監督・鬼道の不安
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――天城と輝と別れた信助は、帰宅するために顔をうつむけながら歩いて行っていた。
「信助、まだ帰ってなかったね」
「!」
分かれ道の角から聞こえた声は葵のものだ。姿が見えると隣には天馬も一緒にいるので、信助は思わず電柱の陰に身を潜める。
「このまま練習に出てこないのかな?」
「信助はきっと戻って来るよ」
「!」
迷いもなく断言した天馬に信助は驚いた。それは葵も同じなので理由を訊く。
「なら、どうしてうちにまで?」
「伝えたかったんだ、俺の気持ち。――俺、信助とサッカーがしたいって!」
「…………!」
天馬の言葉を聞いて、信助は目を見開いていた。……あんなに拒絶して勝手に裏切られた気持ちになったのに、天馬は自分のことを信じているのだと。
――そして雷門中のサッカー棟にある監督の部屋では、また鬼道と瑞貴が大量のデータを集めて処理していた。
「もうこんな時間か。瑞貴、そろそろ帰っても構わないぞ」
「大丈夫だよ。こんなにたくさんのデータを有人一人だけにさせるわけにもいかないし」
「お前、最近――」
「ちわー、雷雷軒でーす!」
現れたのは雷雷軒の店主――元イナズマジャパンの一人・飛鷹征矢。恩師である響木正剛のあとを継いで雷雷軒の店主になったのだ。
「飛鷹……!」
「久しぶり、征矢! 急に来るなんてどうしたの?」
「ああ、それは……」
飛鷹は岡持ちからどんぶりを二つ取り出して机に置いた。雷雷軒の裏メニュー・雷雷丼である。
「おせっかい二丁!」
「…………!」
「征矢、これって……」
「鬼道さん、瑞貴。俺たちが世界一を目指していた頃、スゴい人たちと一緒にフィールドに立つのが不安でした。『俺、みんなに着いて行けるのかな』って。先を行く人の姿は見えないモンですよ、眩し過ぎて」
「今の俺たちは、あいつらにとって『先を行く者』なのか?」
「……冷めない内にどうぞ」
飛鷹はそれに答えず、ただ礼をしてその場を去って行った。
「まっ、ンなこと言われなくてもわかってんスよね。帝国との違いを知ってる、鬼道さんなら」
サッカー棟を出て外からさっきまでいた部屋の窓を見上げる飛鷹は、鬼道が教え子たちが持っている不満も、帝国学園と雷門中が違う理由もわかっているのを知って、敢えてあの態度なのだろうと思った。
「まったく、円堂さんも、俺の師匠であり初恋のあの人を置いて行くなんて……。虫が付いても知らないスよ」
飛鷹にとって恩師はサッカーの道を教えてくれた響木だが、世界大会の間に特訓に付き合ってくれた瑞貴は師匠でもある。
二人の絆の強さが簡単に壊れないのもわかっているし、自分は憧れに似た淡い恋心は終止符を打てたが、あきらめの悪い他の仲間を見ていると心配にもなるのだった。
「久しぶりの雷雷丼だ! 有人、せっかくだしひと休みして食べようよ!」
「そうだな。いただこう」
その一方で、作業する手を止めた二人は雷雷丼をレンゲですくうとひと口食べた。
「おいしい! 征矢、腕を上げたね!」
「ああ。またいつか雷雷軒にでも行ってみるか。春奈や佐久間も誘って」
「うん……」
普通に提案を出した鬼道だが、瑞貴が食べる手を止めたのを見て不思議に思う。
「どうした?」
「まだ三日目なのに、誰かと食べるご飯がこんなに久しぶりに感じるなんて思ってもみなかったんだ」
「……最近、あまり食べていないんだろ」
「!」
鬼道は飛鷹が来る前に問いかけた質問を再度言うが、瑞貴には図星だったようで肩を跳ねた。
「な、なんでわかったの!?」
「顔色が悪いからな」
円堂の前では彼が安心して旅立てるように、本音を混じった強気を見せていたのだろう。恐らく円堂も気づいていたが、それを追求すると瑞貴のがんばりをムダにしてしまうからだ。
「まさか全然食べていない、なんてことはないだろうな」
「それはないよ! ただ、いつもより量が減っているだけ。不思議とお腹がいっぱいになっちゃうんだよね」
