――ハーフタイムの中、両チームは控え室へ移動して休憩を取っていた。そこへ葵と水鳥と茜が前半戦を見た興奮を天馬に伝える。


「スゴいじゃない、天馬！」

「聖堂山と互角の勝負をしている。大したモンだぜ！」

「ええ……」

「どうしたの、天馬？」


嬉しそうな葵や水鳥たちに対し、苦笑する天馬はキャプテンマークに手を添えながら呟く。


「俺、神童キャプテンみたいにちゃんとやれてるかなって……」

「やれてるって！　点だって取り返して、どっちかっつーとこっちが押してるじゃねぇか！」

「自信持って」

「そうそう！」

「うん」


すると会話が聞こえていたのか、三国が天馬のそばに寄ってその肩にポンッと手を置く。


「お前は充分、キャプテンとしての務めを果たしてる」

「ありがとうございます。神童キャプテンの想い……それに、みんなの想いを背負ってるから、なんとかやれてるんだと思います。でも俺……――」

「心配するな！」

「お前のうしろには俺たちがいるド！」

「俺たちがしっかり支えてやる！」


三国だけじゃない。天城も車田もＤＦとして、先輩として、天馬を支えるべくいるのだ。いつだって頼っていいと言ってくれる彼らに天馬の表情が少し柔らかくなる。


「はい！　俺、少しでも神童キャプテンに近づけるようにがんばります！」

「僕たちも、応援してるからね！」

「ありがとう」


マネージャーや先輩や輝から励ましをもらっても、天馬はいつもの笑顔を見せてくれない。そう思った信助はふと思う。


「やっぱり重いのかな？　キャプテンの責任って」

「うん……。でも、聖堂山と試合できて嬉しいんだ。怖い相手だけどみんな本気でサッカーに向き合ってて、本当にいいチームだなって思う」

「そっか～。僕もフィールドで戦いたいよ。天馬、僕の分もがんばってね！」

「うん！」

「おいおい、敵を褒めてどうする」

「あっ、そうだね」

「だが、天馬の言うこともわかるぜよ。あいつらなかなか骨があるき！」

｢｢｢｢｢うん！｣｣｣｣｣

「確かに、聖帝が監督を務めるチームだなんて信じられないですよね」


聖堂山のプレーを褒める天馬に狩屋は呆れたが、錦だけじゃなく他のみんなも天馬に同意するように頷いた。それはベンチから見ていた輝たちもわかる。……イシドの真意を唯一知る剣城だけは、そっとみんなから視線を逸らしていたが。


（あの人の育てたチーム……それがこんなに素晴らしいチームなら、もしかして――）

「天馬」


聖堂山と実際に戦ってそれがイシドが指導したならと、彼の真意がわかりかけた天馬の思考を遮るように声をかけたのは――ずっと天馬の動向を見守っていた円堂だ。


「はい」

「キャプテンの力が本当に必要になるのは、ピンチのときだ」

「？」

「そのとき、お前がチームのみんなを支えることができるか――それが大事なんだ。そのことを忘れるな」

（ピンチのときに、みんなを支える……？）


天馬は円堂の言っている意味がすぐにわからなかった。しかし、これまでと同じように自身の課題として胸に留める。