秋空の挑戦者!
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キーンコーンカーンコーン――……。
チャイムが鳴ったので同時に朝練終了の合図でもある。瑞貴はホイッスルを鳴らして選手たちに呼びかけた。
「はい、朝練はここまで! 次の練習は放課後にやるから、各自で片付けを始めてね」
「「「「「はい!!」」」」」
☆☆☆☆☆
――天馬のクラスに狩屋マサキという男子生徒が転校してきた。彼はサッカー部の練習光景を見ていただけでなく、校門で天馬と葵と会っていたのだ。それからホームルームが終了し、先生が教室を出ると天馬はさっそく葵と信助と共に狩屋の元に来た。
「ねぇ、狩屋くん!」
「何?」
「部活はどうするの?」
「ん~……」
狩屋は教科書を机の中に入れて目を揺らすと、改めて天馬を見て言う。
「サッカー部に入るつもりだけど……」
「ホント!? 俺たちもサッカー部なんだ! サッカーやってたの?」
「うん」
サッカー部に新たな仲間が増えて天馬は喜ぶと、続いて信助が狩屋に質問をする。
「ポジションはどこ?」
「DFだよ」
「じゃあ一緒だ! 僕、信助。西園信助っていうんだ。よろしくね!」
「ああ。よろしく」
元気よく挨拶する信助に狩屋は微笑み返した。葵も嬉しそうに天馬を肘で小突く。
「よかったね、仲間が増えて」
「うん。ねぇ、サッカー棟はもう見た?」
「あとで一緒に行こうよ!」
「……フッ」
天馬と信助と葵は気づかなかった。狩屋が長い前髪に隠れて今までの穏やかな表情とは違って暗く、さらに不敵に笑ったことなど。
☆☆☆☆☆
放課後――サッカー棟で円堂と瑞貴は部員が待つロッカールームへと向かっていた。
「レジスタンスから報告が来たよ。響木さんが予定通り聖帝に立候補したって」
「そうか。こっちも理事長に選挙を支持は響木さんにすると伝えといた。校長と共に『もう勝手にしろ』って感じだったけどな」
「フフッ、もう腹を括るしかないってことだね」
自分たちをクビにできないし、勝敗指示に逆らい続けて地区予選を優勝したし、金山郷造も冬海卓もフィフスセクターに顔向けできないと投げやりのようだ。
瑞貴は微笑むと、持っていたファイルから聖帝選挙のページを開くと円堂に伝える。
「今までイシドシュウジが聖帝になってから、フィフスセクター以外の立候補者の誕生となった……。フィフスセクターがどんな強敵を組み合わせて来るかわからないね」
「恐らく、初戦から強豪チームを組み合わせて来るだろう。それに全国大会のスタジアムはこれまでと違って特殊なフィールドだ。やることがいっぱいだな……」
「守にも、デスクワークをがんばってもらわないとね」
「ウヘェ~……」
パタンッとファイルを閉じた瑞貴はニッコリと笑って言うと、円堂はあからさまに肩と頭を落とした。監督として書類作業もやることがあるが、相変わらず勉強も含め机作業は苦手のようだ。
「瑞貴~……手伝ってくれよ~……」
「ほらほら、これから部活なんだからそんな顔を部員に見せないの。キャプテンでも監督でも、まずは表情から。不安になったら引っ張るべきみんなまで不安になっちゃうよ」
瑞貴はヨシヨシと頭を撫でると、円堂はそれが心地いいのか微笑んで顔を上げた。
「うん……そうだな!」
♪ピリリリ、ピリリリ♪
「義姉(ネエ)さんからだ。守、先にみんなの所へ行ってて」
「ああ」
瑞貴が電話に出るためその場から離れた。円堂は撫でられた頭に手を置いて微笑むと、両頬を軽く叩いて引き締めてロッカールームへ向かうのだった。
――ロッカールームで円堂を含め選手たちが集まっていると、扉が開いて天馬と信助と狩屋が現れる。
「ここが部室だよ」
「へぇ~……」
「君は?」
見かけない生徒に神童が問いかけると、狩屋は背筋を伸ばして向き合った。
「サッカー部に入りたいんです」
「入部希望者か……」
「転入生なんです。狩屋マサキくん」
「よろしくお願いします」
「…………」
天馬が紹介して狩屋も頭を下げる。その際、瞳が鋭くなったのを近くにいた円堂はハッキリ見えていた。頭を上げたときにはいつもの穏やかに戻っている。
「そんじゃあ、今日の練習はまず入部テストっスか?」
「えっ? テスト?」
「そうだった!」
「入部テストのこと忘れてた!」
浜野が手を上げて言うと狩屋はキョトンとした。天馬と信助は過去に自分たちも受けた入部テストのことをすっかり頭になかったようだ。
すると椅子から立ち上がった円堂が狩屋の前に立って、問いかける。
「狩屋。――お前は、サッカー好きか?」
「えっ?」
どうしてそんなことを訊くのかと狩屋は目をパチクリするが、円堂は真剣な表情を崩さなかった。それに返すため狩屋も気を引き締めて頷く。