監督・鬼道の不安
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サッカー棟の前で、春奈が階段の上にいる鬼道に向かって声を上げているのを見る。
「どういうつもりなの、兄さん! あれじゃみんなが潰れてしまうわ!」
「雷門を勝たせる……それが俺の役目だ」
そう言い残して鬼道はサッカー棟の中に入って行った。瑞貴も続こうと階段を上がろうとすると、それを見かけた春奈がそばに駆け寄って両肩をつかむ。
「瑞貴先輩! あの練習メニュー、先輩の意見も入っているんですよね」
「うん、そうだよ」
「だったら、今すぐ変更してください! 必殺技はおろか、ボールを使わなくてもボロボロになってしまうんですよ!」
「……ごめんね、春奈ちゃん」
瑞貴はそっと両肩にある春奈の手を離すと、真剣な瞳を向ける。
「これは新監督の方針なの。そして――雷門には絶対に必要なことだから」
そう言ってサッカー棟に向かう瑞貴の背を見て、春奈は今の二人の考えがわからずに呟く他なかった。
「兄さん……瑞貴先輩……」
☆☆☆☆☆
部活が終わったあと、買い物を終えて帰宅した瑞貴は夕食作りを開始した。今日のメニューはカレーなのだが……。
「……やっちゃった」
いつもの調子で二人分を作ってしまった。幸い作り置きができるものでよかったが、キッチンから吹き抜けになっているリビングに顔を向けると、いつもならいるはずの円堂がいないことに胸が痛む。
「変だな……コーチになるまで独り暮らしが多かったはずなのに。それに朝はあんなに元気に送れたのに……大丈夫だって約束もしたのに……!」
いつの間にかポロポロと涙が出てきた。覚悟をしていたのに円堂といることがいつの間にか当たり前となって、隣にいない寂しさが今になって溢れ出してきたのだ。
部活では『雷門中サッカー部のコーチ』としているが、今は『円堂守の妻』だ。この家にいる間だけ、瑞貴は鬼道や部員たちの前には見せない悲しみを表に出すことにした。
☆☆☆☆☆
翌日も同じメニューを行う。信助もバーを何倍も高く上げて飛び続けたが、ついに足を引っかけて落ちてしまった。
「鬼道監督! 信助くんはもう限界です!」
「西園がそう言ったのか」
「!」
「いえ、でも……」
「続けるんだ」
春奈が止めに入るも、鬼道は信助が拒否の声を上げないために続けるように言う。信助は言われるがままに立ち上がった。
――夜になって昨日と同じように全員がボロボロになって倒れると、鬼道がやっと終了の言葉を上げる。
「今日は以上だ」
「……っ!」
そのうしろ姿を信助は顔をしかめて歯を食いしばっていた。信助にとって鬼道の追加メニューは『嫌がらせ』……そう判断されていた。
ガンッ!
「もう我慢できないド!」
「落ち着け。まだ二日目だ」
「明日も同じに決まってるド!」
ロッカーにカバンを投げつけた天城に、車田は制するように言うが、彼は鬼道の指導への苛立ちが限界になっていた。
「僕、明日から練習に出ません!」
「えっ!?」
衝撃的発言した信助に、天馬を始め周りの者たちが注目する。しかし同意する者もいた。
「信助、本気?」
「うん!」
「俺もだド。なあ、影山。お前もこんな練習、嫌だド!?」
「えっ!?」
何も言っていないのに影山輝は巻き込まれる形で天城に肩へ手を置かれた。なんとか止めようと神童は声を上げる。
「天城さん!」
「止めてもムダだド!」
「ぼ、僕は……あ、あの!」
「あっ、信助!」
輝を連れ去るように天城は出て行き、それに信助も一緒に出て行く。天馬は慌ててカバンを肩にかけて追いかけた。
「信助!」
「…………」
外で追いついたものの信助は反応してくれない。だから天馬は一方的でも声をかけて見る。
「あの練習、鬼道監督には考えがあるんじゃないかな」
「…………」
「サッカーのことはサッカーが教えてくれる。鬼道監督が考えていることもきっと……だから、続けてみよ?」
