円堂守がフィフスセクターの調査のため、雷門中サッカー部の監督を辞任した。引き続きコーチを続ける円堂瑞貴は、後任として監督になった鬼道有人と共に新たな練習メニューを作り、雷門中サッカー部に不安を抱かれたが、雷門に足りない基礎体力の向上という狙いを伝えた。

次はいよいよホーリーロード全国大会三回戦。それに向けて雷門中サッカー部は練習に取り組んでいる。


「浜野！」

「あらよっと」


ゴールからボールを一度投げて高く蹴った三国太一。それを受け取った浜野海士に、影山輝が駆け寄ってきた。


「今だ！」

「ほいっ」

「ああっ！」

「残念でした～」


浜野はボールを取ったままターンで輝をかわした。狙い通り行かなかった輝に天城大地が喝を入れる。


「影山、もっと相手の動きを考えるド！　相手だってボーッと突っ立って、ボール取られるの待ってるわけじゃないド！」

「はい！」

「来たな～。――甘いんだよね！」


さっそくアドバイスを実践しようと追ってきた輝。もちろん浜野だって想定内だった。


「ふっ」

「こっちだ！」


もう一度かわそうとした浜野だが、足を踏み出した輝は浜野から見事にボールを奪い取った。見事に成功できた輝は嬉しそうに天城を見るが、対して天城はまさか一回で成功すると思わなかったのか驚いている。


「天城先輩！」

「や、やればできるド……」

「――影山！」

「あっ」


敵陣へ上がる倉間典人に輝はパスを回すと、そこへ車田剛一がスライディングをして迫って来る。


「行かせるか！」

「うおっ！」

「なっ!?」

「速水！」


倉間はボールごとジャンプして車田をかわし、さらに速水鶴正へパスを回した。

今までと違って動きが格段に上がり、ベンチで瀬戸水鳥や空野葵たちは感心するように見ている。


「みんないい動きしてるじゃねぇか」

「鬼道監督と瑞貴さんが考えた、基礎体力アップメニューが効いたんですね！」

「まあ、大半は有人のおかげなんだけどね。――ん？」


二人の会話を聞いて苦笑した瑞貴は記録をつけて鬼道を見上げると、サングラス越しの彼の視線が一定だったのを感じ、それを追うとセンターサークルで車田が立ち上がれずに肩で息をしているのを発見した。

またピッチの外側では、松風天馬と西園信助と狩屋マサキが別メニューで練習をしている。


「今度こそ！」

「オウッ！」


少し距離を取って向かい合う天馬と信助は意気込むと、同時に相手側に向かって走り出した。

狩屋がボールを上げ、信助はそのままジャンプしてバック宙をすると、天馬もジャンプして両足を突き上げる。そして二人の両足が空中で合わさった。


「どっかーん……」

「ジャーンプ！」


グラッ……。


｢｢えっ!?｣｣

「あっ……」


しかしバランスを崩してしまい、二人共それぞれ頭から落ちてしまった。それを眺めていた狩屋は顔を引きつらせている。

これまで何度もチャレンジしているのは、傍に転がっているボールの数が示している。それでも尚、成功どころか一歩も前進していないので葵たちも苦笑いする一方だ。


「こっちは、まだまだみたいね……」

「だいたい名前が悪いんだろ。『どっかーんジャンプ』なんて誰が付けたんだ？」

｢｢｢アハハ……｣｣｣

「ヘックシュン！　ん～……風邪かな？」


水鳥が言う必殺技の名前に葵と山菜茜と音無春奈は静かに笑うと、名前を付けた張本人である刈谷はクシャミをして鼻の下を擦った。