監督・鬼道の不安
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――苦手なメニューは特に増えていたので、苦痛に思うこともあったが、何より『絶対にやり遂げてみせる!』という心が強かった。夕方には天馬や霧野を始め何人もがメニューをクリアする。
「終わった~! 全メニュー達成!」
「俺たちもだ……」
「ラストだド!」
最後のハードルを飛び越えた途端、天城は地面に倒れてしまったが表情は達成感に満ち溢れていた。
「終わったド……!」
「あとは……」
三国が見る先にいるのは信助だ。タイヤを固定してある長いゴムを体にくくりつけ、数メートル先にあるコーンに手を届かせる練習だ。これが最後の一回である。
「っ、く……うわあっ!」
他のメニューの疲れも溜まっているので、信助は足を取られてゴムによって引き戻されて倒れてしまった。しかし負けずに立ち上がる。
「負けるもんか! うおおぉぉおおお! 僕はサッカーが好きだ!」
「がんばれ、信助!」
「みんなと……くっ……――あっ!」
一生懸命手を伸ばした結果、信助は見事にコーンをつかむことができた。これで全員やり遂げたのだ。
ゴムを外して駆け寄ってきた信助を含め、練習前に聞いた答えを求めて全員が鬼道を見る。しかし鬼道も瑞貴も何も言わない。
「「…………」」
「きっと悔しさで声も出ないんだド」
「そうでしょうか?」
「!」
天城はいい気味だと思ったが天馬は違うように見えている。剣城はふと足元にある自分と他の人のプリントを拾い、内容を見ると納得した。
「そういうことか……」
「剣城?」
「新しい練習メニュー……俺たちがやり遂げられる限界ギリギリの量です」
「「「「「!」」」」」
「そうか、そんなメニューを作れるということは……!」
「鬼道監督は、全員の能力を把握している。一見ムチャを言っているようだが、それぞれの最大の力を引き出そうとしている」
それは即ち、あきらめずにがんばれば『確実に』達成できるように作られたメニューだということに神童たちは気づく。そして、その苦労も。
「なんて人だ……! あの厳しい練習は、全員の限界を調べ、個別の練習メニューを作り上げるためだったのか!」
「えっ!?」
「そうだったんですか!?」
「ええ。瑞貴先輩も、それに一枚噛んでいたってわけよ」
神童の出した結論に信助も葵も驚いた。春奈は先日見たデータはこのためなのだと気づいていたので、三日目に何も言わなかったのはそのためだ。
「雷門の強さは、それぞれ必殺技や得意なプレーだ。そして弱さは基礎体力」
「基礎体力?」
「筋力、瞬発力、持久力など、全てにおいて基礎となる体力のことだ。必殺技や得意なプレーに頼り過ぎるのはよくない。通用しない場合があるからな。そのときに役に立つものこそ――基礎体力」
『……俺さ、みんなのいいとこしか見えないんだよな。ハハハッ』
『ってことでやっぱり、監督は鬼道――お前しかいない』
(円堂、お前も気づいていたんだな……雷門がどうすれば強くできるか。そして瑞貴も……)
天馬の疑問に答えた鬼道は、円堂のことを思い出しながらチラリと瑞貴を見ると、彼女は苦笑していた。
(やっぱり、有人にはお見通しか……)
瑞貴が監督の申し出を断ったのはサポートするのが性に合っているのもあるが、日々の行動が選手たちに近い位置にいるからだ。
励ましたり叱咤するのは悪いことではないが、それは情が出て練習メニューを作るとき支障ができることもある。鬼道が雷門に来た頃から練習メニューを見て何度か訂正の指示を出していたこともあった。
だから今回のメニューも鬼道がメインとして作り、瑞貴はサポートする形となっていたのだ。そのために鬼道は瑞貴に選手たちが真意に気づくまでは『事務的な言葉しか話しかけてはいけない』、そう指示を出していた。選手たちから頼られないようにするために。
「じゃあ、僕だけ厳しく感じたのも……」
「西園は自分で限界を決めてしまう所がある。気づいたか」
「はい!」
もし練習中にがんばりを認められたら、『これが自分の限界だ』と思ってしまっただろう。鬼道は最初から自分を認めていたのだとわかり、信助はしっかり声を上げた。
「ありがとうございました、監督。改めて、よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
神童に引き続き、全員が鬼道に頭を下げた。感謝とこれからもよろしくという意味を込めて。――鬼道が監督となり、雷門中サッカー部はまた新たに進化していくのだった。
☆コーチの 今日の格言☆
誰にだって教え子を成長へ導くやり方はいろいろある。
以上!!
