「なっ！　みんな戻れ！」

「遅い！」


慌てて神童は指示を出すが雪村のスピードが速く、浜野も天城も突破して三国と一対一になった。


「パンサーブリザード！」

「これは！」


驚く吹雪が白恋中へコーチにいる間は見たことのない必殺技が放たれた。荒ぶる氷嵐も従わせるような雪豹のシュートがゴールへ向かって行く。


「決めさせてたまるか！　フェンス・オブ――」


しかし三国が必殺技を完全に発動させる前に、雪村のシュートが速かったのでそのままゴールへ入った。


《ゴォ――ルッ!!　白恋、雪村の必殺シュートで先取点を奪った――っ!!》

「クッソー！」

（パンサーブリザード……なんてスピードなんだ！　三国先輩の必殺技が間に合わなかった……！）


悔しそうに拳を撃ちつける三国。近くで見ていた天馬も雪村の必殺技に目を見開いて驚くしかない。


「できたんだね……君自身の必殺技が」

「これが、俺の力だ！」


結果的に宿題となった雪村の必殺技を吹雪は目の当たりにした。それは自分のエターナルブリザードを超えているかもしれない。



☆☆☆☆☆


――白恋中でも雪村は自分自身の必殺技を編み出そうとしたが、何度やっても失敗に終わっていく。


『ダメだ……！　何度やっても……！』

『雪村……』

『俺には……俺にはムリなのか……!?』

『！』


片膝を付く雪村を吹雪はうしろから肩に手を乗せようとしたが、雪村からかつての自分の姿を思い出させた。今の雪村は踏ん張りどきだと気づき、ギュッと拳を握り締めて手を引くと――。


『これくらいであきらめるのかい？』

『っ！　……いえ、やります。やらせてください！』

『じゃあ、明日もがんばろう』

『はい！』


しかし吹雪は朝も放課後も、その次の日も、一向に雪村の前に現れることはなかった。フィフスセクターが手を回したことにより、コーチを解任されたと知る由もなく……。



☆☆☆☆☆


（あの日以来、あんたは白恋から姿を消した……俺を裏切ったんだ！　俺はあんたを許さない！　雷門と一緒に叩き潰してやる！）


皮肉にも吹雪への復讐こそが雪村の必殺技完成の糧となったのだ。

またしても白恋へチャンスが回り、雪村がドリブルで雷門陣内へと斬り込んで行く。


「狩屋！　止めるぞ！」

「はい！」


霧野と狩屋が上がって行く。最初に立ちふさがった霧野に雪村は一度ボールを足で押さえて止める。


「行かせない！」

「どうかな？」


雪村が横に動いたので霧野はそれを追うと、雪村はスパイクのエッジを使って方向転換する。


「何？」


しかし霧野は雪村の動きに気になる所があった。そして雪村は霧野を突破する。


（あいつ、今の……）


続く狩屋も先ほどの雪村の動きに目を留める。雪村はそのまま突破するが、なんと狩屋はエッジを使って滑る体を止めるとすぐに立ち上がった。


「おおっと！」

「!?」


もう一度止めに入る狩屋だが再びかわす雪村。しかし今度は今までと違って――。


「そうはいくかよ！」

「なっ!?」


スケートのように回り込んだ狩屋は雪村へスライディングし、見事にボールをクリアさせた。