「こいつ！」

「そよかぜステップ！」


天馬は護巻徹郎をそよかぜステップでかわし、ＧＫ・千宮路大和と一対一となった。


「魔神ペガサスアーク！　いっけえぇぇえええ！」

「図に乗るな……虫けら共が！　いでよ！　はああぁぁあああ！　賢王キングバーン！」


化身シュートを放った天馬に対し、大和は冷たい光を放つ瞳を持つ気高き王者の化身・賢王キングバーンを現した。


「キングファイア！」


四つの手から放つ燃え盛る四つの炎が、ボールを燃やしつくして灰にした。ＦＷだけでなくＧＫまで化身使いがいたと思わず、天馬たちは目を見開く。


「まさか、キーパーまで化身使い!?」

「ハンッ！　お前は何もわかっていない……」

「！」

「我らドラゴンリンクは十一人全員が――化身使いだ！」


大和の言葉を合図にドラゴンリンクは全員が化身を出す。

郷石が番人の塔ルーク、護巻が魔女クイーンレディア、猪狩と合川が鉄騎兵ナイト、神山豪之神と五味が魔宰相ビショップ、後藤と伍代と御戸と聖城が聖衛兵ポーン、そして大和が賢王キングバーン……十一体の化身がピッチに現れる。あまりの光景に角間王将や観客たちや雷門は驚いた。


《な、なんと聖堂山！　選手全員が化身を出したぞ――っ!!》

「あっ……嘘でしょ!?」

「おったまげたぜよ……！」


一度の試合でここまでの化身を見たことがなく、速水も錦もその迫力に思わず上半身を少し引いてしまう。


「あっ！　あれは！」

「遅かったか……！」


その同時刻、観客席から緑川リュウジと吉良ヒロトが現れた。彼らはドラゴンリンクの全員が化身使いと言う情報を教えようとしたが、ひと足遅かった。


「ドラゴンリンクの恐怖、その身で――知れぃ！」

「松風！」

「っ！」


うしろにいる化身に顔を向けていたため、大和が蹴った化身シュートを天馬は剣城が呼び止めるまで気づかなかった。すると――。


「危ない！」

「倉間先輩！」


横から飛び込んで来た倉間が身を挺して天馬をかばった。そして倉間だけでなく、ドラゴンリンクの選手は化身シュートを雷門選手を巻き込みながらパスに使っている。


「フンッ！　お前たちに我々を止めることなどできん！」

「うおおぉぉおおお！　護星神タイタニアス！」


最後に取った聖城はゴールに狙いをつけており、信助もまた化身を発動した。それでも大和たちの余裕が崩れることはない。


「超攻撃的サッカー軍団、フィフスセクターの最終兵器……」

「それが俺たち、ドラゴンリンクだ！」

「マジン・ザ・ハンド！」


信助は化身の必殺技で対抗するも、聖城の化身シュートに負けてしまいゴールを許してしまった。


《き、決まった――っ!!　聖堂山、化身でボールを繋ぎ強烈なシュートで雷門ゴールをこじ開けた――っ!!》

「全員が化身使い……」

「これが、千宮路大悟の目指したサッカーなのか……!?」

「まるで、圧倒的な力で相手をひれ伏すようなサッカー……！」


フィフスセクターの創始者・千宮路大悟が育て上げたチーム・ドラゴンリンク。鬼道有人と円堂と瑞貴だけでなく、この場にいる全員が、彼の管理サッカーという目指す思考のために生み出された力を目の当たりにしたのだ。