キャプテンの資格
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ドンッ!
「ウッ!」
「わっ!」
神童がサッカー棟から出た途端、目を強く閉じていたせいかサッカー棟に入ろうとした人とぶつかってしまった。すぐに謝ろうと神童は顔を上げる。
「すみません! あっ――」
「神童くん。こっちこそごめんね、大丈夫?」
「はい……」
身長差があるため瑞貴は少ししゃがんで顔を覗き込むが、神童は返事をするものの顔ごと逸らしている。その様子に瑞貴は不思議に思ってもう一度声をかける。
「神童くん?」
「……った」
「えっ?」
「あなたにだけは、会いたくなかった!」
「!」
やっと視線を合わせてくれたが拒絶の意だった。さすがに瑞貴も驚いて目を見開くと、神童は律儀に礼をして去って行った。
何があったのかと気になった瑞貴がミーティングルームに入ると、円堂はテーブルにある封筒をジッと見ていた。
「守、それは?」
「神童からの退部届だ」
「神童くんから!? それでさっき、あんな顔を……」
『あなたにだけは、会いたくなかった!』
先ほど会ったとき神童が思い詰めた顔をしていた原因がわかったが、残した言葉の意味だけがわからなかった。
「どうした?」
「ううん、なんでもない。それよりこれ――」
ガラッ。
「円堂監督! 瑞貴さん!」
「「天馬……」」
自動ドアが開く時間も惜しいと思うくらい慌てて来たのは天馬だった。
「キャプテンが部を辞めるって聞いたんです! もう学校中に噂になってて――……これは?」
「君の危惧していた、神童くんの退部届だよ」
「!」
見つけた封筒の正体を瑞貴が言うと、本当に神童が提出したのだとわかり天馬は目を見開いた。
「これを、キャプテンが……!」
「ああ」
「俺、キャプテンと話してみたいです! キャプテンだって、ホントの気持ちでこれ書いたわけじゃないと思うんです」
「そう思うか?」
「はい! 練習が終わったら、キャプテン家(チ)行ってみます!」
天馬はそう言うと、放課後までの残りの授業を終えるためにミーティングルームを出た。その姿を見て円堂も瑞貴も自然と笑みが浮かんでいる。
「あいつがあきらめない限り、雷門の風はいい方向に向かうな」
「うん。まるで誰かさんそっくり」
「誰かって?」
「さて、誰でしょうね」
クスクスと面白く笑う瑞貴に、円堂は不思議そうに首を傾げた。
(守も天馬も、サッカーが大好きな所や一度決めたらやり通す所がスゴく似ている)
フィフスセクターから本当のサッカーを取り戻すための要は天馬だろうと、久遠道也や円堂と同じように瑞貴も確信していた。
☆☆☆☆☆
放課後、天馬は予定通り部活が終わったあと神童の家に向かった。教えてもらった住所の家はとんでもないものだと目を見開く。
「うわー……! 家っていうより、お城だ……!」
神童財閥の家でもあるため、普通の一軒家より何倍も大きな屋敷だった。
天馬が用件を言うと神童自身の許可ももらい使用人が部屋に案内した。天馬は部屋の中に入ると神童はピアノを弾いており、部屋の調度品にも目を惹かれたが一度惹かれたのは、神童から少し離れた所にあるサッカーボールだった。
(俺、なんでこいつを部屋に入れたんだろう? 話すことなんか何もないのに……)
神童がピアノを弾くのをやめると、それを合図というように天馬は背筋を伸ばし、緊張しているのか苦笑しながら話す。