瑞貴も子供の頃から『強がり』が成長していない。寂しさ故に食欲がなくなり、それを埋めるように作業に没頭していたことも。飛鷹のおかげで確信が持てた。
「信助、まだ帰ってなかったね」
「!」
分かれ道の角から聞こえた声は葵のものだ。姿が見えると隣には天馬も一緒にいるので、信助は思わず電柱の陰に身を潜める。
「このまま練習に出てこないのかな?」
「信助はきっと戻って来るよ」
「!」
迷いもなく断言した天馬に信助は驚いた。それは葵も同じなので理由を訊く。
「なら、どうしてうちにまで?」
「伝えたかったんだ、俺の気持ち。――俺、信助とサッカーがしたいって!」
「…………!」
天馬の言葉を聞いて、信助は目を見開いていた。……あんなに拒絶して勝手に裏切られた気持ちになったのに、天馬は自分のことを信じているのだと。
――そして雷門中のサッカー棟にある監督の部屋では、また鬼道と瑞貴が大量のデータを集めて処理していた。
「もうこんな時間か。瑞貴、そろそろ帰っても構わないぞ」
「大丈夫だよ。こんなにたくさんのデータを有人一人だけにさせるわけにもいかないし」
「お前、最近――」
「ちわー、雷雷軒でーす!」
現れたのは雷雷軒の店主――元イナズマジャパンの一人・飛鷹征矢。恩師である響木正剛のあとを継いで雷雷軒の店主になったのだ。
「飛鷹……!」
「久しぶり、征矢! 急に来るなんてどうしたの?」
「ああ、それは……」
飛鷹は岡持ちからどんぶりを二つ取り出して机に置いた。雷雷軒の裏メニュー・雷雷丼である。
「おせっかい二丁!」
「…………!」
「征矢、これって……」
「鬼道さん、瑞貴。俺たちが世界一を目指していた頃、スゴい人たちと一緒にフィールドに立つのが不安でした。『俺、みんなに着いて行けるのかな』って。先を行く人の姿は見えないモンですよ、眩し過ぎて」
「今の俺たちは、あいつらにとって『先を行く者』なのか?」
「……冷めない内にどうぞ」
飛鷹はそれに答えず、ただ礼をしてその場を去って行った。
「まっ、ンなこと言われなくてもわかってんスよね。帝国との違いを知ってる、鬼道さんなら」
サッカー棟を出て外からさっきまでいた部屋の窓を見上げる飛鷹は、鬼道が教え子たちが持っている不満も、帝国学園と雷門中が違う理由もわかっているのを知って、敢えてあの態度なのだろうと思った。
「まったく、円堂さんも、俺の師匠であり初恋のあの人を置いて行くなんて……。虫が付いても知らないスよ」
飛鷹にとって恩師はサッカーの道を教えてくれた響木だが、世界大会の間に特訓に付き合ってくれた瑞貴は師匠でもある。
二人の絆の強さが簡単に壊れないのもわかっているし、自分は憧れに似た淡い恋心は終止符を打てたが、あきらめの悪い他の仲間を見ていると心配にもなるのだった。
「久しぶりの雷雷丼だ! 有人、せっかくだしひと休みして食べようよ!」
「そうだな。いただこう」
その一方で、作業する手を止めた二人は雷雷丼をレンゲですくうとひと口食べた。
「おいしい! 征矢、腕を上げたね!」
「ああ。またいつか雷雷軒にでも行ってみるか。春奈や佐久間も誘って」
「うん……」
普通に提案を出した鬼道だが、瑞貴が食べる手を止めたのを見て不思議に思う。
「どうした?」
「まだ三日目なのに、誰かと食べるご飯がこんなに久しぶりに感じるなんて思ってもみなかったんだ」
「……最近、あまり食べていないんだろ」
「!」
鬼道は飛鷹が来る前に問いかけた質問を再度言うが、瑞貴には図星だったようで肩を跳ねた。
「な、なんでわかったの!?」
「顔色が悪いからな」
円堂の前では彼が安心して旅立てるように、本音を混じった強気を見せていたのだろう。恐らく円堂も気づいていたが、それを追求すると瑞貴のがんばりをムダにしてしまうからだ。
「まさか全然食べていない、なんてことはないだろうな」
「それはないよ! ただ、いつもより量が減っているだけ。不思議とお腹がいっぱいになっちゃうんだよね」
瑞貴も子供の頃から『強がり』が成長していない。寂しさ故に食欲がなくなり、それを埋めるように作業に没頭していたことも。飛鷹のおかげで確信が持てた。