「今日はお前、まだボールを蹴ってないだろ。河川敷に行かないか？」

「…………」

「俺はお前とサッカーをやりたい。革命とかそういうの関係ナシでただ一緒にボールを蹴りたいだけだ」

「…………」

「そうか。その気になったら来てくれ」


神童は天馬のボールを持ったまま部屋から出て行った。――天馬が立ち直って必ず来ると信じて。

残った天馬は三角座りをしたまま考え込んでいると、思い出のボールでサスケが遊んでいることに気づいた。その際に自分の元に転がり、表面の稲妻マークが見える。


〈ワフッ〉

「…………！」


そのとき天馬にはサスケが十年前の子犬の姿に見えた。あの事件がなければサスケと出会うこともなかったし、暮らすこともなかっただろう。天馬は優しくサスケの頭を撫でると、サスケは嬉しそうにその手を舐めていく。


「ハハッ、アハハッ。やめろって、サスケ」

〈ワフッ、ワンッ〉


再びボールを鼻先でいじるサスケ。天馬はその背中を撫でながら、何か吹っ切れたように窓の外の夕陽を見た。



――河川敷で神童はユニフォームに着替え、一人でボールを蹴っている。そしてシュートを撃つと……。


タッタッタッタッ――……！


「！」


耳に覚えのある足音が聞こえ、振り向くと階段の上で自分と同じようにユニフォームに着替えた天馬がいた。その表情にもう迷いはない。


「キャプテン！」

「やっぱり来たな」

「俺、サッカーをやりたいです！　雷門のみんなと！　もう迷いません！　思いっきり楽しみたい……俺、サッカーが大好きですから！」

「よし！」


ゴール前までドリブルした神童は、うしろにいる天馬にパスを送る。それをトラップした天馬は神童がいるゴールに向かってドリブルして行く。


「準決勝、勝ちましょう！」

「ああ。ホーリーロードを勝ち抜いて、聖帝の言う答えを見ようじゃないか！」

「はい！」


頷いた神童にそう返した天馬は、思いっきりシュートを撃った。そのシュートは真っ直ぐでサッカーへの思いが溢れている。


（あの人に、見せるんだ！　楽しくサッカーをやるって、こういうことだって！）


その様子を先ほどまで天馬がいた階段の上で、偶然通りがかった瑞貴もまた微笑んでいた。


「私たちは私たちで戦う……だから、そっちもがんばってね」


瑞貴は誰かに伝えるように呟いて空を見上げると、一陣の風が吹いた――。










☆コーチの　今日の格言☆



進化するためには何かが変化する必要もある。それを受け入れ、自分から変わることも強さの一つ。



以上!!