「そんなに強い学校なんだ……」

「でも、今年は案外楽勝かもしれないぜ」

「えっ？」

｢｢｢｢｢？｣｣｣｣｣


本気で勝負して雷門を負かしたチームに輝だけじゃなく狩屋も冷や汗をかくと、青山俊介の突然の言葉にみんな彼に注目した。青山と一乃七助と顔を見合わせて告げる。


「ちょっと調べてみたんですけど……」


一乃と青山の調査では――木戸川清修は雷門の革命に賛同派と、フィフスセクター派で分かれている。故に仲間割れは自然と起こり、神童と同じようにキャプテンとなった貴志部も手を焼いているようだ。


「まっ。いずれにしろ、これで次の試合は楽勝だド！」

「いくら木戸川でも、それじゃ勝てっこないからね～」

「……そううまくいきますかね」

「どういうことだ？」


天城と浜野とは違う考えを述べる剣城京介に三国たちは理由を問うと、鬼道と瑞貴が顔を見合わせて一歩前に出た。


「みんなも知ってる通り、木戸川清修はフィフスセクターの力が特に強く働いている学校だ」

「その木戸川清修に私たちが勝つようなことがあれば……――革命が一気に勢いづくってことになる」

｢｢｢｢｢！｣｣｣｣｣


それは雷門にとって好機であり同時に危険でもある。事態に気づいた霧野も厳しい顔になった。


「フィフスセクターが、このまま放っておくわけはないということですね……」

「うん。きっと何かしらの手を打って来ると思うよ。次のスタジアムの特徴を教えるだけじゃなく、新たな戦力を入れるということも……」


今までの試合は、相手チームにフィフスセクターの手が掛かっていたのを思い出した瑞貴は顔をしかめた。



☆☆☆☆☆


夕方に部活が終わった貴志部は、顔をうつむきながら今日の部活のことを思い浮かべた。革命に賛同派の滝快彦が、フィフスセクター派の兄・滝総介とケンカに陥るくらいになったのだ。


『言われた通りやってれば、俺たちはプロリーグのユースに行ける』

（総介だって、あんなことを言っているが、サッカーを愛する気持ちは同じ……！）


いつも一番に来て道具を念入りに手入れしている姿を見たことがある。サッカーが心から好きだからこそ、大変な作業も自然と笑みを浮かべてしまうことだ。

しかしそのことを快彦に言っても、総介がフィフスセクターに従う気持ちは事実だから信じられないだろう。


（どうすればいいんだ……！）

「木戸川清修って、こっちかな？」

「！」


尋ねてきた声に貴志部は顔を上げる。目の前にはうなじに髪を結んで横に垂れ流すと毛先にはメッシュがあり、スーツの袖を少しまくっており、不思議な雰囲気を持つ見たことのない男性がいた。



☆☆☆☆☆


翌日も練習に取り組む中、神童は木戸川清修中の貴志部を心配していた。


（貴志部……）

「神童！」

「！」


霧野の声で我に返った神童。とっさに足を出してパスを受け取って霧野に顔を向ける。


「練習に集中しろ！　俺たちには、やるべきことがあるはずだ！」

「っ！」

「行かせるか！」


そう、今の自分たちは革命という使命を背負っているのだ。再度練習に集中してドリブルする神童の前に車田が迎え撃つ。


「よし！」

「ふっ！」


ボールに足が触れたと思ったが、神童は素早く振りきった。