「浜野先輩！」

「霧野！」


そのまま信助は浜野にパスを出し、甲斐と接触する前に浜野は上がっている霧野へボールを回す。しかし霧野の両隣から再び金平と長船が来た。


｢｢ツインミキサー！｣｣

「うわあっ！」

「霧野！」


またも弾き飛ばされた霧野に、神童が声を上げる。

一進一退、互角の試合が続いている。残り時間もあとわずか……次の１点が勝負を決めることになる。狩屋が一文字斬人を抜けてドリブルして上がって行く。


「甲斐！　月島！」


南沢の指示で甲斐と月島が止めにかかった。だが、狩屋はスライディングする甲斐をボールごとジャンプしてかわし、そのままバック転をするように月島の頭上も越えた。

ボディバランスを最大限に生かした、その見事なプレーに天馬も思わず声を上げた。


「いいぞ、狩屋！」

（この先には行かせない！）


しかし狩屋の元へ南沢と長船と小早川がディフェンスに入ろうとしていた。


「狩屋！」

「チッ……ふんっ！」


三人はさすがにムリと判断したのか、狩屋は声をかけた霧野へパスを出した。そして霧野もそのままボールを上げ、取ったのは……剣城京介だ。


「はああぁぁあああ！　剣聖ランスロット！」

「ゴールは割らせぬ！　巨神ギガンテス！」


再び化身同士の一騎打ちが、始まろうとしていた。それはこの試合の運命も分けることになる。


「ロストエンジェル！」

「ギガンティックボム！」


ぶつかり合う化身の力と選手の気持ち。絶対に負けないという強い精神で勝ったのは――。


「ううっ……うおおぉぉおおお！　いけ、ランスロット！」


ついに勝負を制したのは剣城と剣聖ランスロット――シュートは突き刺さるようにゴールへと入ったのだ。そして同時に試合終了のホイッスルが鳴り響く。


《ここで試合終了のホイッスル！　雷門中が逆転勝利――っ!!　３対２で月山国光を降したぞ――っ!!》

「やったー！　やったー！」


信助を始め大喜びする雷門中サッカー部。そして聖帝選挙でも響木正剛に表が入ったことを映し出された。


「円堂！」

「ああ！」

「やったね！」

｢｢うおっ!?｣｣


鬼道と円堂がモニターをしっかり確認すると、二人の間に瑞貴がそれぞれの腕を取ったのだ。円堂と鬼道は驚くも、懐かしい雰囲気がして顔を見合わせると笑った。


「負けた……」

「――顔を上げろ！」


対して落ち込む月山国光に、ベンチから近藤が声を上げてきた。それは雷門にも聞こえるので自然と注目する。


「確かに試合には負けた……だが、お前たちは全力を出し切った。お前たちは今日、初めてサッカーと本気で向き合ったんだ。ボールに全てをぶつけることによって」

（全て？　――っ！）


近藤の言葉で南沢が思い返したのは、必死にボールに食らいつく自分自身だ。あれが『サッカーと本気で向き合う』という意味だと知る。

そして近藤は帽子を取ると、負けたというのに清々しい笑みを浮かべる。