甦れ! 俺たちのサッカー!!

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「でもサッカーだけは好きみたいで、いつも一人でボールを蹴っていたわ。瑞貴と仲良くなったのも、サッカーのおかげなのよ」

「俺が海外にいたときか」

「うん。最初は言葉もかわすこともできなかったっけ……」


当時現役のプロ選手だった瑞貴は瞳子との繋がりで時間があるときに、お日さま園の子供たちにサッカーを教えていた。ウォーミングアップも兼ねてグラウンドでボールをリフティングする中、出会ったのが狩屋だったのだ。

他のみんなが集まったとき狩屋は参加しなかったが、始まる前と終わったあとの二人の時間のときは一緒にサッカーをし、いつしか狩屋は瑞貴のことを『瑞貴姉さん』と慕うようになった。瞳子もそれを微笑ましく見ていた。


「ここでも、溶け込めるか不安だったんだけど……」

「あいつらなら大丈夫です!」

「マサキくんには、支えてくれる仲間がいますから!」

「そうね……。それが雷門だものね」


自分たちの時代からの雷門魂が、今の雷門中サッカー部に受け継がれているのだから。

そして狩屋も天馬に誘われて信助と葵と共に木枯らし荘で今日の勝利を祝っている。同学年を始めチーム全体に完全に溶け込めるのもそう遠くないだろう。


「――瞳子ちゃん、お待たせ」

「あら。お迎え、ありがとう」


新たに来た人物は神崎シン。レジスタンスの業務が終了したので瞳子を迎えにやってきたようだ。


「円堂くん、瑞貴。初戦突破おめでとう。これで一歩前進できたよ」

「いえ、雷門のみんなで成し遂げたことです。俺たちは別に何も……」

「でも、守と有人の采配で突破口のヒントができたの。それに応えた天馬たちも誇らしい教え子だよ」

「フフッ、みんなでつかんだ勝利……懐かしいわね。昔を思い出すわ」


瞳子もかつてはずっと一人で戦ってきた。だが、雷門イレブンに出会って『力を合わせて得る勝利』の素晴らしさを教わったのだ。


「おっと、もう時間だ。瞳子ちゃん、帰ろうか」

「ええ。瑞貴、円堂くん、またいつかお日さま園に遊びに来てね」

「うん!」

「必ず」


最後に笑い合った四人の左手の薬指は、それぞれペアの指輪がある。

そう――瑞貴と円堂が夫婦になっているように、シンと瞳子も夫婦になったのだ。瞳子の名は『吉良瞳子』を改め『神崎瞳子』――シンの妻で瑞貴とは義姉妹である。



☆☆☆☆☆


瑞貴と瞳子とシンと別れたあと、円堂は一人フィフスセクターの本部へやってきた。手続きをするとすんなり通してもらい、聖帝の側近の者に案内され、聖帝・イシドシュウジの部屋に来た。


「円堂守……来ると思っていたよ」

「豪炎寺……やっぱりお前だったんだな」


椅子に座って見下ろすのはイシドシュウジ――いや、豪炎寺修也。十年前、円堂と瑞貴と鬼道と共に戦った仲間であり、エースストライカーとして頼れる存在だ。そんな彼が聖帝をしていると知ったとき、円堂たちは衝撃を受けた。

そして今、こうして直に話すためにやってきた。だが、近くで対面すると十年前の姿とはまるで別人のようになっており、思わず円堂は声を荒げる。


「なんでだ!? なんでお前がフィフスセクターなんかに!」

「…………」

「豪炎寺!」

「私は豪炎寺ではない。イシドシュウジだ」


本当の名前を告げない彼は、まるで過去を全て捨てたような雰囲気だった。


「いったい、何があったんだ? こんなことをしてみんなからサッカーを取り上げて、サッカーができない辛さは、お前が一番よく知ってるはずじゃなかったのか!? なのに……なんでそのお前が管理サッカーなんか!」

「…………」

「もうやめよう。こんな戦いを続けるより、昔のサッカーを取り戻すにはどうしたらいいか、一緒に考えよう。みんなで考えれば、必ず答えは見つかる!」

「……わからないのか。サッカーは変わったのだ」


円堂は必死に説得をするが、イシドは立ち上がると両手を広げて笑みを浮かべた。


「もう昔には戻れない……ならば私はサッカーを支配して、皆にサッカーを平等に分け与える」

「豪炎寺……!」

「もう話すことはない。帰りたまえ」


うしろの壁が上に開き、イシドは中へ続く通路に入ると壁も閉じた。主がいなくなった部屋はホログラムも明かりも消えて暗くなり、残された円堂は拳を握り締めるしかなかった……。
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