新キャプテン! 松風天馬!!
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「さあ! 今日も張り切って練習よ!」
翌日。決勝戦に向けるため春奈の号令で練習が始まった。
しかし浜野海士がトラップミスするし、錦が倉間典人に大き過ぎるパスを出してベンチにいる瀬戸水鳥に渡ってしまうし、天馬が青山俊介にアッサリとボールを取られ……とにかく不調が続いていた。
「みんな、動きが鈍いですね……」
「昨日の今日だからね……」
士気を高めるためマネージャーたちも応援の声も上げるが不調は続くばかり。春奈と瑞貴も原因がわかっているため何も言えないが、ベンチから立ち上がった鬼道が声を荒げる。
「お前たち! なんだそのプレーは!」
「「「「「!」」」」」
「それがお前たちのサッカーか! そんなサッカーで決勝に臨む気か!?」
「「「「「…………」」」」」
結局それからも練習にならず、鬼道のかけ声で今日の練習は中止になった。
――ミーティングルームでただ一人、瑞貴は別ブロックで行われた準決勝・聖堂山中対千羽山中の試合を見ていた。結果は、圧倒的な点差で聖堂山中が勝利した。
(フィフスセクターの指示で行われた試合かもしれないけど、それぞれ個人がレベルの高いプレーを持っているのは確かだな……)
このまま雷門が決勝戦に臨んでも勝ち目はない。溜息をつきたいのは山々だが、大人としてコーチとして自分自身が士気を落とすことは避けなければならない。
「さて、早く帰って夕食を作ってデータをまとめなきゃ」
ガ――ッ……。
「?」
自動ドアが開いた音に瑞貴は気づいた。鬼道はレジスタンスに行き、春奈は職員会議があり、部員たちは全員帰ったはずだ。このサッカー棟には自分一人しかいないと思っていたため不思議に思って振り返ると――。
「えっ……」
「よっ!」
そこに現れた人物に瑞貴は信じられない思いで目を見開いた。しかし屈託の笑顔で挨拶する人物は瑞貴もよく知り、十年来の相棒で夫である――円堂守なのだ。
「まも…る……?」
最後に会ったのはホーリーロード三回戦のあと、フィフスセクターの策略でゴッドエデンへ連れて行かれたときだ。
「ああ、ずいぶん遅くなって悪かった」
「っ!」
その声を聞いたのと同時に涙を浮かべた瑞貴は椅子から立ち上がって階段を駆け上がると、円堂もまた両腕を広げてくれたので迷うことなくその腕の中に飛びついた。
同時に円堂は瑞貴の背中に両腕を回して二人は強く抱きしめ合う。――今まで離れていた分を取り戻すかのように。
「おかえりなさい――守!」
「ただいま――瑞貴」
体を離したあと、最初に帰ってきたときと同じ言葉で二人は挨拶をかわした。そして円堂は瑞貴の目に浮かんでいる涙を、指で優しく拭って頬を撫でると少し眉を下げる。
「少し、痩せたな」
「そう? 最近忙しくて体重計も乗ってないからわからないな」
「瑞貴と鬼道に何もかも任せてしまって悪かった。そして――瑞貴を一人にさせてしまったことも」
「守……」
家族を失った瑞貴が、一人になることを特に嫌っていたのは知っていた。プロリーグに関しても、今回の調査に関しても、円堂は何もかも妻よりサッカーを優先してしまっている。旅立つ前に話し合っていたとはいえ、何度も負い目に感じていたし後悔も全然しなかったとはいえない。
しかし、全てを押し込みながらも笑って送り出してくれた瑞貴の想いをムダにはしたくなかった。ムダにすることを瑞貴だって望んでいないのもわかっている。
「これからは一緒に戦おう。決勝戦、俺も全力で力になる」
「うん!」
もう一度二人は抱きしめ合うと、優しくキスを交わした。
それから円堂と瑞貴はレジスタンス本部に報告へ向かった。まだ報告していないことに瑞貴は驚いたが、『一番に瑞貴に会いたかったからさ』と円堂が頬を掻きながら苦笑した。時間的に雷門中にいるだろうと確信していたため真っ先にここへ来たとか。
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翌日。昨日挨拶した鬼道を交えて円堂と瑞貴の三人がロッカールームへと向かって行く。
「みんな驚くだろうね。守が帰って来たこと」
「あいつらの試合、中継からだが全部見てたんだ。あんなに成長してくれたのは、鬼道、瑞貴、そして春奈たちのおかげだ」
「フッ。だが、ずいぶんいいタイミングで帰って来てくれた」
ロッカールームの前に着き、自動ドアが開くと天馬と西園信助と葵が振り向いて挨拶する。
「「「おはようございま……――ああっ!」」」
「「「「「ん? ――あっ!」」」」」
中断して大きな声を上げた三人に他のメンバーが不思議に思うと、次いで自分たちも同じように驚きの声を上げた。