雷門中にかけられた呪縛!
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翌日――。雷門中では、円堂がボロボロな姿で瑞貴と五郎に支えられながら登校してきた。
「あっ、おはよう竜吾」
「おはようございます、染岡センパイ」
「おはよーっ」
「瑞貴…五郎…円堂……」
染岡はボロボロの円堂を見て、あのムチャな対策の特訓をしていることを悟った。
その特訓の疲れで、円堂は授業中も爆睡していた。だが放課後のチャイムが鳴ると教室を飛び出す。
「行くぞ瑞貴! みんなは任せた! 五郎! 特訓だ!!」
「了解!」
「はい!」
部活の時間には瑞貴が他の部員にポジションの確認や練習の指示をし、円堂と五郎は例のゴーストロックの対策特訓をしている。
夜は体育館の裏で瑞貴も円堂の特訓に付き合っている。
「クッソォ~……」
「円堂センパイ、もうやめたほうが……」
「いや……もう一回…もう一回だ……!!」
「せめて少し休もう。水分補給はちゃんとしよ」
瑞貴はドリンクを円堂に手渡す。その特訓の様子を染岡が見ていたことに誰も気づかなかった。
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この繰り返しが続き、ついに試合二日前。その日は雨が降っていた。
目を閉じた円堂がゴールの前に立ち、足元にボールを構える瑞貴。他の部員たちも今日は特訓の成果を見ていた。
「よし! もう止められるはずだ! 蹴ってくれ!!」
そう円堂が合図をすると瑞貴はボールをゴールに向けて蹴った。
(絶対取る!!)
しかし目を開けた円堂は反応が遅れ、ボールはゴールに入った。その結果に「あーあ……。やっぱりダメだったか……」と予想通りというような声が上がった。
「クッ……」
「やっぱりこんな方法でゴーストロックを破るのはムリでヤンスよ」
「円堂。お前はよくやったよ。試合はDF陣(オレタチ)もがんばるから今日はもう休め」
栗松が落ち込むが、ムチャとはいえ一生懸命やっていたことを知る風丸一郎太は、円堂にそう声をかけた。
「まだまだ!! 幽谷のゴーストロックはオレが破るん……あれ?」
「!!!」
「円堂さん……!!」
だが、立ち上がろうとしながら最後まで言い終える前に、円堂は座りこんでしまった。みんなもその異変に気づく。
「アッハッハッ。大丈夫気にすんな! よーしもう一本……」
「いい加減にしろ円堂!!」
そう怒鳴ったのは染岡だった。染岡はものすごい剣幕で円堂の胸倉をつかむ。
「ムダなことはやめろと言ったはずだ!! 一人で意固地になりやがって、もう体がボロボロじゃないか!! 打倒幽谷にこだわりすぎだ!! チームのことも考えろ!! 瑞貴ばかりに任せすぎだ!!」
周りのみんなは止めようとするも、染岡の迫力に圧(オ)されて言葉も発することはできなかった。
これまで円堂は特訓の一点張りでチームは瑞貴に任せきりだった。瑞貴のポジションはFW。試合になればMFはともかくDFに指示を仰ぐことはできない。そのときGKの円堂が必要なのだ。
「それじゃキャプテン失格だ!!」
「――っ!!」
「よせよ染岡! 言い過ぎだ!」
「え…円堂センパイ」
(キャプテン…失格……)
「今日の特訓はどうしますか……?」
五郎は話題転換のつもり円堂に問いかける。円堂はうつむいた顔を上げ、ニコッと微笑んだ。
「今日はいいよ五郎。ゆっくり休め。瑞貴、お前もだ」
「センパイ……」
「守……」
――雨もどんどんヒドくなり、部活も終了してみんな下校する。
そんな中、ただ一人雨に濡れながらユニホーム姿のままゴール前にたたずむ円堂に、ある人物が近寄る。円堂もその気配に気づき顔を向けた。
「瑞貴……?」
それは自分と同じように、傘も差さずユニホーム姿のまま雨に濡れる瑞貴だった。瑞貴は一つ微笑むと、円堂の頭を引き寄せ自分の肩に顔を押し付けた。
「我慢しなくていいよ」
「!!!」
「副キャプテンの私は、キャプテンを――守を支えるためにいるんだから」
瑞貴は頭を押さえている手とは逆の手で、円堂の背中をポンポンと叩く。すると糸が切れたかのように円堂の目に涙が溢れる。
「ちくしょう――っ!!」
特訓もみんなに否定され、追い討ちをかけるように染岡から『キャプテン失格』と言われたのだ。精神的にかなりダメージを受けただろう。
円堂が泣き止んだのは夜に近い時間帯だった。瑞貴も円堂が泣き止むまでそのままでいたのだ。
「ワリィな。肩、濡らしちまって」
「別にいいよ。雨に濡れているから変わらないし。さっ! 特訓、再開しようか!」
「ああ!」
二人は体育館裏にボールを用意し、ライトには雨が当たらないようにカバーをかける。
「セ…センパイ!!? 瑞貴さん!!?」
「円堂!? 瑞貴!?」
円堂と瑞貴が声がした方向に顔を向けると、そこには私服姿の五郎と染岡がいた。
「まだやるつもりなのか……?」
「瑞貴さんも特訓に付き合うんですか……?」
「「――ああ/うん」」