「嫌だ!」
初めて反応を見せて振り向いた信助だが、その言葉は完全に拒否の意を示していた。
「どういうつもりなの、兄さん! あれじゃみんなが潰れてしまうわ!」
「雷門を勝たせる……それが俺の役目だ」
そう言い残して鬼道はサッカー棟の中に入って行った。瑞貴も続こうと階段を上がろうとすると、それを見かけた春奈がそばに駆け寄って両肩をつかむ。
「瑞貴先輩! あの練習メニュー、先輩の意見も入っているんですよね」
「うん、そうだよ」
「だったら、今すぐ変更してください! 必殺技はおろか、ボールを使わなくてもボロボロになってしまうんですよ!」
「……ごめんね、春奈ちゃん」
瑞貴はそっと両肩にある春奈の手を離すと、真剣な瞳を向ける。
「これは新監督の方針なの。そして――雷門には絶対に必要なことだから」
そう言ってサッカー棟に向かう瑞貴の背を見て、春奈は今の二人の考えがわからずに呟く他なかった。
「兄さん……瑞貴先輩……」
☆☆☆☆☆
部活が終わったあと、買い物を終えて帰宅した瑞貴は夕食作りを開始した。今日のメニューはカレーなのだが……。
「……やっちゃった」
いつもの調子で二人分を作ってしまった。幸い作り置きができるものでよかったが、キッチンから吹き抜けになっているリビングに顔を向けると、いつもならいるはずの円堂がいないことに胸が痛む。
「変だな……コーチになるまで独り暮らしが多かったはずなのに。それに朝はあんなに元気に送れたのに……大丈夫だって約束もしたのに……!」
いつの間にかポロポロと涙が出てきた。覚悟をしていたのに円堂といることがいつの間にか当たり前となって、隣にいない寂しさが今になって溢れ出してきたのだ。
部活では『雷門中サッカー部のコーチ』としているが、今は『円堂守の妻』だ。この家にいる間だけ、瑞貴は鬼道や部員たちの前には見せない悲しみを表に出すことにした。
☆☆☆☆☆
翌日も同じメニューを行う。信助もバーを何倍も高く上げて飛び続けたが、ついに足を引っかけて落ちてしまった。
「鬼道監督! 信助くんはもう限界です!」
「西園がそう言ったのか」
「!」
「いえ、でも……」
「続けるんだ」
春奈が止めに入るも、鬼道は信助が拒否の声を上げないために続けるように言う。信助は言われるがままに立ち上がった。
――夜になって昨日と同じように全員がボロボロになって倒れると、鬼道がやっと終了の言葉を上げる。
「今日は以上だ」
「……っ!」
そのうしろ姿を信助は顔をしかめて歯を食いしばっていた。信助にとって鬼道の追加メニューは『嫌がらせ』……そう判断されていた。
ガンッ!
「もう我慢できないド!」
「落ち着け。まだ二日目だ」
「明日も同じに決まってるド!」
ロッカーにカバンを投げつけた天城に、車田は制するように言うが、彼は鬼道の指導への苛立ちが限界になっていた。
「僕、明日から練習に出ません!」
「えっ!?」
衝撃的発言した信助に、天馬を始め周りの者たちが注目する。しかし同意する者もいた。
「信助、本気?」
「うん!」
「俺もだド。なあ、影山。お前もこんな練習、嫌だド!?」
「えっ!?」
何も言っていないのに影山輝は巻き込まれる形で天城に肩へ手を置かれた。なんとか止めようと神童は声を上げる。
「天城さん!」
「止めてもムダだド!」
「ぼ、僕は……あ、あの!」
「あっ、信助!」
輝を連れ去るように天城は出て行き、それに信助も一緒に出て行く。天馬は慌ててカバンを肩にかけて追いかけた。
「信助!」
「…………」
外で追いついたものの信助は反応してくれない。だから天馬は一方的でも声をかけて見る。
「あの練習、鬼道監督には考えがあるんじゃないかな」
「…………」
「サッカーのことはサッカーが教えてくれる。鬼道監督が考えていることもきっと……だから、続けてみよ?」
「嫌だ!」
初めて反応を見せて振り向いた信助だが、その言葉は完全に拒否の意を示していた。