硝子細工の天才
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
☆☆☆☆☆
稲妻総合病院にある病室で、雨宮太陽はベッドに座って両手に持つサッカーボールを、何かを思うように見つめていた。するとノックもナシに扉が開くと、現れた人物に顔を綻ばす。
「あっ! イシドさん!」
なんとフィフスセクターの聖帝・イシドシュウジだった。雨宮は彼に対してなんの警戒心も抱かないし、イシドもまた優しく微笑んで雨宮のそばに行く。
「元気そうだな」
「はい! もちろんです!」
「検査の結果は良好だ。退院の許可が出た」
「やった! じゃあ今度の試合、出場できるんですね!」
「……そのことで担当医と話した。残念だが、次の試合は見送ろう」
「そんな……!」
イシドから聞いた結果に、雨宮は最初の笑顔が一気に曇って顔をうつむけた。
「治療に専念するんだ。病気は必ずよくなる」
「病気とは長い付き合いだし、僕、絶対にムリしませんから――!」
「今回はあきらめろ」
「……嫌です」
「!」
「サッカーだけなんです! 僕が夢中になれること……辛くても不安でも、グラウンドにいる間は全部忘れられる。サッカーが僕の命を繋いで来たんです!」
「…………」
「試合に出られないなら僕、死んだと同じです……!」
必死に訴えたがイシドから許可が出ない。だけど雨宮はあきらめることができず、サッカーがない自分を想像することができなかった。
イシドは病室を出てゆっくり扉を閉めると、そばにいた人物に驚く。
「虎丸……」
なんとかつてのイナズマジャパンのメンバーであり、当時は小学生ながらも凄まじいシュートを繰り出したストライカー・宇都宮虎丸だった。彼もフィフスセクターに所属しておりイシドの側近でもある。
二人は階下に向かうためにエレベーター前に移動する。それだけでなく雨宮に聞かせないためかもしれない。
「まさか雨宮を試合に出すつもりではないでしょうね?」
「…………」
「雨宮の才能は本物です。そしてサッカーに対する気持ちも。しかし今、彼の体が試合に耐えられるとは思えない。かわいそうですが、やはりホーリーロードは彼にはムリです」
「……雨宮を見てると思い出すんだ。あいつのことを」
イシドは昔を思い出した。十年前にかつての仲間であり、世界大会では相手チームとして出場したフィールドの魔術師・一之瀬一哉のことを。
彼は事故の後遺症で試合に出ないようにと言われていた。しかしサッカーが大好きで、イナズマジャパンと本気で戦いたくて、ムリしても――いや、体がボロボロになってでも構わないという思いで試合に出た。しかし結果、監督の指示で途中でフィールドを去ることになった。
「あいつと同じだ。サッカーへの気持ち、そして思うようにサッカーができないことへの苛立ち……」
「…………!」
イシドが名前を出すことはなくても、虎丸自身も一之瀬の気迫を目の当たりにしたからそれが伝わっていた。
☆☆☆☆☆
信助は一人で練習を続けている。しかし何度やっても勢いのあるシュートに弾き出されてしまったり、手を伸ばそうにも届かなくて取れないでいた。
「やっぱり、僕にはムリなのかな……? よーし、あと一回だけ」
これが最後と発射されたシュートは、コーナーの角へギリギリに向かって行く。それを追って信助は走り出すと――。
「――ふっ!」
「えっ!?」
なんと自分よりあとから来たにも関わらず、素手でガッチリキャッチした男性が現れた。
「君が雷門のGKかい?」
「あなたは……?」
彼は立向居勇気――イナズマジャパンの二人目のGKで、円堂守に憧れてMFからGKに転向した過去を持つ。