キャプテンの資格
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「神童くん、どうしたの?」
「あのときは、ヒドいことを言ってすみませんでした」
「えっ?」
神童は瑞貴に頭を下げて謝った。いきなりのことで瑞貴は驚いたが、ミーティングルームの前であったことに気づいた。
「それに関してはもういいよ。むしろ、私が神童くんに何か……――もうしているね。本当のサッカーをやろうって言ってたし」
「いえ、それは違います! 俺はあなたに――フィフスセクターに従う俺を見てほしくなかったんです」
「えっ……どういうこと?」
「十年前、俺はあなたに会ったことがあるんです。あなたは覚えていないでしょうが、俺のボールを使ってひったくり犯に向かってシュートを撃った姿……忘れられません」
「十年前…ひったくり犯……――ああっ! あのときボールを貸してくれた子!?」
「はい。それが俺です」
初めて異世界人ということを他者に明かした日でもあったので、そこから連想して瑞貴は思い出した。
「でもあのとき、もう一人いたような……」
「それは霧野です。霧野ももちろん、あなたのことを覚えていましたよ」
「へぇ、二人共よく覚えていたね。もう十年前のことなのに」
「それほど、俺たちに……俺にとっては衝撃的な出来事でした」
神童と霧野のサッカーの原点で、憧れ続けた人物だからこそ瑞貴を前にサッカーするのが怖かった。
「十年前にあなたのシュートを見て、あなたみたいになりたいと思って練習してきました。でも、俺が今までやってきたことは、あなたに憧れた今までの俺を裏切ってきた。だから……無様なサッカーをする姿をあなたに見せたくなかったんです……」
「見ようと思っても、もう見れないよ」
「えっ?」
「私はもう、本気のサッカーをする『拓人くん』しか見れないから」
「!」
ニコッと笑う瑞貴を見て神童は目を見開いた。名前の呼び方が変わったこと、十年前と変わらない笑顔を今も見せてくれること――神童はそれが嬉しくてたまらなかった。
「明日からまた、よろしくお願いします。――瑞貴さん」
「うん。こちらこそよろしくね」
再び礼をした神童は、瑞貴に背を向けて去って行った。それを見届けた瑞貴もまた円堂と合流するべく走って行くと、少し離れた場所で円堂が立っている。どうやら待っててくれたようだ。
「お待たせ」
「いや、それはいいんだが……神童と何を話してたんだ?」
「ん? 思い出話とこれからを楽しみにしてるって話をね。そうそう、今日の夕飯は唐揚げだよ」
「おっ、いいな! 俺たちも天馬たちの力になれるように体力付けないとな!」
「うん。早く帰ろう!」
円堂が差し出した手を瑞貴は握り締め、二人は自宅へと向かった。
☆☆☆☆☆
翌日――神童は朝練に参加するため朝早く学校へと向かった。生徒たちが通常登校するより早めなので人がいないと思ったが、木の陰に剣城が待ち伏せていた。
「辞めたんじゃなかったんだ。今から朝練? ご苦労なこった」
「お前も出ろ。部員なんだぞ」
鋭い目で言う神童だが、剣城はそれに構わず神童の背後に回って小声で言う。
「フィフスセクターからの指示だ。ホーリーロード地区予選一回戦――雷門は2対0で負けだ」
「っ!」
そう言って剣城は神童の肩をポンッと叩くと去って行った。神童の脳裏には円堂と瑞貴の言葉が浮かぶ。
『負けてもいい試合なんて絶対にないぞ!』
『私はもう、本気のサッカーをする「拓人くん」しか見れないから』
「キャプテーン!」
「!」
聞こえた声に神童は我に返ると、声の主である天馬がやって来た。
「おはようございます、キャプテン!」
「ああ……」
「早くみんなに見せたいですよ! そよかぜステップ!」
意気揚々とサッカー棟に向かう天馬のうしろ姿を、神童はあまりいい表情をせず見つめるだけだった。
☆コーチの 今日の格言☆
プレーは心の表れ、心が乱れればプレーも乱れる。
以上!!
