監督・鬼道の不安
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翌日の練習では、昨日の宣言通り信助も天城も来なかった。輝がいないのは天城に巻き込まれているからだ。その三人は昨日と同じように商店街にある雷雷軒に行っている。
「ラーメン、三つ! あ~、イライラするド! こうなったら転校するしかないド! なあ、影山!」
「は、はい……――ええっ!?」
天城の言葉を話半分に聞いていたせいで、輝は曖昧に答えるもすぐに驚いた。何かと天城の言葉をあいまいに答えたのがアダとなっていたのだろう。
するとラーメンを作っている雷雷軒の店主から、思わぬ声がかかる。
「――嫌なら戦えやいい」
「っ、戦うだド!?」
「ぼ、僕じゃ……」
「そうだ、フィフスセクターから本当のサッカーを取り戻すんだド……ここで逃げたら前に戻っちまうド! よーし! 戦ってやるド! なあっ!」
「ええっ!? 戦うってまさか、監督と!?」
「ほい、ラーメン一丁」
差し出されたラーメンのお盆には頼んでいないチャーハンがあった。店主から昨日もサービスとしてくれたので、輝も嬉しく思う。
「あっ、またサービス!」
「そうと決まれば、腹ごしらえだド!」
「いただきまーす!」
「信助、お前はどうするだド?」
「……僕は戻りません」
天城や輝(彼は巻き込まれただけだが)とは違い、信助には戦うつもりも戻るつもりもなかった。
――昨日と同じの練習が終わり、神童は河川敷のグラウンドにやってきた。
「あのとき円堂監督は、俺たちに希望の光を見せてくれた」
「!」
ただ一人でグラウンドを眺めていたのに、うしろから霧野を始め三国や車田や速水や浜野、そして狩屋までもが階段から降りて神童の前に来る。
「みんな……」
「お前と同じさ。円堂監督が待っててくれるような気がしてな」
(ゲッ! なんのことかわからないのは俺だけ!?)
狩屋は自分だけ疎外感を感じていた。それもそのはず、円堂が監督として就任したのは狩屋が転校する前なのだから。
「ちゅーか、まさか瑞貴さんまで鬼道監督に寝返るなんて思わなかったな」
「事務系以外の言葉がないなんてありませんでしたからね……」
「えっ? そうなんスか?」
浜野と速水の呟きに反応したのか、初めて狩屋が会話に参加する。
「瑞貴姉さんが普段の言葉を言わないのって、理由があるからなんスよ」
「理由? それはなんだ?」
「さあ、それは全部違っていたのでわかりませんが、やっぱり旦那さんがいないから寂しいんじゃないんスかね」
「瑞貴さんと円堂監督、結婚してたもんな……」
狩屋と霧野の会話を聞く中、神童は思考を巡らせていた。円堂が雷門を去ってしまったのも、瑞貴が言葉足らずになってしまったのも理由が思いつかない。
(円堂監督、瑞貴さん、どうして……)
「――神童!」
新たに声がかかって顔を上げると、階段の上で錦龍馬が自分たちを見降ろしていた。
「錦!」
「げにまっことしょげてばっかりやのう、神童。おまんらにも移っちょったか」
「お前に何がわかる!」
「さあな!」
神童の代わりに霧野が声を上げたが、錦はどこ吹く風と言うように階段を一段一段降りていく。
「ああ、そうそう。逆に変わってて驚いたこともあるぜよ。な~んだ?」
「錦、いい加減に――」
「答えは『顔』ぜよ!」
今度は神童が声を上げようとしたが、それを遮った錦が昔を思い出しながら語りかける。
「やる気をなくしちょった、あのおまんらがイキイキしちゅう! すぐにわかったぜよ。円堂監督がおまんらの心に眠っていた種に光を当てて、瑞貴さんが雨となって芽を出せてくれたっちゅうのがな。その芽、枯らしちゅうがか!?」
「!」
「わしならぜってー枯らさんぜよ! でっかく育てて次会(オ)うたとき驚かせてやるぜよ!」
「錦……」
「なんちゅうかな。おまんらが円堂監督と瑞貴さんのおかげで気づいたなら、それに頼ってばっかじゃいかんぜよ! 光や雨がずーっと同じだと思ったら大間違いじゃ!」
「「「「「!」」」」」
その言葉を聞き、全員顔を見合わせていた。まるで何かを決意するように。