ついに開幕! ホーリーロード!!
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――リビングのソファに並んで座り、食後のコーヒーを飲みながら円堂と瑞貴は今日のことを振り返っていた。
「わかっていたとはいえ、前途多難だな」
「ホーリーロードは『うっかり勝っちゃいました』なんて言い訳できない。だからみんなも余計に慎重なんだよ」
「……俺たちの頃は、そんなこと考えたこともなかったな。夏未は『学校の名誉を背負っている』って言ってたけど、あいつなりの応援だって自然と繋がっていた」
「うん。ガムシャラに特訓して、優勝を目指していた。三国くんが言うように将来のことなんて考えもしなかったね」
ただ勝ち進むだけでなく大会の裏にある闇と戦っていたが、『青春』という言葉がピッタリなほど輝いていただろう。今の自分たちがあるのも、あの頃のおかげだ。……しかし、今の時代が自分たちのようになるとは思えない。
「あとはあいつらが、自分の本当の心とサッカーと向き合うだけだ」
「だね」
すると円堂は瑞貴の膝に頭を乗せた。俗に言う膝枕である。瑞貴は照れつつも受け入れて円堂の髪を優しく撫でる。
「なあ、瑞貴」
「ん?」
「俺、今日の部活で最後まで『監督』の顔でいたか?」
本当のサッカーをやろうと言い出した以上、情けない姿を教え子たちに見せるわけにはいかない。初めて監督になったというのもあり、円堂はずっと不安だった。
「あんなに真っ向に否定されると寂しい部分もあるんだ。でも俺は弱音を見せちゃいけない……ずっと前を見なくちゃならないんだ。響木さんも久遠さんも、こんな感じだったのかな?」
「そうかもしれないね……。私たちが知らないだけで不安があったのかも」
大人と子供…監督と教え子…様々な見方があるが、選手として引っ張るのと監督として引っ張るのもだいぶ違う。円堂はこの二日で実感した。
「でも、守は守のやり方でみんなを引っ張ればいいんだよ。私は雷門中サッカー部全員が本気で戦ってくれるって信じてる」
「瑞貴……」
「間違えそうになったら私が引き戻してあげる。今も昔もずっと変わらずにね」
ニコッと笑う瑞貴を見て円堂は心がけ癒されて微笑む。そして瑞貴の後頭部に手を当てて、瑞貴の唇を自分の唇に合わせるように引き寄せた。
チュッ。
「っ、もう……」
「ハハッ、やっぱりお前が俺の相棒で――俺の嫁さんでよかった」
頬を赤らめる瑞貴を見て円堂はニカッと笑うと起き上がり、瑞貴の横に座り直すと肩を引き寄せてギュッと強く抱きしめた。
「ちょっと痛いんだけど……」
「充電さ。これからが本番だからな。サッカー部の奴らに本気のサッカーをやってくれれば、きっと相手の学校や周りだって勝敗指示が意味のないモノだって気づいてくれるはずだ」
勝敗指示を無視する試合――すなわち本気で戦える試合だということだ。それができれば最高の試合になって観客席だってサッカーは熱くいいモノだって伝わるだろう。
「俺たちだって大忙しなのは間違いない。家に帰っても試合に備えないといけないし、こうやってイチャつける時間もあまりないだろうしな」
「全く、いつの間にこんな甘えん坊になったのやら。子供か」
「瑞貴の前なら俺は子供になってもいい!」
「イバるな」
ビシッ!
「イテッ!」
なんとか腕を伸ばして瑞貴は円堂の脳天にチョップをくらわせた。
こんなやりとりをしても実は瑞貴だって満更じゃない。ただ円堂が積極的な分、どうやって接すればいいのかと十年経っても戸惑っているので照れ隠しが多いのだ。