センターサークルの中央に立って瑞貴と天馬、イシドと三人で向かい合う。イシドは本来天馬に会いに来たのだが、予想外の瑞貴がいても何も言わず同席することを許してくれた。……ただ、自分と天馬の会話に口を挟まないことを条件に。


「活躍しているな。松風天馬くん」

「何故俺に……？」

「君は雷門中を変えた。そして今、ホーリーロードを通じて少年サッカー界を変えようとしている」

「変えるなんて……俺はただ、大好きなサッカーを思いっきりやりたかっただけです。――あなたなんですよね、サッカーをこんなにしたのは。何故ですか？」


天馬の問いにイシドは答えずに黙ったままだ。だから天馬は先ず自分の考えをイシドに述べる。


「サッカーは、もっと楽しくやれるはずです。勝敗を管理しなくても、サッカーは――」

「君は心からそう思えるのかな」

「どうして、そんなことを訊くんですか？」

「君はどう思う？　フィフスセクターに反旗を翻した学校が廃校になったことを」

「許せません」


イシドは問いを問いで返してきたが、対して天馬は迷いなくそう答えた。


「そうだな、許せない。だがその事態を招いたのは、紛れもなく君だ」

「っ！」

「君のサッカーへの思いが、サッカーを楽しくやろうとしている少年たちからサッカーを奪っている」

「…………！」

「そして君も気づいた……『本当はサッカーは管理されるべきだ』と」

「…………」

（天馬……）


今度の問いに天馬はすぐ答えられず、ボールを持っている体が震えていた。その様子を見ている瑞貴は約束通り見守るだけである。

確かにフィフスセクターが誕生するまでは、サッカーのせいで評判が落ちたり廃校になるなど社会的地位が決まっていた。それがなくなったのはフィフスセクターのおかげでもあるのは事実である。だからこそ、神童たちだって最初は学校のために我慢していた。


「違う！　サッカーは！」

「キャー！」

｢｢｢！｣｣｣


悲鳴が聞こえて三人が顔を上げると、土手の上で自転車にまたがりながら女性からバッグを無理矢理奪おうとしている男がいる。ひったくりだと気づいた天馬はボールを放って瑞貴と共にすぐ駆け出した。


「やめろ！」

「離せ！」

「なんだてめぇら！」


バッグを押さえていた女性に天馬と瑞貴が加わったので、男はバッグを奪えなかった。しかし反動で天馬はバッグを持ったまま尻餅をついてしまい、瑞貴は同じく倒れそうになる女性を支える。


「この野郎！」

「あっ！」

「天馬！」


邪魔をされたので天馬に殴りかかろうとする男。女性を座らせた瑞貴は間に入って天馬をかばおうとすると――。