がジーッと見ていることに気づく。


「どうしたの？」

「いえ、その……なんだか、俺が憧れたイナズマジャパン当時の瑞貴さんと一緒にサッカーができるんだなって思って。不謹慎だけどなんだか嬉しいです」

「そりゃあ本人だからね。中身は大人のままだけど」

「天馬、瑞貴さん、ポジションの確認をするよ」

｢｢うん！｣｣


それから両チームの準備が終了すると、突然マイクを持った男性が現れた。それどころか本人も何故自分がこんな所にいるか驚いている。


「おおっ!?　なんでマイク!?」


ピピピッ。


「ではお願いする」

《オウッ！　任せとけぃ！》


男性――フィールドの近くにある海の家の店主・矢嶋陽介はアルファの言葉とマイクからの光により洗脳され、さっきと打って変わってノリノリで実況を開始する。