「終わった~! 全メニュー達成!」
「俺たちもだ……」
「ラストだド!」
最後のハードルを飛び越えた途端、天城は地面に倒れてしまったが表情は達成感に満ち溢れていた。
「終わったド……!」
「あとは……」
三国が見る先にいるのは信助だ。タイヤを固定してある長いゴムを体にくくりつけ、数メートル先にあるコーンに手を届かせる練習だ。これが最後の一回である。
「っ、く……うわあっ!」
他のメニューの疲れも溜まっているので、信助は足を取られてゴムによって引き戻されて倒れてしまった。しかし負けずに立ち上がる。
「負けるもんか! うおおぉぉおおお! 僕はサッカーが好きだ!」
「がんばれ、信助!」
「みんなと……くっ……――あっ!」
一生懸命手を伸ばした結果、信助は見事にコーンをつかむことができた。これで全員やり遂げたのだ。
ゴムを外して駆け寄ってきた信助を含め、練習前に聞いた答えを求めて全員が鬼道を見る。しかし鬼道も瑞貴も何も言わない。
「「…………」」
「きっと悔しさで声も出ないんだド」
「そうでしょうか?」
「!」
天城はいい気味だと思ったが天馬は違うように見えている。剣城はふと足元にある自分と他の人のプリントを拾い、内容を見ると納得した。
「そういうことか……」
「剣城?」
「新しい練習メニュー……俺たちがやり遂げられる限界ギリギリの量です」
「「「「「!」」」」」
「そうか、そんなメニューを作れるということは……!」
「鬼道監督は、全員の能力を把握している。一見ムチャを言っているようだが、それぞれの最大の力を引き出そうとしている」
それは即ち、あきらめずにがんばれば『確実に』達成できるように作られたメニューだということに神童たちは気づく。そして、その苦労も。
「なんて人だ……! あの厳しい練習は、全員の限界を調べ、個別の練習メニューを作り上げるためだったのか!」
「えっ!?」
「そうだったんですか!?」
「ええ。瑞貴先輩も、それに一枚噛んでいたってわけよ」
神童の出した結論に信助も葵も驚いた。春奈は先日見たデータはこのためなのだと気づいていたので、三日目に何も言わなかったのはそのためだ。
「雷門の強さは、それぞれ必殺技や得意なプレーだ。そして弱さは基礎体力」
「基礎体力?」
「筋力、瞬発力、持久力など、全てにおいて基礎となる体力のことだ。必殺技や得意なプレーに頼り過ぎるのはよくない。通用しない場合があるからな。そのときに役に立つものこそ――基礎体力」
『……俺さ、みんなのいいとこしか見えないんだよな。ハハハッ』
『ってことでやっぱり、監督は鬼道――お前しかいない』
(円堂、お前も気づいていたんだな……雷門がどうすれば強くできるか。そして瑞貴も……)
天馬の疑問に答えた鬼道は、円堂のことを思い出しながらチラリと瑞貴を見ると、彼女は苦笑していた。
(やっぱり、有人にはお見通しか……)
瑞貴が監督の申し出を断ったのはサポートするのが性に合っているのもあるが、日々の行動が選手たちに近い位置にいるからだ。
励ましたり叱咤するのは悪いことではないが、それは情が出て練習メニューを作るとき支障ができることもある。鬼道が雷門に来た頃から練習メニューを見て何度か訂正の指示を出していたこともあった。
だから今回のメニューも鬼道がメインとして作り、瑞貴はサポートする形となっていたのだ。そのために鬼道は瑞貴に選手たちが真意に気づくまでは『事務的な言葉しか話しかけてはいけない』、そう指示を出していた。選手たちから頼られないようにするために。
「じゃあ、僕だけ厳しく感じたのも……」
「西園は自分で限界を決めてしまう所がある。気づいたか」
「はい!」
もし練習中にがんばりを認められたら、『これが自分の限界だ』と思ってしまっただろう。鬼道は最初から自分を認めていたのだとわかり、信助はしっかり声を上げた。
「ありがとうございました、監督。改めて、よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
神童に引き続き、全員が鬼道に頭を下げた。感謝とこれからもよろしくという意味を込めて。――鬼道が監督となり、雷門中サッカー部はまた新たに進化していくのだった。
☆コーチの 今日の格言☆
誰にだって教え子を成長へ導くやり方はいろいろある。
以上!!