攻撃のチャンスを失って雪村は歯を食いしばった。そして立ち上がった狩屋のそばに霧野が立つ。


「それだ狩屋！　スパイクのふちを使って、動きをコントロールするってことだな！」

「えっ？　あいつと同じようにやってみたんだけど……そういうことか！」

「みんなに伝えよう。これで氷のフィールドを怖がらずに戦える！」

「いいじゃないですか、それ」


狩屋は雪村の真似をしたため無意識だったようだが、おかげで霧野は氷のフィールドで戦う方法を見つけることができ、二人は不敵に笑った。


「マサキくんが実践し、蘭丸くんが分析して答えが生まれる……あの二人、いいコンビだね」

「ああ。初戦のときとは大違いだ」


チームメイトととはいえ心から信頼し合っているからだ。瑞貴も円堂も二人を見て笑みを浮かべるのだった。

霧野と狩屋からアドバイスをもらった雷門中サッカー部。さっそくボールを取った天馬がドリブルして行く。


「スパイクを使って、滑りをコントロールする……それ！」


左足を踏ん張って天馬は前線へとボールを蹴る。誰にも届かずに落ちたので氷里が駆け出すと……。


「お先～！」


氷里のうしろから浜野が抜き、スパイクのエッジを使って体を方向転換してボールを足で止めた。


「何っ!?」

「神童！」


驚く氷里に微笑んだ浜野は神童へボールを回した。それに神童もエッジをうまく使って体のバランスをとる。

コツをつかんだらあとは体を思うように動かす雷門中サッカー部。白恋中サッカー部の動きに遅れを取ることはなく、接戦を繰り出す。


「なみのりピエロ！　天馬！」

「はい！」


必殺技で木瀧をかわした浜野は天馬へボールを回した。それを受け取った天馬がドリブルして行くと、前から北厳猛雪が向かって来る。


「通さん！」

「そよかぜステップ！　倉間先輩！」


北厳をかわした天馬はゴール前にいる倉間にボールを回す。倉間は完全フリーなので絶好のシュートチャンスだ


「サイドワインダー！」

「クリスタルバリア！」


掲げた右手から大きな氷の結晶が現れ、それにぶつかったシュートは凍って地に落ちてしまった。


「クッソ！」

「あー惜しい！」

「でも、だんだんいい感じになってますよ！」

「うん、熱くなってきた……！」


悔しそうに歯を食いしばる倉間と水鳥だが、葵も茜も確かな手応えを感じている。それに伴うようにベンチにいるみんなも、いつ自分が出てもいいようにしっかり観察していた。


「みんなコツをつかんだみたいだな」

「あとは点を取るのみ！」

「うん！　さあ、攻めていけー！」

｢｢｢｢｢はい!!｣｣｣｣｣


鬼道も瑞貴も円堂も、雷門の調子が出て来たのでチャンスが生まれる可能性を感じていた。


「剣城！」


木瀧に渡る前に足でボールを止めた神童は、そのまま剣城へボールを回す。


「今だ。わしらの力を見せたれ！」


剣城がドリブルをする仲、白恋中の監督・熊崎伝治が笑ってそう言うと、白咲は心得たと頷く。


「やれ、真狩！」

「必殺タクティクス……絶対障壁！」


合図を出した真狩銀次郎を最後尾に逆三角形に固まって守備をする白恋中サッカー部。まるで分厚い氷の壁のようだ。


「何っ!?」

｢｢｢｢｢｢なっ！｣｣｣｣｣

｢｢｢！｣｣｣

「来たか……！」


剣城を始めとする雷門中サッカー部、円堂も瑞貴も鬼道も目を見開き、吹雪はやはり現れたと顔をしかめた。


「突破してやる……！」


それでも剣城は突破しようと試みるが、絶対障壁に弾き飛ばされてしまった。


《白恋の必殺タクティクス、雷門の攻撃を止めたー！》

「剣城が止められた……！」


こうも簡単に剣城が止められて天馬は驚くと、真狩と白咲は不敵に笑う。


「見たか。俺たち白恋の必殺タクティクス、絶対障壁！」

「このタクティクスを破ることなどできない！」

「これが、絶対障壁の威力か……！」


話には聞いていたが目の当たりにしたことで、神童は絶対障壁の恐ろしさを再認識した。


「見事だ……完璧な必殺タクティクスだよ……！」

「士郎がいた頃よりも強くなっているってこと？」

「うん。雪村だけじゃない……チームのみんなも強くなっている！」