秋空の挑戦者!
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夕方に練習が終わり、監督部屋で瑞貴と円堂と鬼道は今後の確認をしたので片付けを始める。鬼道が仲間になった祝いも兼ねてこれから円堂家で夕食の予定なのだ。
「瑞貴先ぱーい! ちょっとこちらに来ていただけますかー?」
「はいはーい」
春奈に呼ばれた瑞貴が部屋から出て行ったので、残ったのは鬼道と円堂だけだ。
「幸せそうだな。お前も、瑞貴も」
「そりゃそうさ。……こんな状況になって喜んでいるのもアレだが、瑞貴とこうして一緒に暮らせて俺は嬉しいんだ」
「なるほど。今も咲き続けているようだな、あいつの笑顔の花は。結婚式のあの日から――いや、十年前に出会ったときからな」
十年前の雷門中対帝国学園の練習試合……チームメイトが脱走したので円堂たちが追いかけている間、瑞貴はキチンと自分たちに遅れることを謝りにきた。
帝国学園には女子ということで瑞貴をバカにした者もいたのに、瑞貴はそれとこれは別だというように笑っていたのだ。
「円堂」
「ん?」
「お前たちの間に隙があれば俺は遠慮しない」
「あっ! お前、まだ瑞貴をあきらめてないのか!」
「フッ、当然だ。こっちはお前が気づく前から片想いしてきたからな」
ニヤリと挑発気味に笑う鬼道に円堂は憤慨した。昔からの仲間は時に頼りになるが、時に厄介な相手にもなるのだった。
――春奈は急な仕事があって食事会に行けず、三人は円堂家に向かいながら狩屋の入部のことを話していた。
「この時期、新入部員か。人数不足の雷門としてはありがたいことだがな」
「雷門はこれから、大変な道を進まなきゃならない」
「頼むよ、有人」
「ああ、俺がお前たちをフォローする。お前たちがキャプテンと副キャプテンだった、あの頃の雷門のようにな」
「フフッ」
「へへっ――……ん?」
「どうしたの?」
鬼道と顔を合わせて笑った二人だが、円堂がふと前方を見て声を上げた。瑞貴もその視線を追うと――懐かしい髪形をした人物の背が角から現れた。
「木暮?」
「ん? ――ええっ!? 円堂さん! 瑞貴姉さん! 鬼道さんも!」
なんと元イナズマジャパンで瑞貴の義弟でもある木暮夕弥だった。すっかり背も伸びただけでなく勤務後なのかスーツを着ている。
まさかの再会に円堂は嬉しくなって駆けると木暮の両肩に手を置き、瑞貴と鬼道もそのあとを追った。
「やっぱり木暮か! 久しぶりだな!」
「夕弥、元気にしてた?」
「はい! あっ、そうそう。俺、今ここに勤めてるんです」
「おおっ! がんばってるじゃないか!」
「一流企業だな」
「まあ、一応」
「スーツ姿も似合っているし、すっかり大人になったね」
「姉さんにそう言ってもらえると、嬉しいな」
名刺を三人に渡した木暮は照れるように鼻の下を擦った。背だけでなく呼び方も昔は『瑞貴姉』だったのに今じゃ『姉さん』と呼ぶようになっている。
♪ピリッ、ピリッ♪
「あっ、ちょっと失礼します」
内ポケットに入れていたスマフォが鳴ったので、木暮は取り出すと三人に断りを入れてから背を向けて通信を繋いだ。
「もしもし、木暮です。……あっ、どうも。明日の件ですね。はい…はい…は……ええっ! キャンセル!?」
「「「?」」」
電話をする木暮の声のトーンがだんだん下がり、さらには驚きの声を上げたので瑞貴と円堂と鬼道は何事かと顔を見合わせる。
「そんな急に言われても! もしもし!? もしもーし! ハァ……」
一方的に切られたのか、木暮は溜息をついて通話を着るとスマフォをポケットに戻した。
「仕事のことか?」
「いえ……――あっ。円堂さんは雷門中の監督になったんですよね。姉さんはコーチに」
「ああ」
「そうだけど……」
(ウッシッシッシッ!)
二人に確認をし終えた木暮は昔と変わらない笑みをコッソリ浮かべると、円堂の腕を取って引っ張り出した。
「さあ! 行きましょう!」
「えっ!? どうしたんだよ、木暮!? おい!」
「……さっき、ずいぶんと懐かしい顔をしていたな」
「……私の見間違いじゃなかったんだね」
「「絶対何か企んでいる」」
木暮の笑みをしっかり見ていた鬼道と瑞貴は顔を見合わせると、二人のあとを追って行った。
――あれから歩いて行くと、ある敷地からにぎやかな声が聞こえた。その中に入るために木暮は門の中を見て喜んだ。
「おっ、グッドタイミング!」
「お帰り、木暮くん」
木暮を出迎える声も三人にとっては懐かしい人物のものだ。思わず笑い合うと円堂が先に顔を出す。
「なんだ、秋のアパートに住んでんのか」
「はい。いろいろと節約できるんで」
「監督! 瑞貴さん! 鬼道コーチ!」
「わあっ!」
木野秋が管理人をしているアパートの庭には、同じユニフォームを着た十人の老若男女がそろっていた。そしてその中には親戚の天馬もいる。
先ほど学校で別れた三人がどうしてここにいるかと天馬は驚いたが、対して秋は久しぶりの再会に喜んでみんなの元へ駆け寄った。
「三人共、どうしたの? 突然」
「よっ!」
「久しぶりだな」
「秋ちゃん。ごめんね、急に来て」
「ううん! びっくりしたけど大歓迎よ!」
秋はそれぞれの顔を見てさらに笑顔になった。大人になると昔のように頻繁に会えないし、話で聞くより実際に会うほうが嬉しい。