「京介くん、シュートのスピードもコントロールも上達したね。いい調子だよ！」

「っ、ありがとうございます……」


瑞貴が微笑んで褒めると、剣城は照れるように目線を逸らすと少し頬を染めた。憧れの人から褒められるのは嬉しいものだろう。

完成できて嬉しいのは大人組も同じで、鬼道と円堂もホッとしていた。


「なんとか間に合ったな」

「ああ！」

「…………」

「士郎？　どうしたの？」

「あっ、いや、なんでもない……」

「ホントに大丈夫？　この間も帰って来るの遅かったし」

「うん。心配してくれてありがとう、瑞貴ちゃん」


せっかく突破口を雷門が身に付けたのに反応がない吹雪。瑞貴が顔を覗き込みながら訊くと、吹雪は誤魔化すように笑った。


「よーしみんな！　出発だ！」

｢｢｢｢｢はい！｣｣｣｣｣


――円堂を筆頭に全員がジャージに着替えてバスに乗り込んだ。目指すはロシアンルーレットスタジアムにある、二回戦の会場である。


「ギリギリ完成したわね、必殺タクティクス！」

「うん！　これで絶対障壁なんか怖くない！」

「初めての試合…ドキドキします……！」


必殺タクティクスが完成した感動に葵も天馬も浸っている。天馬と剣城の間で補助席に座っている輝は、初試合に向けて胸を高鳴らせていた。


「あっ、そうだ。名前付けなくていいのかな？　必殺タクティクスの」

「そういえばそうね」

「狩屋！」

「っ！」


信助の提案に葵はごもっともいうように同意すると、天馬は少し斜め前の席に座っている狩屋に声をかけた。


「なんかないの？」

「また俺かよ!?」

「うん！」

「あっ、うーん……。二人で一緒に駆け抜けるわけだから……ラ、『ランランランニング』とか？」


プォーンッ……。


｢｢｢｢｢ダッサー！｣｣｣｣｣


クラクションの音で間を取ると、天馬や輝や葵たちマネージャーや信助は腹を押さえて笑っていた。


「ラ、ラ、ランランランニングって……！」

「す、素晴らしくダサいですね！」

「ないない！　絶対にない！」

「アハハハハッ！」

「だったらどんなのがいいんだよ！」


ある意味遊ばれて狩屋は言うと、笑いが治まった輝が額に指を当てて考える。


「両サイドから翔け上がる疾風……『ダブルウィング』とかどうですか？」

「カッコいい！」

「それ！　それでいこう！」


輝の出した必殺技の名前に、葵や天馬たちは大賛成のようだ。自分の案が通らなくて狩屋はふてくされてしまっている。


「チッ」

「マサキくん、ネーミングのセンスが相変わらずだね……プククッ」

「笑ってるの聞こえてるよ！　瑞貴姉さん！」


斜め前の席に座って肩を震わせる瑞貴に、狩屋はさらに顔を赤くして指を差した。



☆☆☆☆☆


時同じくして、空港から大荷物を持って帰国してきた少年がいる。それはかつて雷門の点取り屋と自称しイタリアへ留学した――錦龍馬であった。










☆コーチの　今日の格言☆



サッカーを心から愛せないと、できないプレーも采配もある



以上!!