「炎魔ガザード！」


なんと黒裂は化身使いであり、紅蓮の業火を宿し操るような化身が現れた。


「爆熱ストーム！」


化身が生み出した炎と共に回転しながらジャンプした黒裂は、そのパワーを一気に開放するように蹴り落とした。


「ハンターズネット！　うわあっ！」

「フェンス・オブ・ガイア！」


狩屋のハンターズネットが破られ、三国がフェンス・オブ・ガイアで懸命に止めようとするが、打ち破られてしまった。


《ゴォ――ルッ!!　聖堂山・黒裂、キャプテンの意地を見せ、化身シュートでゴールを決めた――っ!!》

「よし！」

「見事だ、黒裂！」


恋崎と砂木沼を始め聖堂山が喜ぶが、対して葵や水鳥たち雷門は落ち込んでしまう。


「やられちゃった……」

「化身シュートか……」

「聖堂山は技や体力だけじゃなく、精神力も鍛え上げられている」

「さすがは豪炎寺、というべきか……」

「それだけじゃなく、あの治がコーチでもあるからね。虎丸も加わっているし、どこまでも強いチームだよ」


円堂も鬼道有人も瑞貴も勝ち越し点が取られるのは予想通りなので動揺しない。それどころかイシドたちの指導に称賛している。


（豪炎寺、伝わってくるぜ……！　聖堂山のプレーから、お前のサッカーへの想いが！）


円堂はベンチにいるイシドを見てそう思った。調査から帰って以来、円堂には彼への疑惑と不信感が全くない、その理由は如何に……。

一方、天馬は勝ち越し点を表示された掲示板を見て目を見開くと、黒裂が話しかけてきた。


「これが、聖堂山のサッカーだ」

「！」



☆☆☆☆☆


とある部屋で、椅子に座る千宮路大悟は両隣に側近を従えて試合をモニター越しで見ている。聖堂山の勝ち越しに側近は大喜びだ。


「やはり聖堂山は、雷門より一枚上手ということですね。千宮路様」

「……よくない傾向だ」


側近に対し、千宮路は苛立つように肘掛けに人差し指でトントンと音を立てている。


「どうされました？」

「聖堂山サッカーの心髄はチームワークの統制だ。しかし今、選手は思い思いに行動し始めている……これはフィフスセクターの目指すサッカーではない」

「しかし……！」

「まあいい、しばらくは好きにさせてやろう。フッ……ドラゴンリンクを使うときが来たか」



☆☆☆☆☆


同時刻、レジスタンス本部で吉良ヒロトは緑川リュウジからの呼び出しに駆け付けた。


「ドラゴンリンクの正体がわかっただって!?」

「ああ。なんとか探り出した……」


よほど苦労してコンピュータと向かい合ったのか、緑川は目を閉じると目頭を指で押さえている。


「で、なんだったんだ？」

「信じられない……ドラゴンリンクとは――！」


緑川は突き止めたドラゴンリンクのデータを、ヒロトに見せるように表示した。