「あのときは、ヒドいことを言ってすみませんでした」
「えっ?」
神童は瑞貴に頭を下げて謝った。いきなりのことで瑞貴は驚いたが、ミーティングルームの前であったことに気づいた。
「それに関してはもういいよ。むしろ、私が神童くんに何か……――もうしているね。本当のサッカーをやろうって言ってたし」
「いえ、それは違います! 俺はあなたに――フィフスセクターに従う俺を見てほしくなかったんです」
「えっ……どういうこと?」
「十年前、俺はあなたに会ったことがあるんです。あなたは覚えていないでしょうが、俺のボールを使ってひったくり犯に向かってシュートを撃った姿……忘れられません」
「十年前…ひったくり犯……――ああっ! あのときボールを貸してくれた子!?」
「はい。それが俺です」
初めて異世界人ということを他者に明かした日でもあったので、そこから連想して瑞貴は思い出した。
「でもあのとき、もう一人いたような……」
「それは霧野です。霧野ももちろん、あなたのことを覚えていましたよ」
「へぇ、二人共よく覚えていたね。もう十年前のことなのに」
「それほど、俺たちに……俺にとっては衝撃的な出来事でした」
神童と霧野のサッカーの原点で、憧れ続けた人物だからこそ瑞貴を前にサッカーするのが怖かった。
「十年前にあなたのシュートを見て、あなたみたいになりたいと思って練習してきました。でも、俺が今までやってきたことは、あなたに憧れた今までの俺を裏切ってきた。だから……無様なサッカーをする姿をあなたに見せたくなかったんです……」
「見ようと思っても、もう見れないよ」
「えっ?」
「私はもう、本気のサッカーをする『拓人くん』しか見れないから」
「!」
ニコッと笑う瑞貴を見て神童は目を見開いた。名前の呼び方が変わったこと、十年前と変わらない笑顔を今も見せてくれること――神童はそれが嬉しくてたまらなかった。
「明日からまた、よろしくお願いします。――瑞貴さん」
「うん。こちらこそよろしくね」
再び礼をした神童は、瑞貴に背を向けて去って行った。それを見届けた瑞貴もまた円堂と合流するべく走って行くと、少し離れた場所で円堂が立っている。どうやら待っててくれたようだ。
「お待たせ」
「いや、それはいいんだが……神童と何を話してたんだ?」
「ん? 思い出話とこれからを楽しみにしてるって話をね。そうそう、今日の夕飯は唐揚げだよ」
「おっ、いいな! 俺たちも天馬たちの力になれるように体力付けないとな!」
「うん。早く帰ろう!」
円堂が差し出した手を瑞貴は握り締め、二人は自宅へと向かった。
☆☆☆☆☆
翌日――神童は朝練に参加するため朝早く学校へと向かった。生徒たちが通常登校するより早めなので人がいないと思ったが、木の陰に剣城が待ち伏せていた。
「辞めたんじゃなかったんだ。今から朝練? ご苦労なこった」
「お前も出ろ。部員なんだぞ」
鋭い目で言う神童だが、剣城はそれに構わず神童の背後に回って小声で言う。
「フィフスセクターからの指示だ。ホーリーロード地区予選一回戦――雷門は2対0で負けだ」
「っ!」
そう言って剣城は神童の肩をポンッと叩くと去って行った。神童の脳裏には円堂と瑞貴の言葉が浮かぶ。
『負けてもいい試合なんて絶対にないぞ!』
『私はもう、本気のサッカーをする「拓人くん」しか見れないから』
「キャプテーン!」
「!」
聞こえた声に神童は我に返ると、声の主である天馬がやって来た。
「おはようございます、キャプテン!」
「ああ……」
「早くみんなに見せたいですよ! そよかぜステップ!」
意気揚々とサッカー棟に向かう天馬のうしろ姿を、神童はあまりいい表情をせず見つめるだけだった。
☆コーチの 今日の格言☆
プレーは心の表れ、心が乱れればプレーも乱れる。
以上!!