ＤＦ陣と三国による見事な連携プレーが、幻影学園の追加点を阻止した。化身を仕舞った真帆路は悔しがることなく、まるで忌々しげに天城を見据える。


「っ、いつまでそれが続くかな？」

「本気、なんだド？」

「言ったはずだ。雷門の反逆は終わらせると」

（お前にはもうないんだド？　俺たちがサッカーを始めた、あの頃の気持ちが！）

（真帆路くん……天城くんの思いをわかって！）


天城は昔みたいに楽しくサッカーをやるために革命に臨んでいる。しかし真帆路はフィフスセクターのサッカーこそが正しいと訴えている。二人を見守る幸恵は、この試合が真帆路の苦しみを開放し、また三人で笑い合えることを願っていた。

すると浜野が膝を押さえたまま座りこんでいたのを発見する。天馬と神童は急いで駆け寄ってきた。


「浜野先輩！　大丈夫ですか!?」

「ちゅーかさ、膝に力が入んなくて……」

「…………」


これ以上プレー続行は不可能だと判断した神童は、ベンチにいる鬼道に顔を向ける。鬼道も神童と同じ考えだったようで、頷き返した。


「青山、準備はできてるな？」

「っ！　はい！」

「よし、行け！」

「はい！」


鬼道から交代選手の指名が入ったのは――青山俊介だ。ついに公式戦に出場ができたので立ち上がって背筋を伸ばす青山に続き、一乃七助も立ち上がると、まるで自分のことのように嬉しそうに彼の両肩に手を置く。


「やったな、青山！　初出場だぞ！」

「ああ！　一軍のホーリーロードの試合だ！」

「がんばれ！　目一杯プレーして来いよ！」


今までセカンドチームだった上に神童たちとプレーしたのは秋空チャレンジャーズ以来だ。しかしそれとは規模も重大さも異なっているので、プレッシャーよりワクワクするという高揚感に溢れている。


（僕、バンパーのタイムラグを見破る自信があるんだけど……）

「輝くんも準備できてる？」

「えっ？」


ピッチのバンパーを見ていた輝は突然瑞貴に話しかけられた。顔を向けると、瑞貴だけでなく鬼道たちも自分を見ていることに気づく。


「影山」

「はい！」

「お前のキック力で、流れを引き寄せろ」

「練習の成果を幻影学園だけでなく、私たちにも見せてね」

「はい！」


鬼道と瑞貴からも期待を寄せられるも、輝は立ち上がって元気よく返事をした。二人は浜野と倉間典人と交代することになる。

浜野は立ち上がるのもムリなため、倉間と瀬戸水鳥に肩を貸してもらってピッチを出ることになった。しかし顔色の悪さからかなりダメージがあると見受けられる。


「大丈夫か、浜野？」

「平気平気。ちょっと走れないだけだから……」

「それって平気じゃねぇだろ！」

「イイッ!?　痛い痛い！　ギブッ！　ギブッ！」


水鳥に思いっきり手首をつかまれたので、浜野は膝だけでなく手首にもダメージをくらった。


「頼んだぜ！　青山、影山」

｢｢うん/はい！｣｣


倉間からあとを託され、青山と輝はハッキリと返事をした。

そして輝が倉間のポジションに、青山が浜野のポジションに入ることになった。神童は念のため青山に自身で体感したピンボールスタジアムの特徴を話す。


「バンパー、ポールとの距離を意識して、ボールの跳ね返りに対応できるようにな」

「そして、裏のスペースに注意だな」

「ああ。サイドは任せたぞ」

「オウッ！」


青山だって黙ってベンチで観戦していたわけじゃない。ベンチからしか見えない光景でしっかり観察していたのだ。

メンバーチェンジした雷門中に、幻影学園の真帆路が攻め込んで行く。その前に神童が立ち塞がったので、真帆路はパスを出した。


ポッ……シュバンッ！


ボールに反応したため、ポールが飛び出して小鳩に渡ろうとすると――。